表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
第ニ章・三部 高みを目指して
132/632

水属性神魔級ボス

遠巻きに、地面と思わしき物体を眺める。見事に、一面ピンク色だな。それに、よく見ると、ゆらゆらと動いている。


「なんだろう?イソギンチャク…?」


 一面、びっしりと生えている、イソギンチャクと思える物体。やはり、あれも魔物なんだろうか。それとも、ただの原生植物か。どちらにしろ、近づきたくはないな…。


「とは言っても、ボス戦を始めるには、近づかないといけないか…」


 俺は、ゆっくりと地面に降りて、イソギンチャクを手に取る。なんか、半透明で、とても幻想的だ。それに若干、光っているし。暗い水の中では、ありがたい。さて、敵はどこかな…。あたりを見回すが、それらしい魔力の動きはない。


「うん?あれかな」


 遠くに、一際、大きな光の塊があるのを、見つけた。ゆっくり歩いて、近づいていく。それは、大きな蕾だった。見た目は、閉じた花のようだ。中心から、光を放っているようで、近づくと、とても輝いているのが分かる。


「……、こんなに綺麗に見るけども、この大きさ…。中身は、普通じゃないだろうな…」


 更に近づこうと、一步踏み出す。すると、周りの地面が、振動して、震え始めた。ゆっくりと、目の前の蕾が開いていく…。


「さて、勝負開始、ってところか…」


 蕾が開ききると、中から異形の怪物が現れた。身体は水色、赤い鋭い目をしており、腕には、鋭利な爪が付いている。


「魚人ってところか…。下半身は魚じゃないみたいだがな…」


 まるで、触手のように、地面から根が這い出てきた。そのまま、その魔物は水中に浮き上がる。


「まるで、クラゲだな…」


ゆらゆらと、根で水中を蹴りながら、漂っている。腕組みをして、俺を見ている姿は、流石、神魔級迷宮のボス、と言ったところだろうか…。鋭い眼光から放たれている殺気は、土属性神魔級迷宮ボスを倒した俺達にでさえも、多少の圧力を感じさせる…。


「……」


 俺は、少し睨み返すと、ゆっくりと剣を構えた。ボスの身体が、青白く発光し、根の周りに水属性の魔力が渦を巻く…。


「…行くぞ」


 水中の地面で、足を踏み込む。俺の中にいる皆に、開戦の合図を告げると、俺は背中に風属性の魔力を放出させて、一気に、ボス目掛けて、飛び出した!!!


「グゥッ…」


 ボスの根が、まるで槍のように、俺達に襲いかかる。根の先を、剣で弾くが。すぐに水中で折り返し、俺達を、根は追いかけて来る。


「クッ!!」


 何十にも張り巡らされた根の防壁に、少しずつ突進の威力をそがれ。遂には、近づく前に、こちらが手数で負け、防御せざる負えなくなった。水中を、水の魔力と、風の魔力で移動するが、どうにも、相手のほうが動きが早い。それに、何本もの根が、縦横無尽に動くので、相手は、一体なのに、複数の敵を相手にしているみたいで、とてもやりづらい…。


「根を、切り落としていくしか無いか…!!!」


 剣に魔力を込め、一本ずつ切断していく。


「はぁぁぁぁああああ!!!!!」


 固いんじゃないかとも思ったが、意外とあっさり切断できた。後は、このまま、ボスを丸裸にするだけだが…。


「…まぁ、そう簡単には行かないよな…」

「グルル…」


 低いボスのうめき声とともに、切られた根が伸びていく。回復魔法の阻害をしようと、回復している根を見てみるが…。


「…?あれは、回復魔法じゃないのか?」


 どうにも、回復している根に、魔力が感じられない…。どうやら、あの再生は、完全にあいつの能力であるらしい。うーん、これは、かなりきつい戦闘になるかもしれないな…。


「……」


 ボスは、俺達から距離を取ると、根を一気に回復させた。…駄目だな。水中で、あいつの動きに、ついて行けてない。距離を取られると、距離を詰めている間に回復される。やはり、この勝負は、強力な一撃を本体に叩き込むことに専念したほうが、良さそうか…。


「……、解せませんね。あいつには、まだ、余裕が有るように思えます…」

「本当か、ミズキ?」

「ええ。私達から逃げる時もそうですが、まだ、余力があるような、動きをしていますね…。本当は、もっと早く動けるんじゃないでしょうか?」

「……、聞きたくなかった、事実だな…」


 今でさえ、スピードで圧倒されているのに、これ以上相手が早くなるだって…。絶望以外の、何物でもない。ただ、ひとつ言えることは…。


「俺は、俺より強い奴の相手には、慣れてるからな…。なんとでも、凌ぎ切ってみせるさ…」


 そう。前のレムの時といい、今のフィーといい。俺が、勝てている部分なんて、殆どなかった。勿論、攻撃の早さもだ。その分、今の俺なら、相手の攻撃がどれだけ早くなろうと、受けきる自信がある。


「グルッ…」


 不意に、目の前から、ボスが消えた。…いや、早く移動しただけだ。


「…右!!」


 右から襲いかかってきた、速さを増した根での攻撃に、俺は瞬時に対応する。確かに、早いが、まだ付いてけないほどじゃない!!盾で防ぎ、剣で根を切り、相手の攻撃の勢いを削いでいく。


「グルルッ」


 再び、素早く、ボスは俺達から離れると、その巨体で体当たりを仕掛けてきた!!これは、チャンスだと思い、剣に魔力を込め、叩きつけるが、根が何十にも、ボスを覆い、俺達の剣との衝突の威力を減らす。


「チッ!!!浅いか…!!!」


 俺達との衝突後、ボスは水中でまた折り返し、再び体当たりを仕掛けてきた。しかも、先程よりも、速度が増しているような…。


「今度こそ…!!!」


 剣に魔力を込め、また迎え撃つ!!!だが、またしても、攻撃が本体に届いていないようだ。これは、まさか…。


「あの根に、威力が受け流されているのか…」

「その可能性はありますね。根、自体が威力を引き受け、本体に届く前に、威力を逃がす。根は壊れるでしょうが、すぐ回復しますからね…。こいつも、厄介な相手のようです…」


 ボスは、再び、更に速度を上げ、俺達に体当たりをしてくる。


「クッ!!!」


 根で覆われている状態で、斬りつけるのが無意味なら、ここは攻撃を逸らすのに専念したほうが懸命か…。俺は、盾でボスの突進を防いだ。しかし…。


「……、まだ、速度が上がるのか、こいつ」


 何度も、何度も、速度を上げて、ボスは体当たりをしてくる。遂には、息をするまもなく、ボスの攻撃が、連続で、俺達に届くようになっていた。


「……何とかしないと、まずいな」


 剣で攻撃をしようとも、ボスの足は止まらないだろう。盾で防いでいても、このままでは、何時まで持ち堪えられるか、分からない…。


「何か、手は無いのか…。何か…」


 その時、俺の脳に、ある考えが閃いた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ