水属性神魔級迷宮・前
さて、水属性神魔級迷宮まで、ざっと一週間の道のりになる訳だが。学校での授業を聞き、いつも通り研究会に出て、さっと訓練をして移動を開始する。カザネが加わったことで、若干移動速度が早くなった気がするが、まだそれほど違いがあるという程でもない。まぁ、あせらずに行くか。
「(これが、一体化ですか。……まるで、変身ヒーローみたいですね!!)」
なんだかんだで、カザネは一体化を気に入ったようだ。今は、背中に黒い翼が生えていることぐらいしか、変化がない。カザネが進化すれば、それも変わってくるんだろう。
「でも、カザネは上級魔物だからな……。いつ進化するのやら」
「(むぅ、そうですね。……出来るだけ、早く進化出来るように頑張ります!!)」
「こん!!私も、頑張ります!!」
進化のしかたは、未だによく分かっていない。望んでいる進化形態が強いほど、その期間は長く。また、訓練も必要だと思う。 ……ヒーローと、妖怪だったら、どっちが早いんだろうか? 分からないな。本人達の頑張りに、期待するしか無いか。
「私達も、そろそろ聖魔級に成れてもいいんじゃないっすかねぇ」
「そうね。なんだかんだで、私達はまだ上級のままだものね」
「焦ってはいけません、二人共。私達は、それだけ大きく力を蓄えているということです。進化した時は、それなりの働きが出来る様になるでしょう。今は、我慢です……」
そう言えば、シスラ、サエラ、シゼルも、結構な期間いるけど、まだ進化してないんだよなぁ。もう、とっくに上級魔物の枠は超えてるんだろうけど。それでも、進化出来ないというのが、進化の分からないところだよなぁ。
「3人は、まだいいですよ。一番先に、聖魔級に辿り着いたレムが、未だに神魔級に進化していないという事実。これの方が、由々しき問題だと私は思いますね」
「ミルクの言う通り、私も大分、進化していないなぁ。それだけ、神魔級と聖魔級には、大きな差があるということなのだろう。この前、戦って分かった通り。神魔級は、格が一桁も三桁も違う相手だった」
「つまり、あたしとミエルの初進化は、まだまだ先ってことになるわよね」
「恐らくだがな……」
「ああぁぁ~!!早く進化して、主様に褒められたいのに。もっとこう、ぱっと出来ないもんかしらねぇ!!」
カヤの言うことも分かるが、レムの言う通り。神魔級は、格が違う相手だ。いかに、その差を早く埋めようとしても、そう簡単には行かないだろう。カヤの気持ちは嬉しいが。
「大丈夫です、カヤ!!ベイさんは、待っていてくれます!!私達は、焦らずに頑張りましょう!!」
「ミエル……。そうね、あたしは今でも、かなり強いほうだし!!神魔級進化なんて、意外とあっさり出来るほうかもしれないわ!!焦らずに、実力をつけていけばいいのよね!!お互いに、頑張りましょう!!」
「はい!!!!」
神魔級進化かぁ。皆が、あんなボス並になったら、本当どうなるんだろう……。 取り敢えず、回りにいる人間は、気絶するよな。大抵の、魔物はいるだけで逃げていくし。創世級とは……。 それで渡り合えなかったら、どうやって勝てばいいのか分からない。確実なのは、皆が創世級になることだが、それまで時間があるかどうか。
「今、私達の戦力は聖魔級6人、上級4人、中級が1人。今でも、大分すごい戦力ですけど。これでもまだ、創世級に勝てる気がしませんね。やはり、神魔級進化は最低限必要なラインでしょうか……」
「ああ。フィーの言う通り、そうだと思う。ここにいる、11人の神魔級進化で、やっとやりあえる。そう言う相手のような気がする。ここまで強くなった俺達でも、まだ戦うのをしり込みするぐらい強いんだ。それでも、届いているかどうか、怪しいな……」
不安要素は、いくら拭っても、拭い切れない。今ある時間を有効に使って、お互いが高め合っていくしか無さそうだ。
「殿。そろそろ、着くみたいですよ」
「おっと、この辺だったか……」
そこは、大陸の端の端。久しぶりに見たが、そこには海が広がっていた。断崖に、激しく波が打ち付けている。そこに、似つかわしくない魔力で覆われた空間があり……。
「あれが、水属性神魔級迷宮」
一目見ただけで分かるが。あからさまに、海の中にその空間はあった。 ……こりゃあ、全部水で出来ている迷宮だなぁ。一体化していないと、呼吸すら出来ないだろう。
「こりゃまた、厄介そうな迷宮ですね」
「私は、楽しそうに思えるがな」
「そりゃあ、ミズキは水属性ですから。楽そうに見えるでしょうけども」
「はいはーい!!あたし達は、息が続かなそうでーす!!」
「こん、私も、そう思います!!」
「私だって、そうですよ……。潜るにしても、色々と問題がありそうですね。ここは、よく考えないと」
「そうだな。ともかく、今日は一旦帰ろう。時間的にも、アリーが晩御飯の準備をして、待っているはずだ」
「そうですね。この話は、晩ご飯を食べてからにしますか。ではレム、転移をお願いします」
「了解した」
こうして、その日の俺達は、アリーの待つ部屋へと帰っていった。
*
「なるほど。恐れていた迷宮だったってとこね」
「そうなんだ」
アリーも交えて、迷宮攻略の相談をする。
「風魔法を上手く使えば、長時間呼吸が出来るかもしれないけど。それだと、隙が出来る可能性があるわね。やっぱり、最初から一体化して潜るのがベストなんじゃないかしら?」
「やっぱり、そう思う」
「ええ。一つクリアしたと言っても、神魔級迷宮。侮るのは、やばいわね」
「なら、一体化で決定かなぁ」
唯でさえ、勝手の分からない水の中なんだ。ここは、1番慎重な手で行くのがいいんだろう。俺達は、そうすることにした。
「……話は変わるんだけど、ベイ。そろそろ、夏の大会の申し込みが始まってるんじゃないかしら?」
「ああ、それはこの前、サラサと一緒に申し込んできたから大丈夫だよ」
「なら、良かったわ。ベイの活躍、私も見に行くからね!!特等席で!!」
「特等席?」
「ふふふ。そこは、まだ秘密ね」
なんだか、楽しそうに笑うアリー。まぁ、アリーが楽しんでいるなら、それでいいかな。アリーが見てくれているのなら、俺も、無様な戦い方は出来ない。この迷宮攻略で、弾みをつけて頑張ろう。そう、俺は心に誓うのだった。
130回めの更新になります。色々と、忙しくなっていますが、頑張って更新していきたいと思います。さて、結構話しも進んできてますが、どうでしょうか?楽しんで頂けているなら嬉しいです。だいぶキャラも出てきていますね…。暇があったら、キャラまとめも作ってみようかと思います…。それでは、これからも召喚魔法で異世界踏破をよろしくお願いします。