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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
第一章・一部 召喚魔法使い ベイ・アルフェルト
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ゴーレム

「さて、名前を付けないといけないな」


 しかし問題がある。これがゲームなら最終進化系に合わせてニックネームをつけたり出来るのだが、ここは異世界だ。もし間違って、男向きな名前をつけて女性にでもなろうものなら目も当てられない。というか、ゴーレムに性別とか関係あるんだろうか? 見た目は、シンプルにカッコイイ重量級戦士だから男っぽいとは思うんだが。こういうキャラに限って美少女化、もしくは強そうなラスボス系おっさんキャラになる気がする。もちろん、そのままリビングアーマー系の進化をするのもあるだろう。う~ん、分からない。筋肉モリモリマッチョマンのおっさんよりは、美少女かアーマー系の進化のほうが俺は嬉しいが。


(ゴーレム……、ゴーレム・ナイト……。岩……、ロック……)


 う~ん、レムが一番当たり障りがない気がするなぁ。強そうな魔神系のようにも感じとれるし、美少女に転んでも問題なさそうだ。そう考えると俺は、手から召喚魔石を取り出した。


「汝の名はレム、屈強なる岩の戦士よ、我に力を……」


 召喚魔石に魔力を流し、契約を開始する。問題なくレムが受け入れ契約は終了した。


「よし、今日からよろしくなレム」

「よろしくお願いします、レムちゃん」

(……)


 あれ? 返事がない。契約したから、お互いに念話が出来るようになるはずだが?


「レム、この魔石にそっと触れて、魔力を流してくれるか?」

(……)


 ゆっくり腕を持ち上げると、俺の持っている魔石に触れレムは魔力を流してくれる。どうやら、通じてない訳では無いようだ。そういえば、ゴーレムなんだから喋る習慣が無いのかもしれないなぁ。ゆっくり練習させていけば覚えるだろうか? レムの魔力を流された召喚魔石は、土色になった。


「わ~、レムちゃん固いね。すご~い」


 フィーがレムの身体を触ったり肩に乗ったりしている。ああ、いいね。美少女と岩の巨人。なんというか、絵になっている。フィーがレムの肩に座って足をばたばたさせているが、スカートが長いので見えない。悩ましい。


 ぐぎゅるるるるる。……腹が減った。そういえば、昼休憩を取ろうとしていたんだった。レムに回復魔法をかけて、戦闘ダメージを取り除いたらごはんにしよう。


「ホーリーキュア」


 回復魔法をかける。これでダメージが消えるはずだ。レムも、こころなしか嬉しそうに……。


「……ん?」


 いきなり、ビクッ、ビクビクッとレムは震え始める。……回復魔法をかけるのをやめた。レムの震えが止まる。……回復魔法をかける。レムがビクビクッ、と震え始めた。


「マスター!!フィーにも、フィーにも回復魔法お願いします!!」

「……え?ああ、うん。分かった」


 フィーにも、回復魔法をかける。


「んっ❤……んうぅぅ❤……はうっ❤……んんっ❤」


 フィーも、ビクビク震え始めた。顔を赤らめ内股になり、両手で自分を抱いて我慢するように身を震わせている。


「っっっっっっんん~❤」


 大きく身を震わせると、フィーは俺に抱きついてきて静かに寝息を立て始めた。


「俺、回復魔法使わないほうがいいのかなぁ……」

(……)


 レムは、答えてはくれなかった。



 弁当を食べ、少し休憩したらフィーが起きたのでまた近くの魔物を調査しに行った。仲間にレムが増えたので、戦闘がかなり楽になっている。というのも、レムの攻撃を受けきれる魔物がいなく、だいたいレムの一撃で相手が真っ二つになっておわるからだ。俺たちが最初にあった蜘蛛型の魔物も、振り下ろした剣の一撃で半分に裂けていく。唯一すぐに倒せないのは、レムと同じゴーレムだった。ただ他のゴーレムはだいたい素手で、木を掴んで投げるなどの行動はするものの、レムのように剣を使うということはしないようだ。レムが攻撃を引き付け、俺たちが魔法で攻撃するといった戦術で安定して倒せている。


 ただ、レムにも問題がある。それは、足音が凄まじく大きいことだ。風魔法・土魔法で音が伝わるのを阻害しているのだが。それでも、少しは聞こえる。身体も大きいため、森の木をなぎ倒し進む必要もある。こそこそ動き回る場面では、レムに頼ることが出来なさそうだ。


 今回の調査で分かったことは、動物系魔物は一応意志があるようだが縄張り意識とプライドが高いのか自分が死ぬまで攻撃をしてくるということ。虫型の魔物は、本能で動いており自信の安全確保のために動いているということ。ゴーレム系は、話が通じているのかも分からない。だいたい、こんなところだろうか。仲間に出来そうで出来ないというのが現状だ。レムが仲間になったのは、こう見ると運が良かったな。


 その後、レムが仲間になったことだし早めに切り上げて帰り、練習場からさらに離れた位置の森に新たな練習場を作った。これは、レムが暴れても大丈夫な位置を確保するためだ。これからは、レムと前衛の戦闘練習をしながら迷宮で魔物勧誘をする予定だ。今の状態は、殆どレム無双だからな。その技術を教わりたい。腕力を教わって取得するは無理そうだから、技術だけでもお願いしたい。剣術は、正直素人同然だからね。


 メキメキメキっと、レムが邪魔な木を引っこ抜き俺が土魔法で地面を均す。フィーが風魔法で雑草を刈り取ってすぐに場所は完成した。抜いた木でレム用の木刀を作って軽く手合わせをしてみる。やはり、レムとの戦闘は良い訓練になるな。適当な攻撃は、簡単に防がれてしまうし気を抜けばこちらが攻撃の餌食になる。俺達の力を上げるのにいい経験になるだろう。でも木刀でもかすったら骨を折りそうなんですが、そこんとこ手加減お願いしますレム先生。


 今まで魔石の研究に当てていた日を、午前は戦闘訓練に午後は研究にあて。いつも訓練をしていた日は、迷宮の探索に当てた。このローテーションを繰り返すこと28回、約二ヶ月が経過し、俺もフィーも少し強くなった。具体的には、最初に戦った蜘蛛を剣で切り伏せれるようになったし。フィーのウインドブラストも、蜘蛛の身体を破壊するほどに威力をあげた。レムは、相変わらず攻撃力が高すぎるので成長しているのかよく分からない。まだ喋ってくれないし……。


 しかし、レムを仲間にして二ヶ月。一体も仲間が増えてない。レムの時は、本当に運が良かったのだろう。どんなに追い詰めても、逃げるか最後の攻撃をしようとして魔物は死ぬ。やはり、気の荒い迷宮魔物を仲間にするのは、根気がいるということだろうか。


 その日も、迷宮に探索に来ていて倒した魔物の売れる部位を剥ぎとっていた。二ヶ月も調査すれば慣れたもので、お金稼ぎも兼ねてやっている。一番面倒なのは、他の迷宮探索者に合わないようにすることだ。大人から見れば、子供の俺が一人で剥ぎ取りをしてると不審がられるだろう。合わないようにフィーに警戒してもらっているので、ほとんど合うことはないが。それでもすれ違ったらフィー達を隠しつつ適当に挨拶して立ち去るようにしている。おかげで呼び止められたことはない。


「しかし、仲間にならないなぁ」

「う~ん、マスターの良さがうまく伝えられてないんでしょうか。私、もっと頑張ります!!」


 フィーは、よくやってくれていると思う。というよりも、会話をしようとすればすぐに戦闘になるのでそれどころじゃないという状況が悪い気がする。


「フィーは、よくやってくれてるよ。ありがとう」


 フィーの頭に手を置いて、ゆっくりと撫でる。


「ふあっ、ありがとうございます。でも、もっとマスターのお役に立ちたいです!!」

「無理はしなくていいからな、よろしく頼むよ」

「はい!!」

(……)

「レムも、よろしく頼むな」


 固い岩肌に手を置いてポンポンと叩く。いや~、本当レムには感謝している。俺もフィーも、レムが仲間になったことで強くなれたし、戦闘も安定している。今度、ブラッシングでもしてあげるべきかな。レムは喋らないので、なにをしてあげれば喜ぶのか全然分からない。難しいところだ……。


「……」

「うん?どうした、フィー?」

「マスター、何か声がします」

「声?冒険者か?」

「いえ、違います。こっちに来るので、待って欲しいらしいです」

「こっちに来る?」

「あっ、来ました」


 フィーの見ている方を見ると、森から一体の魔物が出てくる。それは、どこからどう見ても牛だった。



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