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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
第ニ章・三部 高みを目指して
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教育

「うーん…」


 なんだかんだで、数時間。回復魔法をかけ続けたが…、その場で、カラスの意識が戻ることはなかった。


「で…。部屋に持って帰ってきたと…」

「放置すればいいのに。ご主人様は、お優しいことですね…」

「いやぁ…」


 なんせ、あそこは聖魔級迷宮。放置してたら、確実に死ぬだろうし…。いつも通りに、殺す目的でこいつを連れて聖魔級迷宮に行ったわけではないし…。なんだかんだで、授業中の暇つぶしになってくれてたからなぁ…。それに…。


「アリー。このカラス、最初から、念話が使えたんだ」

「へー!!それは、珍しいわね…。最初から、意思疎通が出来るなら、いい拾い物とも言えなくはないかも…」


 やはり、魔物を仲間にする上での障害は、意思疎通が出来るか、出来ないかだ。長時間かけて、その信頼を築いている時間のない俺からすれば、このカラスは、結構貴重な部類に入る。それに、皆に手加減されているとはいえ、魔法の攻撃を受けて生きている生命力。一般の生徒では、目ですら追えない速さ。…かなり能力としては、優秀な部類に入る可能性がある…。


「まぁ、少々、性格に問題はあるみたいだけど…。そこは、これから教えていけばいいし…」

「教えるんですか…。なかなか、骨が折れそうですね…」

「そこは、自然界と違うからな…。根気よく、教えていくしか無いさ…」

「そうですね…。にしても、目覚めるでしょうか…。間近で、ご主人様の全力の強大な力を目の当たりにしてしまいましたからね…」

「ふーん…。それで起きてくるとなると、本当に使える魔物かもしれないわね…。なら、ちょっとぐらい置いときましょう。その価値は、ありそうだわ」


 そのまま、その日は、目覚めないカラスを、適当に作った鳥かごに入れて眠った…。



「(………申し訳ございません…)」

「……ああ、その、そんなかしこまらなくていいから…」


 朝になると、全力の無抵抗ポーズで、カラスが構えていた。その身体は震えており、明らかに、俺への恐怖が身体に刻みつけられている。


「(あのように、力のある御方とは知らず…。どうか、お許し下さい。私に出来る、お詫びでしたら、何でも致しますから…)」

「ほほぅ、いい心がけですね…。やっと、ご主人様の偉大さが分かったと見えます…」

「(はい…。身にしみて…)」

「ですが……!!!!!それだけでは、駄目!!!!!!ご主人様に、使えるに値しません!!!!」

「(ひいいいぃぃぃぃぃぃぃぃいいいいいい!!!!!)」

「その、性根を先ずは叩き直すとしましょう!!!それから、あなたをどうするか決めます!!!逃すか、雇うか、それとも殺すか!!!全ては、あなたの心がけ次第!!!さぁ、今日から修行を受けて貰いますよ!!!」

「(は、はいいいいいい!!!!!!)」


 ……なんだか、ミルクの丸め込みで、話が、あっさり決まってしまった。まぁ、いいか。ここはミルクに任せよう…。そして、その日から、シデンと、カラスはミルクの元での全力修行を始めた。


「はいはい!!遅いですよ!!!もっと、速く!!!もっと強く!!!」

「はいです、こん!!!!」

「(ぐぬぬぬぬ、ぐえー!!!!)」


 石を運んでの、基礎的な身体作りに始まり。ミルクの魔法で作った、牛との戦闘練習。全力で魔法を撃つ練習や、コントロール練習。そして、俺にはどう仕えるべきかという、ミルクの独自解釈の入った講義が続いた…。それから、あっという間に、一週間…。


「最近、泥棒を見なくなったんだってぇ…」

「誰かが、捕まえてくれたとか?」


 …やっぱり、あのカラスが泥棒だったか…。とすると、何処かに、今までの物を隠していた可能性があるな…。後で、聞いとくか…。


「でも、やっぱり用心はしとかないとね…。ねぇ、ベイ君。私を守って~!!」

「私も~!!」


 そう言って、レノンと、サラは胸を押し付けてくる。…最近、この2人は、あからさまに俺を誘うような顔をしてきてるんだよなぁ…。うーん、男として、この誘惑は抗いがたい…。


「まぁまぁ、お二人共…。そんな寄ると、ベイ君がお弁当を、食べずらくなっちゃいますよ」


 なんだかんだで、ニーナもこの状況に慣れてきたのか。今では、俺のために、2人を諌めてくれようとしてくれる。でも、その程度で、止まろうとする2人では無い。


「また、私が食べさせてあげるね~」

「私も~」

「………」


 それなら、まだいい。でも、最近だと、俺の太ももを触りながら、あ~んしてくるんだよなぁ…。この状況が、さらに悪化したらどうなるか…。その状況は、とても、言葉には出せそうもない…。


「勿論、私もあ~んするぞ!!」


 サラサも、あ~んする気まんまんだ。俺は、軽く苦笑いを浮かべながら、その日の食事を乗り切った。



「さて、隠したものはどこにあるか、教えて貰えるかな…?」

「(はい!!我が、主人!!ご案内、致します!!!)」


 カラスを、ローブの中に隠して歩くこと数分。一本の木に、大きな穴が空いているのが、見つかった。


「(あの穴の中に、今までの物が隠してあります。今となっては、皆様に申し訳なく…)」

「まぁ、心を入れ替える気になったんなら、それでいいんだよ…。この中の物は、俺が皆に返されるように、手をうっとくからさ…」

「(主人…。お心遣い…。ありがとうございます…、グスン…)」


 ローブの中から、念話で、すすり泣くような声が聞こえる。…ミルクの教育の成果、すごい出てるなぁ…。さぁて、俺はこの事実をシュア辺りにでも伝えて、カラスの行いを正すとしよう…。俺は、一旦、校舎に戻り、生徒会室に向かって、歩みだした…。その途中で…。


「おっ、君は確か、ベイ君だったかな?」

「ああ、ウイリス先生でしたっけ。どうです?その後、カラスの足取りは掴めました?」

「いやぁ、ここ一週間、全然見なくなってしまってね…。チャンスを逃したみたいなんだよ…」

「あー、それは残念ですね…」

「(誰が、こんな奴に捕まるもんですか…!!知ってますよ、私は!!!あの物置みたいな小屋で、魔物を自堕落に、放し飼いしているのを!!!主人、こんな奴の話を信用してはいけませんよ!!!)」


 自堕落に、放し飼い…?まぁ、外に出すと危険だし、結果的にそういう扱いにはなるか…。そうか、魔物からは、この慣らし方はそう見えてるんだなぁ…。やはり、使わないほうがいいんだろうか…。


「もし、見かけたら教えてくれないか?報酬は弾むからさ!!」

「そうですねぇ。見かけたら、考えときます…」

「(か、勘弁して下さい、主人!!!私は、あんな小屋で、一生を終えたくなんて、ありません…)」

「(お馬鹿!!ご主人様が、そんなことするわけ無いでしょう!!!ただのごまかしですよ!!!ごまかし!!)」

「(そ、そうですか…。…ふぅ、安心しました…)」

「(全く…。未だに、ご主人様を信頼しきれていないようですね…。これは、再教育が必要なようです…)」

「(ひ、ひぎいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃいいいいいいい!!!!!!)」


 ウイリスの、去る背中を見送る中。そんなやりとりが行われていた…。さーて…、このカラスは、結果的に、俺達に付いて来てくれるんだろうか…。ミルクに、恐怖を感じているカラスに、不安を感じながら、俺は、もうちょっと経過を見守ることにした…。



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