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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
第ニ章・三部 高みを目指して
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新人試合

 その日の研究会活動おわり。レラに、入会するという意志を伝えた結果、会員の皆に歓迎してもらえた。なんだかんだで、受け入れられたということが、俺の中では嬉しかった。サラサも、ニーナも入会することが決まったが、ミオは考え中らしい…。なんでも、大事な仕事が出来たから、それをしてから考えるということだ…。…俺達の頼んだ、剣の製作のことだろう…。そのまま、その日の活動はおわり。俺達は、部屋に帰った。そのまま、いつも通りに、訓練に流れこむが。数分後、そこには大の字で、大粒の汗を流して倒れている、俺の姿が、そこにはあった…。


「…………」


 時間が減っているからと言って、自分達用の訓練をしないわけにはいかない。軽い訓練で、適度に体を鍛えるというつもりだったが…。やはり、今のフィー相手に訓練をすれば、短い時間でも、そうは済まない…。俺の考えが、甘かった…。


「……大丈夫ですか?マスター?」

「………正直、かなり辛いが、大丈夫だ…。続けよう……」


 今の俺でさえ、迎撃するのが難しい量の魔法の攻撃。俺よりパワーの有る、剣での攻撃。どれをとっても、完全に防ぐのは、無理に等しい。フィーには、まだ手加減されている状態で、これなのだ…。これを、新たにフィー地獄と名付けよう…。正直、ミズキ地獄より、辛いかもしれない…。……その日も、短時間での練習ではあったが、俺は過去に類を見ないくらい、疲労していた…。



「うーん…」


 金曜の放課後。闘技場に、会員の皆が集まる。今日は、研究会で新人試合がある日だ。 辺りは、勝つぞという熱気に包まれている…。だが、俺は俺で、どうやったらフィーに少しでも追いつけるかということを考えて、頭が一杯になっていた。


「どうしたのベイ君?今日も、難しそうな顔をして…?」

「いや、やらなきゃならないことで、今、大きな壁にぶつかってまして…」

「ふーん、まぁ、でも。そういうのは根気が大事だからね…!!ファイトだよ!!!」

「…そうですね、ありがとうございます」


 確かに、レラの言う通りだ。フィーの速さに慣れるのにも時間がいるし、俺の力が、確実につくのにも時間がいる…。…やはり気長にやっていくしかないんだろうか…。神魔級ボスを倒した今だからこそ、創世級に近づいているということを考えて、焦ってしまっているのかもしれない…。だが、俺が強くなるために、出来る事は、ある程度しておきたいというのも事実…。思いつめない程度に、少しずつ考えながら、実力をつけていくのが得策か…。


「おーう、レラ!!こっちの準備はいつでもいいぜ!!!」

「分かったよ、スーヤさん!!じゃあ、試合を始めようか!!」

「おう!!」


 レラが、相手の研究長と、話をしている。あの、スーヤっていう人、かなり鍛えてるなぁ。引き締まった筋肉が、ここからでも、とても良く分かる。流石に、研究会の会長をやっている人物だ。只者ではない。


「じゃあ、ルールを説明するよ。今回は、勝ち抜き戦形式で試合をする。先に、4人の会員を倒したほうが、勝ち。順番は、マーサちゃん、ミィルちゃん、ミラちゃん、ベイ君で行こう。4人とも頑張ってね!!!」

「「「「はい」」」」


 お互いの、最初の会員が闘技場上で、剣を構える。試合の判定は、お互いの研究長がするみたいだ。


「二人共、準備はいい?」

「「はい」」

「よし。…では、始め!!!」


 レラの合図で、マーサと、相手の選手がぶつかり合う。マーサは、新人の子で、ノリが良さそうな子だ。上手く、相手の剣をさばいているし、いい勝負をしているように見える。相手の子も、女性で、丁寧に、マーサの攻撃を凌いでいる。2人の実力は、いい具合に釣り合っているようだった。


「行けー!!!マーサ頑張れ!!!」

「ファイトー!!です!!!」


 会員達が、マーサを応援し、向こうの会員たちも、自分の所の会員を応援している。何と言うか、研究会同士の応援の勝負でもあるんだなぁ、と俺は思った。俺も、頑張ってマーサを応援しよう。


「はあああああぁぁぁぁ!!!!」

「くっ!!!」


 マーサの、相手に休む暇を与えさせない連撃が、相手の武器を跳ね飛ばした。これにより、マーサが1勝目を上げる。


「いいぞー!!マーサ!!!」

「格好いい!!!」


 会員たちも、マーサの勝利の喜ぶ。次の、マーサの相手は男性で、見るからに力の強そうな相手だった。マーサが、必死に攻撃をするが、相手のほうが力が強く。攻めきれずに、攻撃を返されてしまう。最後には、今度はマーサが武器を弾かれ、負けてしまった。


「いい戦いだったよ。マーサ!!ナイスファイト!!!」


 負けたマーサに、会員たちが労いの言葉を掛ける。負けて悔しそうだったマーサだったが、その言葉で少し元気になったようだ。次は、ミィルが闘技場に上がる。清楚で、時折大振りな攻撃を出すが、面白い戦い方をする子だ。


「よろしくお願いします」

「ああ、よろしく」


 相手選手との、挨拶も丁寧に行う。いい子だな。試合が始まると、自分のスピードを活かしての魔法攻撃で、相手を攻め立てた。相手は、何とか近づいて攻撃しようとするが、ミィルの絶妙な魔法攻撃が、相手の接近を阻む。何度かの、魔法攻撃の後。ミィルの魔法を武器で受けた相手が、大きくよろめいた。その隙を見逃さず。ミィルは、相手の懐に入り、喉元に剣を突きつける。その攻撃が、決まり手となって、ミィルが、勝利した。


「いいぞー!!ミィル!!次も頑張れー!!!」


 マーサも、ミィルの勝利で、すっかり元気になったようだ。今は、元気に応援している。次のミィルの相手は、槍を使う女性だった。


「よろしくお願いします」

「よろしく…」


 なんだか、物静かな女性だな。それだけ勝負に集中している、ということかもしれない。しかし、槍かぁ。こっちの研究会には、槍使いはいなかったから、戦い辛い相手かもしれないなぁ…。そう思っていると、ミィルと槍使いの試合が始まった。やはり、間合いをとって相手は攻撃してくる。だが、魔法があるので、ミィルも手数では負けていない。しかし、槍を軸にして器用に相手の女性は、魔法を回避し。自分に有利な間合いをキープし続けている。そこで、槍の攻撃に慣れていないミィルは、徐々に相手の槍での攻撃に、押され始め、魔力も少なくなってしまい…。遂には、剣を弾かれ、負けてしまった。


「良い戦いだったよミィル!!!良くやった!!!」


 一進一退の戦いが続く。お互いの研究会が、どちらも盛り上がり、応援にも熱が入ってきた。次はミラが、闘技場に上がる。


「よろしく…」

「よろしく…」


 ……なんだか、物静かな所が、よく似ている2人だな。試合開始の合図があり、2人の戦いが始まった。ミラは、ミィルのように魔法を使わず。剣で前に出て、接近戦で勝負を仕掛けようと、勢い良く前にでる。槍使いの女性も、そうはさせまいと、槍を振り回し、簡単には、ミラを近づけさせてくれはしない。


「……ふぅ」


 一息、ミラが息をつくと、そのまま槍使いの女性目掛けて、突っ込んだ。また、槍を振り回し、ミラを近づけさせまいと、槍使いの女性はするが。ミラは、剣を盾に、ギリギリで、槍の攻撃を躱し。強引に、間合いを詰めていく。


「くっ…!!!」


 遂に、ミラは至近距離に辿り着き、槍使いに、剣を叩きつけた。槍使いは、何とかミラを押し返して、距離を取ろうとするが、ミラはそれをさせまいと、きっちり距離を詰めていく。何度かの、ミラの全力での切りつけで、槍使いの女性は体制を崩し、軽く、後ろにのけぞった。


「…しっ!!」


 その隙を見逃さず。ミラは、剣を下から、上に向かって切り上げ、相手の槍を弾き飛ばす。そのまま、ミラの剣は、相手の喉元に突きつけられた。


「うおおおお!!!!!格好いいぞ、ミラー!!!!」


 ミラの、強烈な猛攻に、会員たちも賞賛の声を送る。試合がおわり、相手女性とミラは握手していたが。相手女性は、かなり悔しそうな顔をしていた。


「さーて、うちは最後の会員になっちゃったけど。うちの新人の中で、一番強い子を。いや、新入生の中で、一番強い子を選ばせてもらったよ。紹介しよう、カゼル・ミラハルト。新入生ただ一人の、召喚魔法使いだよ」

「………………はぁ?」


 今のはぁ?を言ったのは、俺の隣に座っているアリーだ。今のはぁ?には、色んな意味が込められているだろう。紹介された彼が唯一の召喚魔法使いでは無いこととか、最強ではないだろうと言う事とか…。しかし、俺以外の召喚魔法使いかぁ…。いたんだなぁ、新入生にも、そう言う子…。知らなかった…。


「むぅ………」


 アリーは、低く唸って、なにか言いたそうにしている。だが、流石に、俺が召喚魔法使いであるということは、言う訳にはいかないせいだろう。我慢して、口をつぐんでいる。


「召喚魔法使い…。すごいね。いい練習になりそう…!!」


 レラは、特に召喚魔法使いであることは気にしていない様子だった。というか、召喚魔法自体は、使うのはOKなんだな。まぁ、あれも魔法であることには変わりないし、当然といえば、当然か。ミラに、戦闘経験が、あるのかが問題だな…。


「よし、それじゃあ、始め!!!」


 開始の合図とともに、ミラは、相手が魔法使いということも有り、急いで間合いを詰め、接近戦に持ち込もうとする。相手は、土魔法で壁を作り、ミラの侵攻を防いだ。ミラが、急いで、魔法で壁を破壊するが、もう遅い。


「召喚!!!リザードッグ!!!!!」


 相手の詠唱がおわり。強力な、魔物が闘技場に姿を表していた。その姿は、二本足で立っていて、まるで恐竜のような姿勢をしている。顔立ちは、犬のようだが、爬虫類のようでもある。


「ギシャアアアアアアアア!!!!」


 瞬時に、相手の魔物は、ミラに攻撃を仕掛けた。そのあまりに、素早い動きに、ミラは、ギリギリではあるが反応し、防御をしている。が、それに加え、相手の召喚魔法使いの、魔法攻撃が、ミラを襲った。堪らず、魔法攻撃を避けるミラだったが、その間に、魔物の攻撃をもろに食らってしまう。


「ぐあぁぁ!!!」


 魔物の突撃をくらい、ミラは大きく、闘技場外に吹き飛ばされてしまう。


「よっと…」

「あっ、ありがとう、ベイ君」

「どういたしまして…」


 俺は、飛んできたミラを受け止めた。しかし、すごい力だな。俺は、ミラを下ろして闘技場に向かう。


「怖かったら、棄権してもいいぞ…」


 相手が、親切にもそう言ってくれるが。俺の中では、仲間たちが爆笑していた…。


「(な、なんですかあれ…!!!あれで、新入生最強…!!!あははははははははははは……!!!!)」

「(笑うな、ミルク…。本人たちは、あれで真剣なんだろう…。クッフフ…)」

「(殿に、怖かったら棄権しろって……。とても、高度なギャグですね…。フフフ…)」


 まぁ、仕方ないよな。どう見ても、あの魔物は中級程度。皆からすれば、すでに戦わずとも、前に出るだけで相手から逃げるような、相手だ。そうも、なるだろう…。


「さっき、スーヤさんが言ったかもしれないけど…。私達も、新入生最強の子を、最後に置かせて貰ってたんだよねぇ~。ベイ・アルフェルト君、彼の実力は、本物だよ」


 俺は、レラの紹介と共に、闘技場に上がり、相手と向き合った。



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