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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
第ニ章・三部 高みを目指して
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製作交渉

 次の日の放課後。闘技場の一区画を借りて、練習試合は行われた。その場には、レラの研究会の会員もいる。せっかく借りたんだし、今日はこっちでの練習をしたい、ということらしい。


「よーし!!!2人共、気合入れて頑張って!!!」

「やっと、戦えますねベイ君」

「ああ、そうだな…」


 ミオは、ゆっくりと剣を抜き放つ。彼女の口元が、笑っているように釣り上がり。逆に不気味さを漂わせていた。素振りのように、数回、剣を振ると、剣に書いてある呪文が赤くなり、魔力が剣を包んでいく…。


「ふふっ、やっぱいいわね…」


 何と言うか、威力の有りそうな剣だ…。赤く光ってるのも、剣の軌跡が分かって、面白い。ミオの顔から察するに、相当な価値のある剣なんだろう。ミオは、煌めく刀身を見つめて、うっとりとした顔を浮かべている…。


「ふむ…」


 ところで、俺の剣はどうだろう?毎日、手入れを怠っていないから、刀身は綺麗に光っているし。なにより、しっくり手に馴染む。極めつけに、アリーに、貰った剣だ。俺にとっては、どんな剣よりも価値がある。思えば、ずいぶん長い間使ってるなぁ…。こいつと一緒に、何回もの戦闘をこなしてきた…。特殊なところはないけれど、十分に、こいつはいい剣だ。相手の剣が、どれだけすごかろうと、俺にとって、こいつに勝る剣は無い…。


「へー、いい剣ね。この子ほどじゃあないけど…」


 俺が、自分の剣を見ていると、ミオも俺の剣を見ていたのか、そう言ってきた。まぁ、悪い気はしないな。赤く光ったりはしないから、相手より性能は低いのかもしれないけど、そこは、俺の腕でカバーすればいい。今日も、頼むぞ。そう思いながら、俺は剣を軽く振って、気合を入れた。


「よーし!!!それじゃあ、試合を始めようか!!!」


 レラの合図で、俺達はそれぞれ構える。周りで、準備運動をしていた、他の研究会の人達の目が、こっちを向いている気がした。


「ベイー!!!ファイトー!!!!!!」


 アリーの応援の声が、耳に届く。……、絶対勝つ!!!!!!!!そう、思わずにはいられなかった。


「それじゃあ…、始め!!!!!」


 レラの合図とともに、ミオは魔法を放つ。無詠唱で、その弾数は10発。全ての魔法が、剣の刀身から放たれている。………やっぱり、魔法威力増幅の剣、ということだろうか?


「うーん…」


 アリーは、ミオの剣を観察している。魔力の動きを眺めているんだろう。俺は、普通に10発の魔法を展開して、迎撃した。


「へー、易々とあの弾数を防ぐなんて、やるわね…」


 つい最近、隕石が無数に降ってくる魔法を相手にしたから、それからすると、楽なのもいいところだけど…。実際の年齢的には、このぐらい弾数出せればいいほうなのかなぁ…?でも、アリーは訓練の時に、余裕で30発同時撃ち、とかしてくるからなぁ…。アリーは、やっぱりすごいんだなぁ…。


「なら、これはどう?」


 今度は、上級程度の魔法を、1つずつ放ってくる。俺も、丁寧に、一個ずつ相殺した。…うん?何かおかしい。これだけ、連続して撃ってるのに、この年齢の子にしては、魔力量が多すぎじゃないか?いくら、魔力消費を抑える剣と言っても、流石に限界があるだろう…。だが、ミオは、お構いなしに魔法を連発してくる!!


「次は、これ!!!!!」


 広範囲に広がった炎の壁が、俺を押しつぶさんと、迫ってきた。ピンポイントで、俺に当たる部分のみ、相殺して魔法を消す。


「はああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」


 魔法を消したところから、ミオが俺に切り込んできた。横薙ぎ、袈裟斬り、と続けて剣を振るう。俺は、自分の剣で、その攻撃を受け止めた。…、昨日、攻撃を受けた時より威力が高い。強化魔法を、使っているようだ。でも、本当にお構いなしに、魔法を使うなぁ…。何か秘密があるんだろうか…?


「でええええあああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」


 気合を入れた、ミオの一撃が振り下ろされる!!が、今の俺なら、強化魔法をかけて、防ぐまでも無い。横から剣を当てて、ミオの剣を弾いた。


「うわぁ!!!」


 そのまま、持ち手で、ミオの剣の柄部分を叩き。ミオの腕から、剣を離させる。すっ飛んだ剣は、闘技場を滑り、少し先に転がった…。


「あっ…」


 俺は、ミオに剣を向ける。…これで勝負は決まりだろう…。


「……なんてね」


 転がった剣が、赤く輝く。瞬時に、宙を飛んで、剣はミオの腕に戻ってきた。ミオは、そのまま再び、俺に斬りかかる…!!


「やっぱり、すごい技量ね。とてもそっちでは、敵いそうに無いわ…。だから…!!!!!」


 ミオの剣が、俺の剣を狙うように振り下ろされた。こいつ、武器破壊を狙っているのか…。


「あなたの並外れた技量も、剣がなければ意味が無いもの。それさえ無くなれば、後は、私が勝つ!!!!!」


 ………、余程、魔力に自信がある、ということだろう。まぁ、この剣がなくても、俺が負けることはないだろうけど、こいつを壊される訳にはいかない。アリーとの、大切な思い出のある剣だしな…。俺は、ちょっと本気をだすことにした。


「え…?」


 今までは、受けているだけだったが。今度はそのまま、力に任せて、相手の剣を押し返した!!軽々と、強化魔法をかけているミオの身体が、宙に浮く…。


「…くっ!!!!」


 何とか、体勢を崩さず、着地したミオだが。俺は、そのまま足払いをした。今度こそ、ミオは体勢を崩し、地面に尻もちをついてしまう。


「うわっ!!!」


 その間に、俺の剣は、ミオの首筋に押し当てられた…。ミオは、その事実に気づき、動きが止まる…。


「…ベイ君の勝ちいい!!!!!!」


 レラの合図で、試合が終わる。俺は、ミオからゆっくり離れると、剣を鞘に戻した。


「はぁ……。完敗ね…」


 ミオも起き上がると、剣を鞘に戻す。


「うん」


 ふと、ミオは握手するように、腕を差し伸べてきた。取り敢えず、俺も握り返す。


「次は、私の剣が勝つからね…」

「え、ああ…。楽しみにしてるよ」


 ……この学校の女子は、負けん気が強いなぁ…。…それにしても、幾つか気になる点がある。俺が、そう思っていると…。


「あなた、ミオって言ったかしら?」

「うん?えっと…」

「申し遅れたはね。私は、ベイの嫁の、アリーって言うの。よろしくね」

「よ、嫁!!!ええ、よろしくお願いします…」

「それで、幾つか質問があるのだけれど、ここじゃなんだし、場所を変えないかしら?」

「場所を?何が聞きたいんですか…?」

「その剣について、ちょっとね…」

「………分かりました。では、向こうで話しましょう…」

「分かったわ。じゃあ、ベイ、一緒に行きましょう」

「えっ?ああ、うん」


 俺達は、レラに一言、話してから。闘技場の、人通りがない裏手で、話し始めた。


「……単刀直入に言うけど、その剣、空気中から魔力を吸い上げているわよね?」

「…!!!!!!!!!!!……ええ、その通りです。何故、知っているんですか?」

「さっきの試合中に、魔力の流れを見てたからよ。面白い機構ね。魔力を自ら溜め込んで、放出することが出来る魔石の剣。良いものだわ…」

「!!!!ふふっ、そうでしょうとも!!!この剣がある限り、私は無限に魔法が撃てる…!!!私の、最高傑作です!!!!!」

「へー……」


 確かにすごいな。そんな剣、魔法使いとしては喉から手が出るほど、欲しい剣じゃないか?


「でも、一定以上の魔力を貯めれず。一定の威力の間でしか魔法を出すことが出来ない…。そう言う作りよね?」

「……ええ、その通りです。この剣ですと、上級魔法1発分ですね。その容量内でしたら、複数発に分けた、魔法の射出も可能です。あの短い時間で、そこまで分かるとは…」

「ふふ、まぁ、私、天才だからね…。で、質問なんだけど。その容量を上げる方法ってある?」

「えっ、………あ、あるにはあるんですけど……」

「もしかしてだけど…、高純度のランクの高い魔石を使えば、容量を上げられるんじゃないの?」

「………え、ええ。その通りです…。でも、高ランクの魔石は高いですから、とても手が出ません。この剣の素材以上の魔石となると、家が買えてしまいますし…」


 ……俺、それをぽんぽん量産できるんだよなぁ…。……もしかして、俺。もう、働かなくてもいい?


「ふむ、なるほどね…。ねぇ、高ランクの魔石で、剣を作ってみたくはない…?」

「いや、確かに、作ってみたいですけど…。お金が…」

「作った剣をくれるなら、魔石を提供してもいいわよ…?」

「!!!!!!!ほ、本当ですか……?」

「ええ、それもとっておきの、神魔級クラスの魔石をね……」


 アリーはそう言うと、俺に笑顔で微笑んだ…。


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