何が違うか
「で……、わずか2日で、会員の女性2人を落としたと……」
「そうなんですよ、アリーさん。いや~、流石、ご主人様ですねぇ~」
「…………」
なんだろう、すごい胃にストレスが掛かってる…。いや、本当。俺、何もしてないんだアリー!!!本当なんだ!!!信じて欲しい!!!
「……まぁ、ベイに色仕掛けなんて、自分から落ちに行ってるようなもんよね…。仕方ないわ…」
そう言いながら、アリーは夕食を食べ進める。いや、実際そうだったかもしれないけど、何でそこまで相手が落ちてるのかが、俺には分からないんだけど?……俺の身体、なにか変なのかなぁ……。
「……なぁ、アリー。俺の身体って、どこか普通と違うのかなぁ?」
「うん?」
アリーは、飲み物を一口飲んで、息を吐く。
「ふぅ……、そうね。ベイは、普通じゃないわ」
「あ、やっぱり……?」
「ええ、そうよ。その年で、神魔級迷宮攻略なんて。普通どころか、人類としては、もう最強レベルじゃないかしら…?多くの強者が束になっても敵うかあやしい相手を、皆の力を借りたとはいえ、もう確実に倒せるだけの力があるし。その全員の魔力を、ベイが共有・保有している状態になっているわけだから。どんな、鈍感な人類でも、ベイの動きや、鍛えた身体を見たら、憧れみたいなものを抱かずにはいられないと思うのよねぇ……」
……なるほど。創世級を倒すために鍛えていることが、逆に人を惹きつける要因になってるってことか…。それなら納得……、なのか?
「まぁ、どんな強力な力を持ってても、他の人なら、たいしてモテないでしょうけど。……ベイだものね。落ちるのは仕方ないわ」
え!!なに?他にも、心当たりがあるの?そこを、教えて欲しいんだけど……!!!!!!
「まぁ、ご主人様ですからねぇ……」
「マスターですから……」
ええー!!全員、知ってるの!!!?しかも、誰も言ってくれない!!!
「他に、何か理由が……?」
「ねぇ、ベイ。世の中には、どうしようもない事もあるの。性格とか、容姿とか、能力の成長具合とか…。……モテるのは宿命だと思って、諦めたほうがいいわ。私は、大丈夫だから、ガンガンモテてもいいわよ…!!!」
……え、ええー。お、教えてくれないのか……。まぁ、アリーのことだ。俺のことを考えて、はぐらかしてくれてるんだろう。俺は、アリーを信じて、これ以上、話を追求しないことにした……。
「そう……、何人にベイがモテても、何回でも相手してもらえるようにする……。その為の、神魔級回復魔法。……早く完成させなきゃね(ボソッ)」
……なんか、アリーがいきなり色っぽい顔をしているんだが、どうしたんだろうか?ベッドに連れて行きたい…。
「神魔級回復魔法が完成すれば、子供の出産も安全にできると思うし……」
「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
……アリー。俺との幸せな将来の為に、神魔級回復魔法を……。……俺も、アリーと、皆と、子供と、幸せな暮らしがしたい……!!!!!!!!!!一刻も早く、神魔級回復魔法を完成させねば…!!!頑張ろう…!!!!!!その日は、張り切って魔法研究を進め、いつも通り、皆に囲まれて、ゆっくり眠った。
*
うーん、なんだかんだで研究をしだしてから、数日、時間が経っているが。一向に、神魔級回復魔法、完成の目処は立っていない。まぁ、これだけの威力のある魔法だから、厳重な注意を払って研究を進め無ければいけないし。魔法陣の代用をする呪文を考えるのに、いくつも工程を重ねなければならないせいだ。暴発して、部屋が吹き飛んでも困るしね…。少しずつ、ゆっくり進めるか…。なーに、俺にはアリーが付いている。一年しない内に、改良は出来るだろう…。しかし…。
「アリーは、天才すぎるなぁ……」
ただ改良するだけって言っても、俺も手伝っているのだから、その難しさは、とても良く分かる。根気はいるし、なによりセンスが要る。正直、アリーじゃなければ、1年以内に改良できるなんて、冗談でも言えないだろう…。
「すごいよなぁ…。アリーは…」
「アリーって誰かなぁ…?」
「うおおおぉ!!!!!!!!!」
今、俺は学校で、朝の授業の開始を待っているところだった。アリーのことを考えて、気持ちが散漫になっていたから、いきなり声をかけられて、驚いてしまう。誰だ、と相手を見ると。昨日、俺を離さなかった2人だった…。
「アリーって誰かな?」
「おはようー、ベイ君!!ほら、レノン。アリーって、ベイ君のお嫁さんの名前よ!!」
「…ああー、確か、レラさんがそう言ってたっけ?」
「そうそう」
2人は、俺の机の前に陣取る。というか、何の用だろう?研究会活動には、まだ早すぎるような…。
「おはようございます…。どうしました、こんな早い時間に。授業まで、もう少ししか時間がありませんけど?」
「ああー、そうだった!!実はね、今日もベイ君に、どうしても練習に来て欲しいんだぁ……」
「ミラちゃんがね、どうしてもベイ君に会いたいって人がいるみたいで、連れてくるって言ってて。それで、是非ベイ君に来て欲しいなぁーって・・・」
ふむ、ミラって確か、新人のクール系の子だったかな?……いったい、何の用だろう?
「何か、詳しく言ってました?」
「うーん、さっき短めに聞いただけだから、細かくは、知らないんだぁ……」
「そうそう。丁度いい、ベイ君に会う口実だったし、特に聞かずに来ちゃった…!!」
「ちょ、ちょっと、サラ!!!」
「ふふっ、私、今日から攻めていくことにしたから…!!」
サラは、俺の背中に回ると、俺をゆっくりと抱きしめ。背中に、胸を、押し当てる。
「ううーん、ベイ君はやっぱり逞しいねぇ…。安心するというか…。落ち着くというかぁ…」
背中から、サラの鼓動が高まってきているのが分かる。きっと、顔も赤くなっているだろう。
「わ、私も……!!」
そう言うと、レノンは俺の腕を取って、自分の胸に……。
「あ、あの~。あと5分で、授業が始まっちゃうんですけどぉ……」
「え?……、うわああああああ!!!本当だ…!!!!」
そう言ったのは、ニーナだった。顔が赤いところを見ると、俺達の様子をうかがっていたんだろう。周りに、今の行動が見えないように、自分の体で隠してくれている。5分前なので、席を離れていた生徒たちも、そろそろ着席し始めていた…。あのまま続けていたら、かなりの生徒に、今の場面を目撃される結果になっただろう…。ありがとう、ニーナ。止めに入ってくれて…。
「じゃあね、ベイ君。放課後、また校舎前に迎えに来るからね!!」
「うん、またあとでね…!!」
そう言うと、2人は、急いで教室を出て行った。手を振って、俺とニーナは見送る。
「……その、2人共、大胆だね…」
それだけ言うと、ニーナは顔を赤らめて、席に戻っていった。確かに、ニーナの言う通りだと思う。まぁ、されているこっちとしては、悪い気分ではないが。流石に、人目は気にして欲しいところだ……。
「……にしても、俺に会いたい人かぁ……」
正直、何で俺に会いたいのか、全く想像がつかない。しかも、あまり知らない新人の子の知り合いとなれば、警戒していいのかも、悩む所だ……。
「やっぱり、行くしかないかぁ……」
俺の、3度目の研究会訪問が決まった。