決め技
「んじゃあ、一旦休憩しようか…」
「はい!!」
だいたい10分間ずつくらいで、10回……。ほぼ、ここにきて二時間ってとこか。……まぁ、いい運動になったかな。確か、これぐらいで、いつも活動はおえてるって言ってたから、俺も、もう帰っていいだろう……。俺は、木剣を元あった場所に戻し、レラと、ニーナの方に近づいて行った。
「……と、言う訳で!!!うちに入会しないかい、ベイ君?」
「……………はぁ?」
いやいや、何故そうなるんだ。俺は、一時期だけの助っ人のはずでは……?それに、女性だけの研究会のはずだし……。
「いやいや、何でそうなるんですか……。他の会員の方たちが、いいと思わないんじゃあ……」
「うわー!!!研究長!!!とても素晴らしい考えだと思います!!!」
「そうそう!!ね、ベイ君!!私達と、楽しい学園生活を一緒に送らない……?」
いきなり、両脇から腕を絡められた!!……ああ、俺を連れてきた2人か……。また、太ももが当たってる……。柔らかいなぁ……。
「あー、ちょっと、俺にも、俺のすることがありまして……」
創世級を、数年以内に、とっちめないといけないんです。なんて、実際に言っても、信じてもらえないだろうから、言わないけど……。パニックに、なっても困るし…。
「へー。することって何?気になるなぁ~?」
「気になりますね……」
新人の2人も、俺に、いきなり擦り寄ってくる!!え、何!!何でこうなってるの??????
「い、いやぁ…、魔法使いは、人に目的をばらすべきじゃ無いって、嫁さんが言ってるんで。そこは秘密ということで……」
「え~!!」
「気になります……」
何をするんだ!!!俺の身体に、指先で、のの字を書くのをやめなさい!!!くすぐったい!!
「うわぁ!!!ベイ君の筋肉、固い!!!」
「ほうほう、これはいいですね……」
「「うん、うん」」
何故か、両脇の2人も頷いている…。訓練の成果を褒められて悪い気はしないけど、やはりこれはセクハラでは?会員と、こんなことしている男が、いていいんですか!!レラ研究会長!!!
「うんうん、皆、仲良くていいね…!!」
あ、駄目だ、この人。俺が、そんなふうに扱われてるとか、微塵も思ってないわ……。むしろ、フレンドリーな、スキンシップだと思ってるわ……。……、いや、待てよ。確かに、そうかもしれない!!よく考えても、俺が、セクハラされる状況が理解できない!!きっと、この子たちも。珍しいから、つい触っちゃった!!的な、感じなんだろう…。なるほど。それなら、説明がつくな!!太ももに、腕が挟まれている理由は、一向に分からなくなるが……!!
「おおー。ほうほう……」
「カチカチ…」
男の身体を触って、カチカチなんて。うら若い乙女が、言ってはいけません!!嬉しいけどね!!……にしても、この状況をどう脱したものだろうか?ニーナに助けを求めるとか…。あ、駄目だわ!!ニーナ、顔を赤くして、オロオロしちゃってるわ!!……やはり、自分で何とかするしか無いか…。取り敢えず、太ももから、腕を抜かないと……。俺は、腕をちょっと動かした……。
「ひゃぁあ…!!」
「ひぃいう…!!」
……………あー、いかん…。今、完全にアウトな声が、両脇から聞こえた…。一瞬で、周りが無音になったし……。これは、まずい……。
「も、もー、ベイ君。ちょっとくすぐったかったから、あまり動いちゃ駄目だよ」
「そ、そうね……!!」
周りから、なーんだ、みたいな声が聞こえる。ふぅ……、危ないところだった。でも、腕は抜けたぞ。後は、この2人を腕から外すだけだが……。
「二人共。なんか色っぽい声が出てたよ…」
「あはは。ちょっと、ビックリしちゃって…!!」
「うんうん…!!」
あー、駄目だこれ。がっちり、掴まれてるし。体全体で密着してるから、無理矢理、離させるかしないと難しそうだな……。でも、振り払うのも、可哀想だし……。押しても駄目なら、引いてみろと言う言葉がある。ならいっそ、抱きしめてみるのも、有りではないだろうか?……俺は、2人の腰に、自由になった腕を回して、引き寄せた。
「えっ…!!」
「ひゃぁ…!!」
2人は、移動して俺の腕の中に収まる。その際、俺の腕から手を離し、俺の胸板に置いた。
「あ……」
「あう……」
うーん。いい感じに腕が外れたな。俺は、俺を見て固まっている2人をよそに、その場から一步引いて、距離を取った。
「(おっとーー!!!!今、私には、2人分のハートが射抜かれる音が聞こえました!!!!!解説のレムさん、只今の技を、どうお考えですか?)」
「(解説?そうだな。主に抱きしめられたら、今の私ならキスまで行くな!!!それぐらい、今の技は、あの2人に効いていると思う)」
「(なるほど!!レムも大胆になってきてますね!!!しかし!!!!これで、あの2人が、ご主人様に、落ちたことは間違いないでしょう!!!!今後が、楽しみなところでは有ります!!!!)」
え?!!まじ!!今ので……。確かに、二人共、顔を赤らめたまま、固まって動かないけど。そんな、簡単に落ちるもんなの?流石に、今回は勘違いじゃないか?
「え、ベイ君……?」
「あの~、そろそろ、遅い時間なんで。俺も、帰ろうと思うのですが…?アリーも、待ってますし…」
ともかく。レラと、新入生の子が、俺の行動に混乱している間に、この場を切り抜けよう!!もう遅い時間であることを、強調すれば、この場は大丈夫なはずだ!!
「え、ああ、そうだね…!!もう、片付けの時間だし、……そっかぁ、アリーさんが待ってるなら、早めに帰ってあげたほうがいいね。うん。お疲れ様、ベイ君!!また、次もお願いしていいかな……?」
「ええ、まぁ、時間がある時なら、いつでもいいですよ。では、今日はこれで、お疲れ様です」
「「「「お疲れ様ー」」」」
会員の皆に、挨拶を貰って、俺は帰る。これ以上いたら、色々と桃色的な意味で、展開が進行して抜けられそうになかったので、ここがいいタイミングだろう。片付けも手伝いたいが、致し方ない。ともかく、俺は、部屋に帰ることにした……。
「あ、あの!!今日は、見学させて頂いて、ありがとうございました!!」
「あ、いいよ、いいよ。少し、長くなっちゃった。ごめんね?」
「いえ、大変参考になりました。ありがとうございます…!!そ、それで、わ、私も帰りますね!!ありがとうございました!!……まってー!!ベイ君!!」
俺の後ろを、急いでニーナが追いかけて来る。うーん、流石に、まだ、あの空間に1人でいる気には、ならなかった訳か……。まぁ、でも、レラとは相性良さそうだったし。意外と、この研究会で魔法を練習することは、ニーナにとってプラスになるんじゃないかなぁ…。俺は、追い付いてきたニーナと、雑談をしながら、部屋まで帰った…。
*
「どう……?」
練習おわりの、水浴び。1人、いつもより、頭から水をかぶっている者の姿があった…。
「……ふぅ。……駄目だ。ベイ君の顔が、頭から離れない……」
「だよね……」
水を浴びてもなお、二人の顔はどこか、赤くなったままだった……。
「……先輩達、まるで恋でもしてるような顔ですね」
「……!!!!!!!!!!!!!!!!」
「え、…その、いや。…そんなこと…」
後輩に言われ、2人は無言でうつむく……。顔がどんどん赤くなり、誰が見ても、その事実は明らかだった……。
「…………また、明日。ベイ君、誘いに行こうか…?」
「そ、そうだね…。そうしよう……」
2人は、力強く頷いた……。
最近、アドバイスを感想でいただけたのですが。悪かった点だけでなく、おもしろかった、などの感想もください。作者が、不安になりますので・・・。楽しんで頂けてるならいいんですけども・・・。