土属性神魔級迷宮
土曜日の朝。朝ごはんも食べ、準備もしっかりとしたあと移動し・・・。今、俺達は土属性神魔級迷宮・死の大地の前にいる。・・・名前からして、近寄りたくなさが出ているな・・・。分かりやすい。ちなみにだが、アリーは今日も家で、神魔級回復魔法の改良をしている。
「よし、行くかぁ・・・」
一步を踏み出して、皆で神魔級迷宮内に入る。本来なら、ここから適当に魔物を探って、戦っていくところだが・・・・。
「グワアアアアアアァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!!」
いきなり正面から、獣の前足が俺に向かって振り下ろされた。素早く、剣を抜いて強化魔法をかけ、相手の攻撃を防ぐ。
(重い攻撃だな・・・・・!!!)
その魔物は、狼のような体格だが全身の毛が茶色く、顔が大きく獰猛になっている。半開きになっている口からは、獲物を噛みちぎるための鋭い牙が見え隠れしていた。
「グワアアアアアアァァ!!!!!!!!」
「・・・・!!!!」
別の方向からも、同じ鳴き声がする。見ると、同じ種類の魔物が5頭ほど、俺目掛けて突っ込んできていた。
「まずいな・・・・」
「まぁ、ご主人様・・・。あっちはお任せ下さい!!」
俺は、受け止めていた魔物に、近距離で魔法を叩き込むと、そのまま全力を込めて切り伏せた!!!!
「ギャアアァァァァアアアア!!!」
魔物は、悲鳴を上げて身体が斜めに、真っ二つになる。だが・・・・。
「グ、グガガァ・・・」
頭が付いている半身が、なお身体を引きずって俺に向かってくる・・・。片足だけで器用に前進し、牙を剥いて、俺に向かって飛びかかってきた!!
「グギャアアアアア!!!」
「・・・・・」
俺は、剣でその攻撃をいなし、魔法を相手の頭に叩き込む!!!!!
「ガ・・・、グガ・・・!!!」
ようやくそれで、魔物は息絶えたようだ。
「流石に神魔級・・・!!こいつら、動きが早いですね・・・。連携もするし、ちょこまかと・・・!!」
先程と同じ魔物5頭が、ミルクと一定の距離を取って戦闘をしている。ミルクは土魔法で作った巨大なガントレットを装備し、仲間の魔法の牽制に合わせて突っ込んできた魔物1頭を、腕で掴んだ。
「まぁ、ミズキほどじゃないですがね・・・・」
「ギ・・・、ガガ・・・・・」
そのまま、ミルクは魔物を握りつぶす。悲鳴すら、満足に上げられないまま、魔物は絶命した。
「・・・・・ふむ、耐久力も他よりありますね・・・。固い・・・・」
いやいや、その魔物を易易と握りつぶすんだから、ミルクはさすがである。まぁ、光景は少しグロいけど・・・。
「さっさと片付けるか・・!!」
「そうだな・・・!!」
レムと、ミズキが残った4頭に突っ込む。魔物は口から、魔法を放って攻撃しようとするが・・・・。
「おっと、それはさせない・・・!!!」
ミズキが指を空中で躍らせる。見えないくらいに細い水の糸が、器用に魔物たちの口に絡みつき、尽く、その口を引き絞って、閉じさせた。
「頭を狙えばいいんだったな・・・・!!!!!」
その隙に、レムが魔物目掛け、剣を振り下ろす!!的確に、魔物は頭を真っ二つにされ、瞬時に絶命した。
「あたしもっと!!!」
魔物は回避行動を取ろうとするが、ミズキの糸によって動きを封じられている。カヤの振り下ろした棒が、そのまま、魔物の頭を粉砕した。
「私も負けていられません!!!!どりゃあああああ!!!!!!!!!!!!!!!」
ミエルが、聖属性魔法をかけたハルバードを振り下ろす!!魔物の頭に当たり、そのまま押し潰すかに見えたが、魔物は、頭から血を流してはいるものの、その頭骨でミエルの攻撃を受けきっている・・・。
「ふぐぐぐ!!!!!」
「ギ・・ギ・・・!!!!!!」
ミエルは、そのまま力をいれ、魔物を切り伏せようとする。だが、魔物もミエルの攻撃を受けてなお、倒れようとはしない・・・・。
「・・・くっ、おりゃああああああ!!!!!!!!!!!!」
ミエルが、武器に込める魔力を上げる。徐々に、地面に向かって魔物の頭を押しつぶし・・・。そのまま切り伏せた!!!!!
「さよなら・・・」
残った1頭を、フィーがミルクの能力を使った土属性魔法で、土の槍を作り、頭を貫いた。
「グガァァァ・・・!!!!!!!!」
・・・これで5頭の魔物を倒しきった。だが、安心せずに、俺達は周辺に気を配る・・・。
「・・・・うじゃうじゃいますね、ご主人様・・・。さすが、神魔級。歯ごたえがありそうってところですかね・・・」
ミルクの言った通り。すでに、俺の索敵範囲内だけでも、かなりの量の魔物を確認することが出来た。空は外界と比べ、歪み、気味の悪い色をしている。地面は、固い岩のような大地が続き。ここから見る限り、緑は一つも確認できない。ただ、不規則に隆起している岩だけが、進みづらそうな地形を作り、この景色の禍々しさをより引き立てていた。
「・・・・これが、土属性神魔級迷宮・・・・」
まるで、迷宮内が一つの戦場のようだ。野生の魔物も、たえず、他の種族の魔物を襲っているようで、耳を澄ませば、魔法が飛び交う音と、魔物の悲鳴や、雄叫びが聞こえた・・・。
「この戦場を移動していくのは、戦いの連続になるでしょう・・・。まともに休めるところがあるかも分かりません。どうします、マスター・・・?」
「・・・・・そうだな・・・。大きな魔力の位置を感じることは、誰か出来るか?」
全員が、周囲に気を配りながら感覚を研ぎ澄ます・・・。
「・・・・、ありました。ちょうど、この迷宮の中心に大きな反応があります。マスター」
見つけられたのは、フィーだけのようだ。・・・分かりやすい位置ではあるが、この戦場を、真っ向から突っ切っていかなければいけないということでもある。ボスに着くまでの、連続戦闘は避けられないと思っていいだろう・・・。
「・・・よし、陣形を組みながら、出来るだけ連携して魔物を倒していこう。ミズキは、皆のサポートを頼む」
「承知しました!!」
「ミエル達は、4人で上手く連携してくれ。やばそうなら、他の皆が助けてやって欲しい。・・・では、これから迷宮の中心を目指して進む。頑張ろう!!!!」
「「「「「「「「「はい!!!!!」」」」」」」」」
全員で一致団結し、迷宮を進み始める。
「(私も、お役に立てればよかったのですが・・・。こん・・・・)」
「気にするな、シデン・・・・。今はまだ、その時じゃないだけさ・・・」
俺の中のシデンは、寂しそうにしている・・・。だが、今は仕方ない。皆の動きを見て、今後の戦闘の参考にしてもらおう。それでも、今のシデンになら、いい刺激になるはずだ。
「マスター、左から接近してくる魔物がいます・・・」
ズズン!!と地面が揺れる・・・。それは大型のゴーレムだった。強固な皮膚で全身が包まれており、体型は人間的に、痩せているようにも見える。だが、その全長は大きく。ちょっとした高層ビルぐらいはある。
「ウオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォッォオオオ!!!!!!!!!!!!!!!!」
ゴーレムの雄叫びがこだまする。腕を勢い良く振り下ろし、俺達を押しつぶそうとしてきた。
「ふふっ!!殴りがいがありそうですね!!!!!」
勢い良く、ミルクが地面を蹴って飛び上がる!!ミルクの拳が、その全身よりも大きい拳とぶつかった!!!
ズドオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォオオオオオオオオオオオオンンンン!!!!!!!!
巨大な音と、互いの拳がぶつかり合った衝撃が周りに伝わり、土埃を巻き上げる。ミルクの拳は、巨人の拳を粉砕し、拳を失った巨人は大きく後ろにのけぞった。
「グオオオオオオオォォォォォオオオ!!!!!!!!」
「畳み掛ける・・・・!!」
ミズキが水の手裏剣を投げる。巨人に刺さった手裏剣は、そのまま大きな音をたてて、爆発した。
「グガアアアアア!!!!!!!」
爆発に巻き込まれた、巨人の体の一部が崩れる。その巨人の頭の上に、いつの間にかミルクが乗っていた。
「ちいいいいいぇええええええええすとおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!」
ミルクが気合とともに拳を振り下ろす!!巨人の頭から、ミルクの打撃の衝撃が伝わり、全身に亀裂が入っていった。
「ッガァ・・・」
徐々に、巨人の身体が崩壊し、崩れ始める・・・。こんな奴が、まだまだいっぱいいるわけか・・・・。
俺達は気合を入れ直し、迷宮の中心を目指して急いだ。