調査
「神魔級迷宮ねぇ・・・・。遂にって感じね・・・」
学校から帰って、アリーに相談しながら、迷宮の場所を探す。どうも、ここから近そうなのは、土属性と、水属性の神魔級迷宮のようだ。・・・・しかし、アリーはどこか心配そうな顔をしている。
「・・・神魔級はやっぱり、そんな手強いのかなぁ・・・」
「うーん、ベイは知っていると思うけど、迷宮のボスはその上のランクの魔物に近い実力を持っていると言われているわ。・・・当然、神魔級ともなれば、そのボスは創世級に近い力を持っているということになるわね。・・・つまり、創世級と戦う腕試しとしては、最適な相手ではあるんだけど、それぐらい規格外な相手でもあるってことよ」
「油断はできない相手ってことかぁ・・・」
「それどころか、魔物も今までとは別格なんだから、ボスに行くまでもきついでしょうね。・・・きつかったら、無茶しちゃ駄目よ、ベイ」
「ああ、気をつけるよ・・・・」
やはり、神魔級迷宮に行くにしても、十分に気をつけて行ったほうが良さそうだ。皆も十分に強いとはいえ、聖魔級の魔物であることには変わりがない。一つ上の魔物がどのくらい強いかは分からないが、格上である以上、自分達より強いと想定していったほうがいいだろう。
「まぁ、私達に任せておけば神魔級ぐらい、もう大した問題でもないですよ!!ね~、フィー姉さん!!」
「ミルク、油断しちゃ駄目。でも、マスターの邪魔をする者は、何であろうと倒します。安心して下さい、マスター」
「ああ、頼りにしてるぞ、皆」
皆が一同に頷く。
「私も及ばずながら頑張りますわ!!」
「いえ、シデンはご主人様の中で様子見ですね」
「こん!!!!!」
シデンはそう言われて、若干しょんぼりしている。いや、まぁ、流石にシデンを神魔級迷宮で召喚しておくのはリスクが高すぎるだろう。今回、見学なのは仕方ない。
「・・・・・その、私達は大丈夫なんでしょうか?」
「そうっすね・・・。私達の力で通用するのかどうか・・・」
「確かに、不安ね・・・」
「そうですね。皆さんの訓練にも、まだまだついていけてない我々では、足手まといもあり得ます」
うーん、ミエル達かぁ・・・。そうだなぁ・・・。
「最初に魔物とあたってみた時に、その判断はしようと思う。やれそうなら、訓練として戦ってもらおうと思うから、一応、心構えはしといて欲しい」
「わ、分かりました!!!ベイさんの期待に答えるべく、頑張ります!!!!」
「ミエル様、気合入ってるっすねぇ・・・」
「アピールチャンスですものね・・・」
「しかし、神魔級魔物との戦闘ですか・・・。いい経験になりそうですね・・・」
そう、創世級と戦うことを考えている俺達にとって、神魔級迷宮はこれ以上ない最高の訓練場所だ。ここで、いかに力を付けられるかによって、創世級との戦いが決まると言っても過言ではない。神魔級迷宮での戦闘経験は、きっと創世級との戦いでも役立つだろう。なんとしても、攻略はしておきたい。
「で、・・・・土属性と、水属性が近いんだが、どっちにする?」
「土ね。水はどんな地形になってるか想像しづらいわ。土なら、まだましな地形でしょう」
「アリーさんの言う通りだと思います、マスター。前の水属性聖魔級迷宮は、全方位から攻撃を受けるリスクが有りました。それを、神魔級でいきなり体験するというのは、かなりきついと思われます」
「うーん、確かにそうだな・・・。じゃあ、土属性神魔級迷宮に決定しよう」
そして、その日から俺達は訓練を軽くして、神魔級迷宮への移動を開始した。
「うーん、と言っても、今週の土曜にはつきそうね。このペースだと・・・」
「今の俺達でそれだけかかるってことは、結構、距離はある方だけどね」
数時間しか移動しないと言っても、今の俺達の移動速度はかなりのものだ。明日で、迷宮入口に行って、その次の日には、突入という感じかな・・・。なんか、久しぶりの新しい、力のある迷宮攻略でワクワクしてきた。初級じゃあ、やっぱり物足りなかったからなぁ・・・。それに、自分達の実力を試せる良いチャンスでもある。多少、怖いと思う気持ちもあるが、前向きに攻略していこう。まずかったらさっさと逃げよう。俺は、期待半分、不安半分で、その日は眠りについた・・・。
「どう思います神魔級、そんなに脅威ですかね?」
「侮るな、ミルク。アリーさんも言っていただろう、ボスは創世級に近い力を持つと・・・。一体化した今の我々でも、まだ近づけるか分からないような魔物だ。そんな奴らに近い魔物が、弱いとは考えづらい」
「まぁ、確かにそうですね・・・。と言っても、どれくらい近いんでしょう・・・。まさか、まだ近寄れないとかだったら、流石に、困るんですけどねぇ・・・」
「あれから私達も訓練を積んだし、仲間も増えている。本物の創世級ではない、神魔級程度のボスなら、流石に、支障はないだろう・・・・、と思うが」
「まぁ、全ては行ってみてってことですかね・・・」
「それしか無いな・・・」
レムも、ミルクも腕を組んで難しい顔をする。少なからず、2人も不安なようだ。
「二人共、眠れないの?」
「フィー姉さん!・・・・いえ、そういう訳ではないんですが、流石に創世級に近いとも言われると、何か対策をした方がいいのかなぁと思いましてね・・・」
「今まで、我々は個人で鍛えてきましたが、今回は最初から一体化するということも考えておくべきかと・・・」
「一体化かぁ・・・。確かに、それもいいと思う。マスターの安全が最優先だから、危ないと思ったらレム。マスターの指示がある前に一体化してあげて」
「はい、分かりました!」
「ミルクも、その時はすぐにマスターに駆け寄って、一緒に一体化して。2人が防御に回れば、余程の相手でも大丈夫でしょう」
「分かりました。フィー姉さんはどうします?」
「私は、出来るだけあなた達と、マスターに攻撃が行かないように防ぐ。危ないようなら、すぐに私も一体化しに行くわ。・・・・マスターのためにも、共に頑張りましょう!!」
「ええ、フィー姉さん。後輩に負けないよう、頑張りましょう!!」
「勿論ですよ、フィー姉さん。ぱぱっと、やっつけて。創世級も倒して。幸せな生活をエンジョイしましょう!!」
3人は、固く手を握り合う。今は多くの仲間が増えたが、この3人は特に長い付き合いだ。心の奥底では、お互いを強く信頼しあっている。握り合った手のように、ベイを守ろうと思う3人の気持ちも、今、一つになっていた。