定休日。
からん
「今日は休み――ん、」
「よ」
採点するなら満点の笑顔。腕からこぼれそうな白い花束を携えて、今日もフェイは店の入り口をくぐる。
「なに？」
「そこの花屋でシルエの髪みたいに真っ白な花みかけてさあ、花束にしてもらった。いらねえ？」
こうして普通に問答できるのも積み重ねた努力の成果。
「花に罪はない」
「じゃあ俺は」
「有罪」
がくり。相変わらずつれない。
うなだれるけれど、これしきのことでめげていたらシルエを口説くなんてことは不可能である。すぐに面を上げ、さっきからこちらを放置して作業している手元を覗き込んだ。
「なにそれ」
「鈍器」
「鈍器っておま……」
真顔で言うあたり、本気か冗談か判断に悩む。
……さすがに情報が足りない。
「一応聞くが。それ、商品になんの？」
「ならない」
ぽかん。
シルエが、商品にならないものを作るなんて――
「明日は槍の雨でも降るのか」
「降らしてあげようか」
「ごめんなさい！」
若干ふてくされたような雰囲気を漂わせ、ぺいっとなげつけられたそれ。「あげる」
「え、熱でも――」
「じゃああげな「いただきますシルエさんありがとうございます！！」
本気だったらしい。ほんとに雪でも降るんじゃなかろうか……で、
「一体どう使うんだこれ」
「殴る」
「もっと説明ください！？」
「……仕方ないなあ」
相変わらずの扱いでも、ほんの僅か、緩んだ口元が見れたので今日はお腹いっぱいです。
前話に出てきたフェイとシルエ。女好きのフェイは、街の主要な女の子がいるお店だとたいてい常連になってます。
金払いはきちんとしていて誤魔化しとかもなく、「女好き」以外はわりと好青年だったりするから残念な子。仕事を依頼しにくるわけじゃない時はだいたいチャラいですね。
あ、「鈍器」は水リグ埋め込んだ魔法具なんで、きっとシルエは暇だったんでしょう。
