キミノナマエ
非常にくだらない。
今日僕は相当酔っていた。
目の前には僕を打つ女。
何故打たれているのか判らない。
少なくとも、ここがそういう嗜好の持ち主が訪れるような場所ではないということは確かだ。
嗚呼、そうだ。恐らく僕が彼女の名前を言い間違えたから怒っているんだ。
そう言えば、僕が『エリ』と呼んでから彼女の愛撫は始まった。
しかし、打たれ始めて結構な時間が過ぎた。
堪える僕もすごいが、打擲を与え続ける彼女もすごい。
こうなったら、ギネスも夢じゃない。二人の愛で世界記録を打ち出そう!
……なんちゃって。
ところで、何故キミは一言も声を聞かせてくれないんだい?
キミの鈴の音のような声を聞けば一発で思い出せる自信があるのに……。
もしかしてすごく恥ずかしがり屋さん?
「わかった、キミはミドリだね!」
ばちん!
どうやら違うらしい。麻痺しかけていた頬に再び激痛が走る。
そう言えば、はにかみ屋のミドリはもっと胸が小さかったっけ。
目の前の彼女はいわゆる巨乳だ。
それにしてもキミはすごく背が高いんだね。
僕が今見上げているから、180はあるでしょう?すごいなぁ、スーパーモデルになれるよ!脚もキレイだし。
美脚と言えば、
「許して、アユミ!」 硬い拳が右頬に炸裂した。
もう降参しよう。僕の息が止まる前に。
「お願いします、キミの名前を教えてくださいっ」
僕は額を床に擦りつけて嘆願した。
「まだわかんないの?!ミルクよっ!!」
野太い声がそう叫んだ。
嗚呼、僕としたことが。
指名ナンバーワンの彼の名前を忘れるなんて。
ね、くだらなかったでしょ?