通夜と告別
アラームが鳴る。
一回止めて、起きる。
カーテンは閉めたまま。
暗い部屋をそのまま出て、階段を降りる。
洗面所。
水が冷たくて、うわ、となる。
テレビをつけて、天気予報だけ見る。
『今朝は今季いちばんの冷え込みです』
この前もそんなこと言ってなかったか。
食パンがある。
焼く。
コーヒーを淹れる。
パンが焼ける。
バターを塗る。
座って食べる。
歯を磨いて、スーツを着る
玄関。
外、寒い。
やだな。
自転車に乗る。
⸻
気づいたら夜。
少し残業。
駅前のコンビニで、おにぎりを二つ買う。
電車に乗る。
座れた。
袋を開けて、二つ食べる。
気づいたらなくなってる。
家に着く。
風呂に入る。
歯を磨く。
そのまま階段を上がる。
「修」
母の声。
途中で止まる。
「聞いてる?」
振り向く。
「小嶋学くん、亡くなったらしいわよ」
少し間。
「……そっか」
喪服、どこだっけ。
⸻
部屋に入る。
電気をつける。
鞄を置く。
喪服どこだっけ。
クローゼットを見る。
見当たらない。
まあ、明日でいいか。
お通夜いつだ。
告別式は。
二日とも行くのか。
お通夜の日、早退しないと間に合わないよな。
場所はたぶん近所のあそこ。
駅前の。
この前、会ったばっかりじゃん。
なんで。
ベッドに座る。
立つ。
椅子に座る。
スマホを見る。
何も開かない。
また立つ。
とりあえず、寝るか。
⸻
アラーム。
今日は少し早い。
クローゼットをもう一回開ける。
奥から喪服が出てくる。
こんなとこだったか。
階段を降りる。
「今日、お通夜らしいわよ」
母が言う。
「ああ」
それだけ。
⸻
朝の電車。
今日は早退して。
お通夜行って。
明日は休むか。
往復してたら仕事にならないよな。
⸻
夕方、早退。
帰りの電車。
同級生の葬式って、早いな。
ネクタイ、あったよな。
あれどこ置いたっけ。
⸻
家に着く。
喪服に着替える。
なんかモゾモゾする。
自転車に乗る。
葬儀場まで十分。
⸻
入口に同級生がいる。
「おっ、久しぶり」
「久しぶり」
「まさか学がなあ」
「頭良すぎると逆にきついのかもな」
そんな話。
なんとなく。
自殺らしい、って聞く。
⸻
中。
線香の匂い。
学の両親。
見ていられない。
遺影。
たぶん高校のときの写真。
焼香。
手を合わせる。
顔は。
明日見ればいいか。
⸻
告別式。
昨日と同じ場所。
同じ匂い。
同じ椅子。
お経。
焼香。
順番が回ってくる。
手を合わせる。
学の父が前に立つ。
挨拶。
声が震えている。
途中で言葉が止まる。
見ていられない。
⸻
顔を見に行く。
棺の中。
髭がない。
この前は伸びっぱなしだったのに。
思ったよりきれいな顔。
寝てるみたいだ。
面接、行ったのか。
俺が言ったからか。
いや。
そんなことで死ぬか。
またな、って言ったし。
分からん。
⸻
出棺。
車が出る。
みんな見送る。
なんとなく手を合わせる。
⸻
自転車で帰る。
十分くらい。
面接、行ったのか。
ダメだったとか。
俺が言ったからか。
いや。
そんなことで死なないだろ。
分からん。
⸻
家に着く。
喪服のまま部屋に入る。
ネクタイを外す。
ベッドに座る。
面接、行ったのか。
俺が言ったからか。
会社、休みにしといてよかった。
まだ明るい。
……まあ。
とりあえず、寝るか。




