再会
金曜も会社に行く。
カードをかざす。
ピッ、と鳴る。
メールを返して、資料を触って、気づいたら夕方。
パソコンを閉じる。
まっすぐ帰るのもなんとなく嫌で、駅前の繁華街に寄る。
服屋に入って、何も買わずに出る。
本屋に入って、立ち読みだけして出る。
ドラッグストアを一周して、出る。
特に用事はない。
一時間くらい歩いて、やることねーな、と思う。
電車に乗って帰る。
家に着くと少し遅い時間。
「修、ご飯あるよ」
テレビの音。
いつもと同じ。
食べて、風呂に入って、部屋に戻る。
スマホを見ながらベッドに転がる。
そういや、明日、小嶋と会うのか。
アラームをかける。
別に遠足でもないのに、と思う。
そのまま寝る。
⸻
土曜。
昼過ぎに起きる。
何もすることがない。
動画を流したまま、スマホを触る。
ベッドに横になって、少しだけ目を閉じる。
このまま夕方まで寝たらまずいな、と思ってアラームをかける。
意味あるのか分からない。
結局、ちゃんと起きる。
顔を洗って、着替える。
特に考えずに、いつものパーカー。
財布とスマホだけ持って家を出る。
歩いて十五分。
地元の飲食店。
店の前にもう人が立っている。
小嶋。
髪が少し伸びている。
無精髭。
パーカーにジーンズ。
ああ、こんな感じか、と思う。
「久しぶり」
手を軽く上げる。
⸻
暖簾をくぐる。
「二名です」
予約はしてない。
店員が少し店内を見て、
「カウンターでもよろしいですか」
「あ、はい」
横並びの席に通される。
正面より、こっちのほうが楽かもしれない。
メニューを開く。
とりあえず生を頼む。
軽くグラスを合わせる。
半分も飲まずに、烏龍茶に変える。
なんとなく、そんな感じになる。
最初は少し間が空く。
「久しぶりだな」
「うん」
それだけ。
料理が来て、箸を動かしながら、ぽつぽつ喋る。
中学の話。
あの先生まだいるらしい、とか。
あいつ結婚したらしい、とか。
同じところで笑う。
少しずつ、昔の感じに戻っていく。
「そういやさ」
「ん?」
「俺の書いた話に、めちゃくちゃ口出ししてたよな」
「あー」
学が笑う。
「流石に終わり方が雑すぎたから。あれはないよ」
「そんなひどかった?」
「ひどいって、修」
普通に言う。
ちょっと笑う。
間。
「今、何してんの」
学が箸を止める。
「まあ」
「仕事してないって聞いたけど」
「まあ」
同じ返事。
グラスの氷が鳴る。
「一回さ、面接でもなんでも受けてみたら?」
ついでみたいに言う。
「どうせ今も働いてないんだし。一緒じゃん」
少し考えている顔。
「……そうか」
小さく頷く。
「なんとかなるって、学。頭いいんだし」
自分でも軽いなと思う。
「あ、すまんすまん。変な話しちゃった」
すぐ話題を戻す。
また中学の話。
⸻
伝票を持って立つ。
そのまま払う。
外に出る。
夜の空気が冷たい。
近くのコンビニに入る。
ホットの缶コーヒーを二本買う。
「ほい」
一本渡す。
「ありがと」
湯気が少し上がる。
「寒いなー。上着忘れたわ」
「夜は冷えるな」
「早く帰るか」
店の前で立ち止まる。
「じゃあまた」
「うん」
「近くに住んでんだから、また飯行こうよ」
「うん」
少し間。
「……ごちそうさま」
学が言う。
手を軽く上げて、歩いていく。
思ったより変わってないじゃん。
⸻
家に着く。
風呂に入って、歯を磨く。
階段を上がって、自分の部屋。
ベッドに座る。
面接、受けてみたらって言ったっけ。
まあ、あいつならなんとかなるだろ。
俺も。
ちょっとくらい書いてみるか。
昔のノート、どこだっけ。




