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朝と夜

 アラームが鳴る。


 一回止めて、また鳴って、起きる。


 カーテンは閉めたまま。


 暗い部屋をそのまま出て、階段を降りる。


 洗面所で顔を洗う。


 水が冷たくて、うわ、となる。


 テレビをつけて、天気予報だけ見る。


『今朝は今季いちばんの冷え込みです』


 でしょうね、消す。


 時間を見る。


 食パンがある。


 いいか。


 インスタントコーヒーだけ淹れる。


 粉を入れて、お湯を注いで、立ったまま飲む。


 そのままスーツを着る。


 玄関を出る。


 外、寒い。

 やだな。


 自転車に乗る。


 駅まで十分くらい。


 黙って漕ぐ。


 駅の駐輪場に着く。


 改札を通って、ホームに並ぶ。


 電車が来て、乗る。


 座れない。

 人が多い。

 肩が触れる。

 少しだけ動きにくい。


 三十分。


 だいたいスマホを見ている。


 駅に着いて、改札を通って、会社まで歩く。


 カードをかざす。


 ピッ、と鳴る。


 今日もそれで始まる。



 メールを返して、資料を作って、気づいたら夕方。


 定時を少し回ったところでパソコンを閉じる。


「大村くん、帰るの?」


「あ、はい、お先です」


 軽く会釈して席を立つ。


 会社を出る。


 朝と同じ道をそのまま戻る。


 電車に乗って、自転車に乗って、家に着く。


 玄関を開けると、味噌汁の匂い。


「修しゅう、ご飯できてるよ」


 母親の声。


 リビングのテレビはもうついている。


 父親が先に座っている。


 鞄を置いて、そのまま席に座る。


 なんとなく食べる。


「この芸人、最近よく出てるな」

「この人、久しぶりに見たわ」


 それくらいの会話。


 あとはテレビの音。


 食べ終わって、風呂に入る。


 歯を磨く。


 階段を上がって、自分の部屋に戻る。


 ドアを閉める。


 六畳。


 学習机とベッド。


 昔からそのまま。


 机の横に買い替えた椅子。


 前の椅子は壁に寄せてある。


 テレビを小さめの音でつける。

 バラエティ。で、いいか。


 スマホを触る。


 動画を見たり、ニュースを流したり。


 なんとなく、投稿サイトを開く。


 小説のランキングが流れている。


 タイトルをいくつか眺める。


 これくらいなら書けそう。


 昔、ノートに話を書いていたのを思い出す。


 スマホの中に残っていたデータを開く。

 少しだけ整えて、そのまま貼る。


 投稿。


 それだけ。


 画面を閉じる。


 今日は、なにもなかった。


 天井を見る。


 小嶋の顔が浮かぶ。


 小嶋こじま学まなぶ。


 テストでいつも一位だったやつ。


 先生がよく名前を出してた。


 放課後、部室でだらだらしゃべって。


 俺の書いた話を読んで、横からいろいろ言ってくる。


 そこ変えた方がいい、とか。


 あいつは作るより、直す方が好きそうだった。


 高校に入ってからほとんど会ってない。


 大学をやめた、って話だけ、どこかで聞いた。


 今なにしてるんだろ。


 スマホを開く。


 連絡先は残っている。


 久しぶり。元気?

 今度、飯でもいかない?


 送る。


 返ってこないかもな、と思って放っておく。


 十分くらいして通知が鳴る。


『久しぶり。いいよ』


 早い。


 じゃあ土曜の夜で、と返す。


 決まる。


 テレビの笑い声が少しうるさい。

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