7.遊園地
ネオンはアニメに出てきそうなアンティークなバス停で立ち止まった。
「少し待つけどいいよね?」
「うん」
半日と書かれていたけどのんびりし過ぎな気もする。ただ好奇心と謎に満ちた新世界はボクにはまるで童話のお菓子の家だ。
ここは月の裏側だから時間の流れが違っても不思議じゃない。
普段諦観で生きているボクは自分の変化を少しづつ認める。環境さえ変わればボクだって…
「また、考えごとかい?」
ネオンに見透かさた気がして慌てた。
「違うよ。時間の流れをちょっと考えてただけ」
「大丈夫だよ。ゲームの世界だと思えばいい。ここで何日過ごしても半日後には君は地球を踏みしめてるよ」
「そう…なんだ」
「あ、来たよ」
パカパカという音と共にロバが引く馬車が到着した。御者のおじさんはキセルを咥えて火を着けプハーとやっている。煙たかったがここは不自由で自由の世界と納得したからか嫌悪感は抱かなかった。
「もっと夢のある乗り物かと思ってた」
「ロバは嫌いかい?」
「そうじゃなくて…」
「例えば六花のイメージで空飛ぶバスも悪くないかもしれない。一瞬で目的地、無駄なし合理的は私たちの理想だね」
「じゃあなんで?」
「旅ってさ、道中も旅なんだよ」
「風景を楽しむとか?」
「それもあるけどハプニングや苦労もある」
「そんなの別にいらなくない?」
「本人はそうでも苦労話って聞く方は楽しくない?話し終わったころには自分も何故か楽しめてる」
「分からない。辛いことは辛いだけ」
「六花、多分それはまだ苦労の最中だからだよ。もちろんこの世界なら翼神が君をいじめる連中を残らず処刑する。君はそれだけ理不尽な場所にいる。でも今はそういう話じゃないから自分を重ねず脇に置いて欲しい」
「…うん」
「この世界の娯楽や歓びは君の世界より貴重なんだ。スマホもなく映画館すらない世界では旅の物語が人々に感銘を与える。文化的創造が最も尊い世界とも言える」
「苦労して作ったご飯が美味しいみたいな?」
「それだよ、我が賢者」
何故か誇らしげにしているネオンを見てまた頬に熱を感じた。
「賢者って言えば、魔法はないの?」
ネオンはニッと笑った。
あるんだ。
「お待たせ。答えは遊園地で一緒に確認しよう」
自信たっぷりのネオンを余所に
ボクはまたしても想像を裏切られ呆然としている。
馬車が丘を越えた瞬間、
眼下に広がっていたのは、禍々しい魔王城と、空を焼き尽くす竜の群れ。
そして、鋼の剣を振るい魔物と切り結ぶ、大勢の戦士たちの混沌の戦場だった。
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