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久遠の重力  作者: めざしと豚汁


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4.悠木六花

ボクは目が覚めるとクラシックな雰囲気のホテルのロビーに立っていた。ホテルかどうかは分からないけど、ボクの人生経験ではその表現しか思いつかないのだ。


「ユーキリッカさん?」


やや混雑したロビーからボクを呼ぶ声が聴こえた。振り返ると声の相手は、中性的な顔立ちをした大昔の宣教師コスプレの少年?だった。


「え、なんで分かったの?」

「だって周りを見てごらんよ。可愛い女の子なんて君だけ。あとはみんな大人」


ボクは可愛いと云われるのは傘と同じくらい嫌いだ。背伸びじゃなく心底嫌だ。


「ごめんね、びっくりさせちゃった?」

「…別に」

「そうだ、自己紹介だ。私は君の案内人のネオン、君のことはなんて呼べばいい?」


グイグイ来るタイプは苦手。

「六花でいいよ」

「フレンドリー最高!ネオンやる気出しちゃいますよお」

「ここは、もう新世界なの?」

「そうだけどそうでもない。君に見せたい新世界はあのゲートの向こうさ」


ネオンが誇らしげに指さした先には大きな鳥居のような門が連なり、先は光に満たされていた。


「何もかも、やたら明るい演出だよね」

「そうさ。肉体を離れるまでは誰でも不安でいっぱい、でもここは大丈夫だから安心してよ」

「ボクは見学だよ?」

「おっと、そうだった。ユーキリッカさん、15歳女性、学校で幼馴染みの男子と仲良くしているのを嫉妬されて同級生のいじめが始まり…」

「ちょっと!」


ボクはここに来る時に記憶を全て読まれるのは覚悟していた。けれど、心を土足で踏み荒らされ言葉にされるのは耐え難い。


「大丈夫、私は味方。君の悩みを理解した上でユートピアの素晴らしさを見せたいのさ。きっと嫌な気持ちになっただろうけど、これで私に本音をぶつけられるようになったよね?」

「だからって…」


やり方がズルい。

ネオンの調子に嵌まるのは嫌だけど受け入れなければ先に進めない。ネオンはボクがそう呑み込むのをにこやかに待っている。


「呆れた。でも、その通りかも」

「良かったあ。怒って帰たらどうしようかと思ったよお」


ここは、電脳の世界で全てがデータ。ネオンの感情も作られたものだけど気にし始めると、頭がおかしくなりそうだからそういうものと割り切って考えるのはやめた。ボクは白旗を振らせたお返しに少し不機嫌に言った。


「それより、早く見せてよ。ご自慢のユートピアを」

「そうこなくっちゃ」


そんな抵抗もネオンには効かず、ボクの手をとりブンブンと振りながらゲートに向かう。その手は暖かく柔らかい…


ボクは感傷ではなく物理的な感触に素直に驚いた。そして好奇心から抵抗などどうでも良くなった。


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