3.施設
ボクの今回のガチャはハズレだった。
朝になり熱は下がったものの気怠い。
母さんは学校に休みの連絡を入れパートの仕事に出掛けていった。ベッドの脇にはヨーグルトとリンゴジュース、風邪をひくと必ず置いてある我が家の病院食だ。
「雨の中わざわざ買いに行ったんだ。ボクのことなんて気にしなくていいのに」
自虐と申し訳なさをヨーグルトで押し込みリンゴジュースで流す。意味のないことに意味を持たせようとするボクの癖に呆れながら着替え、母さんに学校に行くと書き置きして家を出た。
通学路はいつもの通りで誰もボクを気にしなかった。やがて商店街の一角にある建物、電脳化装置が設置された無人の施設に入った。
「えーっと、招待状…」
スマホに届いた画面をリーダーに読ませると分厚い自動ドアがスッと開き、突き当りのエレベーターで地下に降りた。
「霊安室に行くみたいでちょっと怖いかも」
ボクは、肉体を棄てるこの場所に緊張感を覚えた。翼神の説明から別の生の形だと頭で分かっていても肉体的な死は生物の原理的な恐怖だから仕方ない。
エレベーターを降りると扉が2つ並ぶホール、壁には「進化の門出に祝福を」というポスターが貼られていて見たことがあるタレントがボクに微笑みかけている。奥に見える暗い廊下は遺体を搬出する通路だろうか。ボクは身震いをして、そそくさと体験と書かれた扉にスマホをかざして逃げこんだ。
中に入りオートロックの施錠音になぜかホッとしたボクの目の前にはいかにもフルダイブ装置という見た目の白いカプセルが部屋の中央に鎮座していた。
「カプセルに横たわれば自動で始まります」
スマホの案内を見ながら横たわろうとしたが、ふと扉の掲示が体験だったか不安になり確認に戻ろうとしたものの扉は開かなかった。
「もう、余計なホラー演出とかやめてよ!」
気持ちを奮い立たせようと軽口を声に出したが返事はない。ボクはいつも通りにこれもガチャだと開き直りカプセルに入った。
「このまま向こうで暮らすのもいいかな。成人前に夢が叶うなんてご褒美だよ、うん、そうに決まってる」
ボクの独り言に黙れと言わんばかりにカプセルのカバーが降りてきて、急激な睡魔で見学ツアーが始まるのを意識した。




