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1-32 賭けの代償

 今、プレイヤーの三人はサイト・ディーモンアイの応接室に居る。だが、今回はフォルストンとゆっくり語り合うために居るわけではなかった。三人は応接室の中央にある大きな机に向かって、背筋を正しながら、ただじっと目的の人物が来るのを待っていた。ドアが開きフォルストンが応接室へと入って来る。彼に先導されて、一人の男が三人の前に座った。皇国防衛騎士団のトップ、トルステン騎士団長である。彼は三人の顔をゆっくりと見回して、それから話し始めた。



「ここに来る前から色々と聞きたいことがあったんだが、こうして君達の顔を見たらそれも吹き飛んでしまったらしい。まさか、こんな形でまた会えるとは思わなかった、三人共」



「やはり思い出していただけましたか、トルステン騎士団長」



「ああ、はっきりとな。喫緊に内密で話したいことがあるなどと君から伝えられたときは何事かと思ったが、こういうことだったのなら納得が行った、フォルストン卿」



「なるほど、賭けっていうのはこういうことだったのかフォルストン卿。騎士団長殿も俺達と深く関わった人物だからな、もしかしたら顔合わせしたら俺達のことを思い出してくれるかもしれないと思ったんだな?」



「そういうことだ、ヤルダバルト。さあ、私に見せてくれたあの手紙をトルステン騎士団長にも見せてくれ。状況を伝えるには、それが一番だろう」



ヤルダバルトはトルステンにウォルターから預かった手紙を渡す。彼は手紙を読み終えると、丁寧に手紙を畳んで封筒に入れてからヤルダバルトに返した。彼は少しの間伏し目がちに考え込んでいたが、一つ頷くと三人へ向き直った。



「おおよその状況はわかった。なるほど、あの巨人が出てきたときから一大事だとは思っていたが、まさかこれほどまでの困難に君達が見舞われていたとはな。それで、あの巨人を出し抜くために皇都入りを果たしたいということだったか」



「ああそういうこった、騎士団長殿。元はウォルターの策なんだが、俺達でさっさと攻略を進めてアレがバックドアに触れる前にこっち側で確保しちまいたい。そのための拠点として、ひとまずは皇都を使えると、俺達とあの巨人との差を広げやすくて助かるんだ」



「わかった、私の権限において、どうにか君たちの入国をねじ込んで見せよう」



その言葉を聞いて弾かれるようにヤルダバルトが立ち上がる。



「マジか!? ありがてぇ、本当に助かるぜ騎士団長殿!」



たが、その返答を予測していたかのようにトルステンが片手でヤルダバルトを制した。



「ただし! 一つ条件がある。この条件が満たされなかった場合、君達はハイランドでの立場を失い、再びの入国には相当な時間がかかると思って欲しい。もしこの条件が飲めないのなら、今回のこの話もなかったことにしてもらいたい」



「条件? わかった、言ってみてくれ」



「皇都地下に巣食う封神の討滅。それも早急にだ。入国した君達の信用が失われるまでがタイムリミットだと考えて欲しい」



ヤルダバルトはチラとフォルストンの方を見る。彼もまた真剣な表情でゆっくりと頷いていた。皇都防衛戦線のさなか皇都の地下から妖魔が現れた理由。それは皇都地下に、妖魔を生み出すことを権能とした封神が封じられていたためであった。妖魔軍が封神を利用してまで皇都を正面から攻めたその目的は、プレイヤーやハイランド軍の騎士達の目を正面の妖魔軍に惹きつけている間に、潜入させた部隊の儀式によって皇都地下の封神を復活させることにあった。プレイヤー達三人に苦い記憶が蘇る。彼らもまた、そのイベントでは半狂乱になりながら皇都を襲う妖魔を倒して回っていた。ヤルダバルトが他のプレイヤー二人へ目を向けると、二人とも彼に頷き返した。



「わかった、その条件を受けるぜ。どっちにせよ封神は俺達の討滅対象だ。それが早くなるか遅くなるかの違いでしかねぇ」



「ありがとう、君達ならきっとそう言ってくれると思っていた。では私は早速皇都へ戻って根回しを始めるとしよう。フォルストン卿もこちらでマナリンケージ越しに手伝ってもらえると話が早い」



「もとよりそのつもりです、トルステン騎士団長。アッシュグレイ家へは私から話を通しておきましょう」



「よし、それならば私は政治的な方面に集中できる。ヤルダバルト、カルマリオン、アンクルコミー……君達三人は『大地の盟約』所属の調査員であることにして、このハイランドでの封神の活動を調査してもらう形にする。極めて強引に話を進めることになるだろう。重ねて言うが、君達には早急に皇都地下に封神が封じられていることの証明と、それを討滅することが可能な実力を持つということを示してもらいたい。これによって初めて、皇国における君達及び『大地の盟約』の立場を確固たるものにできる」



「わかった、早期の封神討伐、なんとかしようじゃねぇか。こちらこそよろしくたのんだぜ、騎士団長殿」



トルステンはフォルストンの方を見ると、彼は微笑を浮かべて一つ頷いた。それを見て騎士団長も頷き返し、二人は一緒に応接室を出て行く。フォルストンは扉口で立ち止まり、三人に宿舎へ戻って大丈夫だと言い残してから、トルステンと共に部屋を後にした。

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