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1-31 実証

 『フォトニックスターズオンライン』、通称『フォトオン』はアメリカ発のスペースオペラ作品シリーズであるフォトニックスターズを原作としたVRMMORPGである。世界観は原作を忠実に再現しており、広大な宇宙をめぐりながら原作に登場した星々やキャラクターに出会えることが最大の魅力だ。プレイヤーはこの宇宙の中、個人用航宙機を駆って傭兵プレイをするもよし、商船団を率いて大規模に商人プレイをするもよしと様々なプレイスタイルで極めて自由に遊ぶことができる。その中で最も人気を得ている要素が、原作映画の主人公が所属する陣営のシィーヴァウやメインの敵役として出てくるラマーインとしてプレイすることである。



原作を含むこの世界観では、宇宙全ての力や生命の源であるスナーツと呼ばれる力場のようなものが極めて重要な位置を占める。スナーツは宇宙のあらゆる空間に満ちており、その穏やかで創造的な側面を重要視するのがシーヴァウという集団、その激しく破壊的な側面を重要視するのがラマーインという集団である。この二つの集団はお互いに敵対しているものの、スナーツの力を引き出すことができる人材を育成しているという点で共通しており、プレイヤーは皆その素養を持つ存在としてフォトオンを始めることになる。スナーツの力を使えば、常人を遥かに超えた身体能力を発揮することも、もはや予知と変わらない程に直感が鋭くなることも、また手を触れもせずに物を動かすことも可能となる。



そしてその最たる魅力として、原作においても特徴的な武器であるレイサーベルを扱えるようになるという点が多くのプレイヤーを惹きつけていた。これは超高温の光刃で焼き切る光の剣であり、その特徴的な効果音と見た目も相まってファンが多い装備である。レイサーベルの構造自体は単純であり、使用すること自体に制約はない。しかし、使いこなすとなるとその難易度は劇的に上昇する。刃の部分に重さがない上に、内部の構造上重心が非常に偏るため、ほぼ間違いなく武器に振り回されることになる。その扱いづらい武器をスナーツの力を交えた訓練を経ることでまともに扱えるようになるため、当然プレイヤー人気は非常に高い。『フォトオン』運営もこれをメインコンテンツとして据えていると明言していた。



そして、二つの陣営から選べるということは主流のコンテンツとしてプレイヤー同士の戦い、PVPを想定して作られている。多くのプレイヤーははるかな昔から続く、シーヴァウとラマーインとの戦いに、スナーツ使いとして身を投じることになるのだ。最も、『フォトオン』でのストーリーやクエストの導線がそのように誘導されているだけであり、実際にどんな行動をするのかはプレイヤーに委ねられている。この自由度もまた『フォトオン』の魅力の一つであった。



 サイト・ディーモンアイの外れ、針葉樹林の中に、プレイヤー三人は居る。辺りには彼ら以外、誰一人も居ないことは確認済みだった。ヤルダバルトが後の二人に向かって頷くと、二人もまた同様に頷き返した。彼は迷いなくメニューコンソールを操作し、先程と同じシステムチェンジ設定を選択する。設定を終えて一瞬の光が収まると、彼は先程と同様の『フォトオン』初期装備を身に着けていた。そして腰に差してある光線銃――レイブラスターを抜き、目の前に生えている木へと狙いをつける。



「さて、そんじゃやるぞ」



「何かあったら僕が何とかするから安心してくれていい、ヤルダバルト」



ヤルダバルトはその言葉を受けても少しの間迷っていたが、意を決して引き金を引く。ピュン! という特徴的な音と共にレイブラスターから青白い光線が狙った木へと放たれ、命中すると同時にその幹が弾け飛ぶ。メキメキという音と共に針葉樹が倒れ、その断面は真っ黒に焼け焦げていた。



「ああ、間違いない、こいつはフォトオンに実装されていたものと全く同じものだ。理由はわからないが、なぜか今このクリファンにはフォトオンをはじめとした各種VRMMOのデータが実装されていて、しかもそれらが何の問題もなく機能するらしい。ハハ……本当に使えちまったよ……これならもう何でも出来ちまうじゃねーか」



「気分はどうだ、ヤルダバルト。どこか不調はないか?」



「何の問題もないぜ、カルマリオン。こいつも問題なさそうだ。怖いくらいにな」



そう言ってヤルダバルトはレイブラスターで軽くガンスピンをした後、それをまた腰に差した。再び『クリファン』のシステムに切り替えながら、彼は頭を抱えて二人に向き直る。



「こいつはつまるところ、訳がわからないけど……本当に訳がわからないんだけど……この『クリファン』の世界に『フォトオン』のアイテムや能力がバグも何もなく実装されてるってことになるな……いやどういうことなんだよ」



「私にもわからん。だが、上手く使えば攻略の助けになるんじゃないか?」



「確かにレイブレードを使えたらそれなりに攻略にも役立つかもしれない。けどアレはスナーツの修行で行く惑星固有の鉱石が必要だろ? んでこのレイブラスターも雑魚はともかくとして封神クラスには強化なしだと弾かれそうだからなぁ。残念ながらコイツ単体で劇的に攻略が楽にある程のパワーは無さそうだ。それこそアンクルコミーの言う通り上手く使えば助けになるかもしれねぇけどな。今パッとは有効活用する方法は思いつかねぇなぁ」



ヤルダバルトが口に手を当てて考え込んでいると、カルマリオンの懐からマナリンケージの着信音が響いた。一時的に預けていたそれをヤルダバルトは受け取って起動する。相手はフォルストンであった。



「もしもし、ヤルダバルトか。今はどこに?」



「ちょいと外れの林に出てるぜ。どうしたんだ?」



「近くにいるのか、それは良かった。すまない、今すぐに応接室まで来てくれないか? 早く来てくれなければ、賭けが成立しなくなる」



「前に聞いたときも思ったが、賭けなんてするのはらしくねぇなフォルストン卿。わかった、すぐに行く。お前がわざわざバクチなんてするのは本当に大事な時だけだもんな」



ヤルダバルトは通信を切ると同時に装備を『クリファン』の物へ戻し、カルマリオンとアンクルコミーの二人と視線を交わすとすぐさま三人でサイト・ディーモンアイへとワープした。

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