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1-23 潜入

 帝国基地の前にある資材置き場、その物陰にヤルダバルト、カルマリオンそしてアンクルコミーの三人は身を潜めていた。ここに至るまでの道中で当然フィールドに出現するエネミーと遭遇することはあったが、その全てをウォルターが手早く倒すことで突破していた。その結果プレイヤー三人のレベルも少し上がっていた。今はウォルターが手筈通りに基地へと先に潜入し、三人は彼が帝国兵に変装するための装備調達から戻るのを待っている。しばらくすると基地の裏手からウォルターが袋を小脇に抱えながら現れた。



「待たせたか? そら、三人分の帝国兵装備だ。サイズも合うやつを見繕えているはずだ」



ウォルターが袋を地面に落とすと、中にはあからさまに量産されたであろう作りが安い革製の装備が三人分入っていた。プレイヤー三人はそれを受け取るとコンソールウィンドウで装備変更を行う。量産品であり、しかも倒された兵士から剥ぎ取られたもの故かその能力値は低く、本格的な戦闘で使用するものとしてはいささか心もとない数値であった。



彼らが装備を変更すると同時に、ウォルターもまた着替えを終えていた。彼はプレイヤー三人へと話を続ける。



「よし、これで後は手筈通りにやってくれ。時間のことは気にしなくて良い。ここの中の構造についてはもう頭に入っているし、俺が待つ場所は入口からそう遠くはない。俺のことより、お前達がすぐに向こうへ行けるよう手早く済ませてくれ」



「おう、わかったぜ。んじゃあ、互いに気を付けてな」



そうして彼らは巡回から帰還した帝国兵を装い基地の中へと入った。ウォルターは上官への報告を理由に司令部の方向へと向かい、他の三人はそのまま基地内の警備兵に紛れ込んだ。この基地の武器庫は中央付近、食料庫はハイランド側の出入り口付近に存在していた。彼らはまず武器庫で爆薬を調達し、そのまま時限信管を起動させその場に設置し、その後武器庫の爆発を確認すると同時に食料庫も爆破する作戦を立てていた。三人が武器庫へと向かうと、当然というべきかそこを警護する帝国兵がいた。カルマリオンがその兵士へと話しかける。



「やあ、調子はどうかな?」



「あん? こんな訳もわからねぇとこに連れてこられて、こんなところで突っ立って警備してろって言われて調子いいとでも思ってんのかテメェ」



「だろうな。ほら、これでも飲んで一息つくといい」



カルマリオンが少しだけ中身が残った瓶を警備兵に渡し、彼が蓋を開けて中身の匂いを嗅ぐ。



「あ? こいつぁ……酒か」



「外で調達してな。上官に渡して覚えをよくしようにも量が少ない。ならばこっそり自分達で飲んでしまう方がいいだろう? 私はもう自分の分はもらった。残りは全て君のものだ」



「そうかい、へっへっへ……そんじゃあありがたくいただくとするぜ」



警備兵は瓶に残った酒を全て一口で飲みきり、その後瓶を地面に叩きつけ、手に持った武器でそれを粉々に砕いた。



「こうすりゃ、これを飲んだってことなんざわかりゃしねぇ」



「そんな飲み方をして大丈夫か?」



「ここらの酒は味こそうめぇが酒精は薄めだからな。俺達が故郷で飲んでたやつに比べりゃ大したことねぇよ」



「故郷か。君はどこから?」



「ずっと遠くの北東の方だ。こんな訳のわからないところまで連れてこられて嫌になるぜ、全く。お前は?」



「君よりは遠いかな。家族を残していてね」



「家族か。心配か?」



「いや、みんな私なんかよりも頼もしい人たちさ。私がいなくとも十分やっていけるだろう。ただ、自分で言うのも何だが、私は溺愛されている末っ子でね。私が居なくなったことで無茶でもしないか、そちらの方が心配になる」



「そいつぁ頼もしくて良いねぇ。そんじゃあお前はなんでここに来た?」



「自ら望んでここに来ているわけではないが……そうだな、もし来たのが私以外の家族の誰であったとしても、きっとこうしてこの場に立ってはいなかっただろう。それが理由かな」



「そうかい。まあ互いに死なねぇよう頑張ろうぜ。無理やりこんなところに連れてこられて、意味もなく死んじまうなんてのも馬鹿らしいや」



「ああ、まったくだ」



カルマリオンと話していた警備兵がふらつく。その体を支えるようにカルマリオンは肩を貸し、少し離れたところに居たヤルダバルトとアンクルコミーへ目線を送る。カルマリオンのことに気がついた二人の内アンクルコミーはすぐに警備兵の下へと駆け寄り、そのまま二人がかりで警備兵を物陰へと引きずって行った。一方でヤルダバルトは辺りに人の気配が無いことを確認すると武器庫内部へと忍び込む。カルマリオンが警備兵へ渡した酒には、ヤルダバルトが制作した睡眠薬が混ぜられていた。素材こそ帝国前線基地へ向かう道中で回収された粗悪品を使用しているが、人一人を数時間眠らせるにはそれで十分だった。警備兵を介抱しているというていで彼が見つからないよう見張るカルマリオンを残し、アンクルコミーも続いて武器庫へと忍び込む。



「どうだ、問題はないか?」



「今できたぜ、アンクルコミー。即席の時限爆弾、起動させたら三十分後に起爆するようにしてある」



「流石だな。即時起爆の方はどうだ?」



「そっちは爆薬だけアイテムボックスに回収してあるから良いだろ。起爆はお前のスキルでやればいい。次は食料庫だったな」

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