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1-20 共犯者

「あいにく、私はお前やカルマリオンほどこのゲームに詳しくはないからな。この話が可能かどうか、可能だとして受けるかどうかはお前の判断に任せる」



「僕はその作戦に乗っていいとは思う。だが、その前に一つ、気になることがあるな。ウォルター、なぜ君はそもそも単独で行動してまで我々の話に乗ってきた? 確かにあの巨人を警戒して我々が先に攻略できるようにするという策自体は頷ける。だが、今の『大地の盟約』やポートエスケンの状況よりも我々を優先する理由とは何だ?」



「流石に鋭いな、カルマリオン。正直これはお前達に教えておくべきか迷っていたんだんだが……よし、俺も腹をくくろう。その代わりお前達もこのことは絶対に漏れないようにしてくれ。こいつは特大の爆弾になりうる情報だからな」



そう言うとウォルターは一口水を飲み、一つ大きく深呼吸をする。どうにか落ち着いたのか、目線は伏せたままゆっくりと話を始めた。



「実はな、今『大地の盟約』の拠点には、プライベートのアバターで遊びに来たキダPが居る」



「キダPって、あの『クリファン』プロデューサーの樹田直吉か?」



「ああそうだヤルダバルト、そのキダPだ。アバターが違うとはいえ、運営の人間として俺達は何度も直接やり取りしてるから本人だとわかる。『大地の盟約』主導でストーリーに沿った封神討伐を行うという計画は、あの人が俺達に提案して動かしてる計画だ」



「そいつは随分頼もしい話じゃねーか。『大地の盟約』に加えて運営の責任者の人間が居るのならもうそっちに攻略を任せられるだろ。なんで俺達にさっきの計画を持ちかけたんだ?」



「ああ、確かに心底頼もしい。だがな、あの人は……この世界をめちゃくちゃにした、あの巨人の正体の第一候補でもある。振るえる権限で言えばあの人がこの事件の犯人である可能性がどうあっても拭いきれない」



「いやいや、俺は直接会ったこともないからなんとも言えねぇけど……流石にわざわざこんなことするような人じゃねぇだろ? それに元々そういう権限があるのなら今みたいなふざけたことなんてする必要もない」



「俺の最優先事項はあの人に従うことじゃなくて、お前達プレイヤーを無事にリアルの世界へと返すことなんだよ。だからあらゆる可能性を考慮しないといけない。もちろんあの人の人格は間違いなく信頼できる。あの人はただ純粋にゲームが好きで、お前達プレイヤーを心から愛している人だ。だが、あの人自身はなんともなくても、実は家族を人質に取られて無理やり従わされているのかもしれない。もしくは表面上なんともないように見えて、何かしらの暗示にかけられてあの巨人としてこの世界を切り離したのかもしれない。そういう可能性も完全に否定はできないんだ。だから俺はお前達が俺達『大地の盟約』を出し抜いてくれることに賭ける」



「それがなぜそんな大層な秘密に……ああ、そういうことか。要は『大地の盟約』が一枚岩でないと攻略に支障が出る、ということだな?」



「そういうことだ。お前達はともかくとして、『大地の盟約』についてくる攻略班に疑念が生じてチームが瓦解したらそれはそれで大変なことになる。動揺が広がればプレイヤー全体の統制すら取れなくなっちまうかもしれない。そういうリスクがある話なんだ、これは。それでもやるか? 今ならまだこの話をなかったことにすることもできる」



ヤルダバルトは改めてアンクルコミーとカルマリオンへ目線をやると、二人ともヤルダバルトへゆっくりとうなずいた。彼は意を決してウォルターへと向き直る。



「よし、その話乗ったぞウォルター。今から俺達四人は一蓮托生の共犯者だ」



「ははっ、共犯者と来たかヤルダバルト。なかなかどうして、悪くない響きじゃないか。さて、これで今後のおおまかな方針が決まったわけだが、こっから具体的にどう動きたいんだ? お前らの動き方次第で、俺もどういう風に支援するかが変わってくるから今のうちに決めてしまえるとやりやすい」



「うーん、これからの具体的な動きねぇ。たった今お前の計画に乗るって決めたばかりなのにそれをすぐに決めろって中々無理なこと言ってるって思わねーかウォルターよぉ……」



そうしてヤルダバルトが考え込んでいるのを見てか、カルマリオンが先程までのものに比べるとかなり小さな声で話し出した。



「あー、僕から提案があるんだけど、聞いてみるか?」



「見ての通り完全に行き詰まってるんだから、そう遠慮することもねぇだろ、カルマリオン。つかなんでチョット申し訳なさそうなんだ? このドンピシャのタイミングでちょうど欲しかった提案をしてくれるってんだからさっきみたいに堂々としてくれりゃそれでいいのに」



「ああ、そう言ってもらえるとありがたい、ヤルダバルト。僕からは、小目標としてハイランド皇国へ向かうことを提案したい」



その言葉を聞いてヤルダバルトは少し意地の悪い笑みを浮かべてカルマリオンの方を見る。



「ハイランド皇国ねぇ……わざわざそこを選ぶ理由は何だ、カルマリオン?」



「あのエリアはクリファン最初の大型アップデートで開放された場所、つまりメインストーリーではこの辺りの問題がひとしきり片付いた後にようやく向かった場所なわけだ。ウォルターの方で攻略を進めるプレイヤー達の動きを固めているのであれば、同様にまず近場の封神対策を進めるように誘導できる。僕達が先にハイランド皇国に入ってしまえばその集団との遭遇を避けられるし、遭遇することが無ければあのデカブツに僕達の目的が露呈することもないだろう、ヤルダバルト」



「なるほどなるほど。で、本音は?」



「いや本音も何も……少なくともこのムサマンサからも徒歩で向かうことができる。メディカ・アカイアから船を使うしか無いような遠方はそもそも便が動いているかも不明だし、仮に向かった先で入国不可となれば戻る時間も徒労になるだろう。ならまず近場のハイランド皇国に入国を試みるのは理に適っているんじゃないかな?」



「確かにそうだなカルマリオン。で、本音は?」



カルマリオンがわずかにうつむく。顔に髪がかかって表情はうかがえない。しばらく沈黙が続いた後、カルマリオンが顔を上げてポロポロと涙をこぼしながら絞り出すように言った。



「フォルストン卿に会いたい……!」



「そりゃ会いたいだろ」



「フッ、言えたじゃないか」



「ああ、聞けてよかった」

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