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公爵の笑顔

 思ったよりも、穏やかな時間だった。仕事の邪魔をしたはずなのになぜか公爵の顔は優しげに見え、むしろ慈愛に満ちた視線すら感じる。



 きっと、私の体調を気づかって下さったのね。それにしても、しばらくウェイド様と一緒に過ごす時間なんてほとんどなかったはずなのに、今日はやけにゆっくり過ごされるのね。



 今朝の話では夕食まで別棟にいると思っていたが、結局昼食時間まで庭で過ごしただけでなく、そのままランチを共にしている。


「??????」


 特に何か話すわけでもなく、ただいつものように上品に食事を口に運ぶだけだ。


「あの、ウェイド様」


「ん? なんだ?」


 話しかければまぶしさすら感じる優しい眼差しでこちらを見る。


 なっ、なんですの!? まさかエル様と一緒に過ごされてまぶしさが感染してしまったとか……いえ、そもそもウェイド様も女性には人気のある方でしたし、無表情からのギャップに眼が驚いているだけですわ。


「今日は私に何か話しがあるのでは?」


 そう、ウェイド様がわざわざ一緒にいるのには理由があるはずですわ。


「……あぁ、実は言いにくいのだが……」


「っ!!」


 やっぱりそうだったのですね!! まさか、エル様にニーナ夫人のことを聞いて抑えていた気持ちに火がついてしまったとか!? 食べて寝てばかりの私に離縁を決断した、とか!? まさか先ほどのエル様との対面で私の態度に問題が!? って、どれも良くない案件しか心当たりがないですわ。自分でふっておいて、話を聞くのが怖くなってきましたわ。


「昨夜のことだが……」


「昨夜……」


 まさか、婚姻前の形だけの婚約者のぶんざいでウェイド様の身体を触ったことを不快に思われて!!??



「もう一度頼めないかと」


「もう一度ですか?」


「あぁ。是非ともまた触って欲しい」



 ガシャン。


 ホルモン全開での公爵の発言に、空気と化していた使用人たちが思わず動揺するのが分かる。


 ごっ、誤解をーーーーーーっ!? なぜわざわざそのような誤解を招く言い方を!!?? あっ、そうでしたわ。そう思ってもらう為の同室カモフラージュ作戦でしたが、マッサージですわよね!? こちらの心臓にも悪い言い方を……まるで私が破廉恥なことをしているみたいじゃないですかっ!! いや、それが正解なのかもしれませんが、真昼間になんて。


 顔が真っ赤になるカレンに、さすがに意地悪な言い方をしたと反省したようだ。


「君のマッサージ、あれはよく効いたよ。おかげでいつもより仕事の効率がはかどったから、今日はゆっくり出来そうだ」


「そっうですか。それは良かったです」


 なぜでしょう。ウェイド様が明らかに楽しんでいるような気がしますが、紳士な公爵様がわざわざレディをもて遊ぶなんてないでしょうし。本当に気に入ってくださったのかもしれませんわ。


「あれはツボを押したんですわ」


「ツボ?」


「少し……趣味で東洋の文化をかじったことがありまして、昨夜は安眠や鎮静のツボを強めに押さえてみたんです。ウェイド様がゆっくりお休みになられたみたいで良かったですわ」


「そうか」


 ウェイド様が東の文化に肯定的な反応をしてくれて安心しましたわ。そう言えば、ヤドラ医師も趣味でされてるくらいですから、当然、ウェイド様のご理解があるからってことですものね。


「昨夜ヤドラ医師が出してくれたお茶も身体が温まったので良ければそちらも……」


「昨夜?」


 ん? 今雰囲気が変わったような。


「昨夜、あの男のもとへ行ったのか?」


「え、あの……あっ、もちろん護衛の方についてもらってですので、安全はきちんと……」


「ほぅ、そのような報告書はあがっていなかったと思うが。昨夜の担当兵にはじっくり話を聞く必要がありそうだな」


「あの?」


「少し用が出来た。僕は席を外すが、部屋まで送ろう」


「いえ。結婚式の衣装の採寸がありますので」


「分かった。ではまたあとで」


 なぜかしら。話しちゃいけないことだったのかしら。


 終始笑顔だっただけに余計に怖い。








 結婚式の衣装合わせ。


 婚約を急いだ分、神へその一生を誓う神殿の許可取りに時間がかかっているらしい。この国で貴族が夫婦になる為には、王が認めた大神殿で誓いの儀式をする必要がある。公爵の力でその順番を早くすることも可能なのだろうが、正式ではないにしても、王室からの婚約の話を断っているといっても過言ではない為か、真冬まで空きがないと断られているのだ。


 結婚式が遅い時期になる分、正式なリドル公爵夫人の座を狙う時間も充分にあるということだ。


「代々、リドル家は赤をドレスの一部に入れる伝統がございますが、いかが致しましょうか?」


「歴代の奥様達はデザインの一部やブーケの花、靴などに取り入れていらっしゃいましたが今回はどのような形がよろしいでしょうか」


 とにかく、格式高い公爵家だけあって決めることが多い。


「カレン様は瞳が赤ですから、それに合わせてアクセサリーを赤で統一するのも素敵かと」


「それでお願いするわ」


 はぁ、正直衣装合わせにも気をつかう。もし式までに体型が変わってしまったらまた一からの採寸になるのよ。やっぱり朝食は今までみたいに野菜多めのシンプルな食事に戻してもらわないといけませんわ。





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