表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/49

突然の招待


 ここ最近の旦那様は警備の見直し、侵入者の痕跡調査、そして結婚式の準備。元々多忙な方であったが、明らかに憔悴している。


「ハァァァァッ」


 頭を抱え、大きなため息を何度もつく。


「旦那様、どうされましたか?」


「…………心を許すと警戒されないのでは全く別の話だな」


 まるでミクリのことなど見えていないように、遠くを見つめぼそっとつぶやく。


「?」


 あの騒動の夜、屋敷では侍女たちが不謹慎ながらも盛り上がっていた。


「旦那様のあの熱い眼差しをみた? 怖いお方だと思っていたけど、カレン様を見る時はとても愛おしそうだったわ」


「カレン様も妙に色っぽかったわ」


「ほくろの位置まで知っているなんて、それってそういうことなのかしら!?」


「今は婚姻前どころか、隠れてたくさん遊んでいる貴族も多いっていうのに、旦那様は古風というか……」


「それがリドル家って感じもしたけど、なんというか安心したわよね」


「侵入者もすぐに撃退されたみたいだし、ますます旦那様の保護欲が高まったのかしら!!」


「もう婚約はされたのに、わざわざお部屋を分けられて不仲説を疑っていたけれど……」


「全然そんなことなかったわね」



 公爵の狙いどおり、すぐに制圧された侵入者の話よりも、2人の関係に関心が寄せられていた。


 ミクリも主の噂話をする彼女達を注意すべきか迷ったが、2人の関係が良くなることは素直に嬉しかった。ましてや、食事や仕事以外の時間のほとんどを2人で過ごしている姿は、あえて見せつけている気さえする。


 なのに……なぜ旦那様はこんなに上の空なのかしら??


 気になりながらも、それ以上聞くのは出過ぎた真似となる。


 カレン様はすっかり元気なようですし、見守るべきですね。






「ハァ、せっかく彼女と一緒に過ごせているというのに……」


 あの日から、自分の身体を見てくれと言わんばかりに堂々と着替えをしようとしたり、薄いネグリジェで一緒のベッドに平気で寝そべってきたり。


 生き地獄すぎるだろう。なぜだ!? 僕を男として見ていないのか?? あんなに安心しかった顔で寝られては、全く手が出せない。いや、まだ婚姻前なのだから出す気はないが……


 今さら別の寝室で寝れば仲を疑われるだろうし、何よりまだ内通者が分からない以上彼女を1人には出来ない。


 あの晩、寝入ってからもうなされる姿に心が痛んだ。身を守る為にこの屋敷へ移ったというのに、リドル家としても大きな失態だ。


 その存在の大きさから、公爵夫人の座を狙う者は多い。当然、こちらも家にとって有利になる者、害のない者を選んできた。だが、今回は違う。


 僕の一存で彼女を巻き込んだんだ。どんなやつだろうが、一線を超えた以上必ず主犯をあぶり出す。



 捕らえた男は、地下牢に閉じ込めたというのに毒を飲んだようだった。幸い致命傷になる前に、ヤドラ医師があらゆる処方でその一命を取り留めたが、意識が戻らない。


 内通者がいるのは確かだ。それも、複数人いる可能性が高い。公爵の地位を引き継いだ時に、信用ならない者は一掃したはずだったが……カレンを迎え入れると決まった時、屋敷の改装でかなりの業者が出入りした。そして今も、結婚式の準備の為にいつもよりも多い外部の人間が出入りしている。新しく始めた事業の関係者か? 把握するには人数が多すぎる。


「いっそ、全員にヤドラが作った自白剤を飲ませてみるか?」


 ハァ。時間がいくらでも欲しくなる。今の業務を早急に引き継ぐ必要があるな。やることが多すぎる。




「あっ、おかえりなさい。先に夕食を頂いたんですが、ウェイド様は召し上がりましたか?」


 遅い時間、寝巻きに着替え寝室で迎え入れるカレンの姿に、一刻も早く業務を減らさなければと決断した公爵だった。

 

 








「ウェイド様、屋敷の警備の見直しはもう終わったのですか?」


 朝食時、1日の中で唯一確保できる2人での食事時間に、カレンはいつもよりも目を輝かせながら質問してくる。


 あぁ、なんて可愛いんだ。


「そうだな。シフト体制、人数、内と外の見守り経路、日頃の訓練内容の見直しからセキュリティ向上の工事計画まで話は終わっているところだ」


「な、なるほど。では、そろそろ止まっていた話を再開しても大丈夫そうですね」


「話、とは?」


「はいっ、私も自分の立場を理解しております。近いうちに、ニーナ・ブラン伯爵夫人をお屋敷にご招待しようかと」


「ブラン伯爵? それならちょうど、彼を明日事業のことで招待しているが、良ければその時に奥方の話を……」


 ガチャ


 スープをすくおうとしたスプーンが食器に当たってしまう。静かに食べるのがマナーだというのに、思わず動揺が出てしまった。



 今、なんて……? エル様を……? えっ、招待ってどこに……? まずは落ち着かなきゃ。今は使用人達もいるんだから、決して気づかれてはダメですわ。


 表情を無にし、淡々と答える。


「……では、ニーナ伯爵夫人宛のお手紙をあとでお願いしても?」


「あぁ、構わない。今度ご夫妻で招待してもらうことも考え……」


「今日はこれで失礼しますわ」


「そうか」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ