第五話 授業開始(上)
「燿蓮!今日から父さんとの授業を始めるよ!」
ある日の日曜日。
ようやく父さんが抱えていた案件が落ち着き育休を貰えた。
要請がない限り仕事はお休みだ。
…仕事が無くてどうやって暮らせるかって?
それは…父さんの資産が沢山あるのだ。優秀な陰陽師である為貯金はガッポガッポあるし、実家から俺が生まれた時にお祝い金がウン千万プレゼントされたらしい。
祖父母の家は大変な資産家で陰陽師の家系。
金が無いわけがない。元々今暮らしている俺の家は祖父母と父さんが暮らしていた家で引退してから父さん以外は青森の別荘地で暮らしているみたいだ…
…多分屋敷だろうな…ウチも屋敷だし…。
まぁ…そんな事は置いておいて陰陽師としての訓練が本格的に始まるのは大変嬉しい。
勿論テレビも有意義であったが、やはり前線で戦っている陰陽師から教えて貰えるのとは違う。
「父さん今日はなにするの?」
「今日は陰陽師協会の事と実技かな!まずは協会についてからね!」
父曰く、まず全て陰陽師は協会に所属する事を義務付けられている。これは発生した怪の相手に実力の見合った陰陽師を派遣して、迅速かつ最小限に済ませられる…実力に見合ったレベルなら死亡者も減らせる。金銭トラブルや陰陽師を騙る詐欺師なんかも防ぐ目的もあるみたいだ。そして協会が定めた陰陽師のランクがあり1番上が第一階級。1番最低ランクが第六階級と6つのレベルに振り分けられている。
ランクは霊力の総量と技術、従えている式神の3つの要素で決められていて、陰陽師になれる年齢は15歳からと決められている。なる為には試験からあって、その試験で自分のランクが決まり、それ以来決まったランクから生涯変動がない人もいれば上下に変化するらしい。
…術の練度や式神で力なんか変化するからな。
因みに父は第二階級陰陽師…かなり強い能力の持ち主だ。第四階級から上がるのは狭き門で相当な努力をしないと中々昇格出来ない。
協会は国に付随している組織では無く、完全に独立している…国の介入や指示は一切受けないようだ。力を貸して欲しい時は依頼として発注し相場通りの金銭をきちんと払う。
正直これは大変助かる。昔は貴族の使いパシリだったかららね…全く無意味な事をさせられた事なんて数知れず。見合った報酬もなく下手したら無償奉仕だった。
あと協会を通して依頼者から指名されて受ける指名依頼と言うものがある。
これはかなり稼げて指名料金というのが発生する。階級が高い者ほど料金は高くなるけど優先して依頼を受けて貰える。
怪の階級で貰える報酬は変わってくるので皆んな躍起になって技術や式神を従えて階級を上げていくのだ。
と、こんな感じだ。
「あとね燿蓮。実は第一階級の上にもう1つ階級があってね…近年は誰もいないから無いものとして扱う人もいるんだ…その階級は第零階級…最早測定不可能な陰陽師を指す階級。その中でもとびっきり強い陰陽師は"金剛石"という2つ名を賜る。金剛石の陰陽師は実際にいた人物で神の如く強かったんだ。この名を名乗れた陰陽師は本人を除いて2人…だけど誰も彼を越えられなかった。しかも戦国時代以降名乗れた人物は誰1人いない。それくらい強い陰陽師だ。」
…まさか自分の話を聞くとは。俺はそんなに評価されていたのか…実際は呆気なく死んで、関係の無い人達まで道連れにしてしまった無能だと言うのに。
そうだ…これは聞きたい。
「父さん。金剛石の陰陽師以外に…黒曜石の陰陽師っていたの…?」
黒曜の名を出した瞬間父の顔が変わった。酷く驚いているような…なぜ知っているのかって雰囲気だ。
「……燿蓮…どこでその名を……いや…そんな陰陽師は存在しないよ。」
おかしい。俺と双璧を成した陰陽師の名が知られていないのは妙な事だ。それに父の反応からして知っている…何故隠すのか…?
内心そう思いながらも、そうなんだ…と無難に返しておいた。
少し気まずい雰囲気になったが父さんの明るい声で仕切り直す。
「じゃあ!実技に入ろうね!」
そう。授業は始まったばかりだ。
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