3話 別れ
「雨が強くなってきたな....」
先日、ファラリウスが半ば強引にツガルを連れて話をしていた。致し方なく、ボクはほぼさせられる形で先に帰宅した訳だが.........
「あの後から数日、やけに空元気だったな........」
自宅から出て、いつも通り彼の家に向かう。
とは言っても、今日は今朝から雨だったのでいつもよりは遅い。
「あら、トコちゃん。」
「こんにちは。彼は......」
「え?今日は会ってないのかしら?もう出たから、てっきりもう会ってる物だと....」
「ヒック.....あぁ〜?あんのバカがトコちゃんのとこに行く以外で、黙って出かけるか〜?ごくっ、ゴック....ぷはー......入れ違ったんじゃあないかぁ〜?」
座って本を片手に酒を飲むお義父さんに、お義母さんも頷く。また河川や林を観察しているのだろうか....?
「ごめんね、せっかく雨の中来てくれたのに......」
(しかし、両親にもボクにも言わないなんて....)
両親に一声挨拶して、傘をさして雨の中彼を探しに行く。
他の村人たちに聞いてみるも、皆見ていないという。林や川に行ってもいなかった。となると、やはり彼もボクの家に行っているのだろうか。
「......おや、あの傘は........」
馴染みのある傘が目に留まる。いつもボクと彼が相合いしていたものだ。他に持っている人はいない、てことは.....彼のはず、なのだが........
(誰だろうか、あの女性は....)
見知らぬ女性と相合傘をしているじゃないか。なんとも珍しい......
(困っていた人を助けたのだろうか?)
彼もボクに気付いたようだ。隣にいる女性も然り....
二人の方へ歩き、普段通り話しかける。
「やあツガル。今日は。」
「おう......トコロ。」
「今日は雨が強いね。」
「あぁ....そう、だな....」
やけに歯切れが悪く、気まずそうに答える。
「そちらの方は......」
「あぁ、そうそう。使節団の一人で、研究や調査を主体に担当してる.....」
「リロスです。トコロ・ゴサクラ様ですね?」
「はい.....」
使節団の方か。ファラリウスはともかく、ツガルは他の兵士とはそれなりに交流を図っていたねそういえば。
本人が探求的な気質なのもあるけど、ここら辺の環境についてよく聞かれていたし....
とは言っても、女性と二人きりってのはまぁ珍しいね。
「環境調査か何かかい?」
「あぁ、それなんだが.......」
彼に目線を戻して問いかけると、彼は一層歯切れが悪いような、罰が悪そうな表情に変わる。
しばらくそんな調子なので、ボクもちょっと気まずい。
「言いにくいのかな?なんでも言っておくれ、ボクらの中じゃないか。」
「っ.........あぁ、そう、だな。」
と言いつつも、彼は目線を合わせてくれない。それどころか、表情を一段とこわばらせる。
ここまでくると、ボクも流石にもどかしさと不安感を覚えてしまう。秘密にしたいことなら聞く気はないけれど、先程の言い草から話そうとしていると思われる。
彼は深呼吸をして、決断したようにボクの目を見る。
「じ、つは.....なんだけど.....」
「うん。」
「オレ、さ。」
彼はまたそっぽを向いてしまう。けれど、そのままボクに告げる。
「この人と、結婚しようかなって.......思ってて.........」
「...........え?」
雨の音が、強くなった気がした。
曇らせって本当に楽しい。