骸の国で、死神が泣く
カテリーナの勢いが、ふいに止まった。
目が大きく見開かれる。
その瞳に、みるみる涙があふれた。
「あ……ああ……」
喉の奥から、押し殺した声が漏れる。
「あ”あ”~~~~~~~!!!」
視界の先にあったのは――
あの鎧。
見間違えるはずがない。
メイダの鎧だった。
その瞬間、別の影が目に入る。
ストライプの洋装。
色あせた道化の衣。
「……ネクロス!?」
骨ばった顔が、にたりと歪んだ。
「おやおや、名前を覚えてくれてたんか。
うれしいわぁ」
ネクロスは肩をすくめる。
「しかも、また会えるとは思わんかった。
どうや?」
骸のメイダを四つん這いにさせると、
その背に腰を下ろした。
まるで椅子のように。
「わてのメイダ・コレクションは?」
骨の指で骸の頭を叩く。
「なかなかのもんでっしゃろ?」
カテリーナの歯がきしむ。
「き……」
拳が震える。
「きーさーまーーーー!!!!!!」
噛み締めた歯の隙間から、血がにじみ出る。
その瞬間、カテリーナの髪が逆立った。
握っていたウォーハンマーが軋む。
金属が歪み、形が崩れ――
やがてそれは、
巨大な死神の鎌へと変じた。
銀髪が、音もなく漆黒へ染まっていく。
毛先だけが赤く燃える。
燻る炭のように。
そして瞳は――
深紅。
ネクロスが一歩後ろに下がった。
「おーこわ」
だがすぐに肩をすくめる。
「まあ、あとはアンデッドちゃんに任せるわ」
骨の指をひらひら振った。
「ほな」
影が揺れる。
ネクロスの姿が闇に溶けていく。
「逃げるな!!」
カテリーナが地を蹴った。
だが、その前に。
無数のアンデッドが、
壁のように立ちはだかる。
骸の軍勢。
かつてのメイダたち。
カテリーナの赤い瞳が揺れる。
それでも――
死神の鎌が、ゆっくりと持ち上がった。




