月下、メイドは血に微笑む
「全ては計画通りに!」
闇夜を切り裂くように、巨大な影が宙を舞った。
長い黒髪が流星の尾のようにきらめき、
鋭い青の瞳が月光を射抜く。
ダークブルーのメイド服を纏ったカテリーナは、
重力が存在しないかのように跳び回り、
巨大ハンマーでゴブリンを次々と叩き飛ばしていく。
“どごっ…べちゃ…” 飛び上がった瞬間には、もう動かない肉の塊となって地面に転がるゴブリンたち。
「ふふ、愛に飢えて我を忘れた方々ばかりですわねぇ。哀れですけど、邪魔ですのよっ」
空中でくるりと回転しながらカテリーナは笑った。
「たくさんいますわねぇっ」
空中でくるりと回転しながらカテリーナは笑った。
その声には、まるで散歩でもしているかのような余裕があった。
その時、破れた車の天井から影が逆さに覗き込む。
「レオンハルト坊っちゃん……? リーナお嬢様……?」
ムーンサルトで車内に滑り込み、
月明かりの中でパパタローと視線が絡んだ瞬間――
世界がふわり、と緩むように感じられた。
着地と同時に、カテリーナは天井越しに迫るゴブリンを一撃で粉砕する。
「え? メイドさん??」
「メイドさんがどうしたのよ?」と、カリンが不満げにつぶやく。
「いや……助けてくれた、みたいな……」
「なんで、“メイド”なの!!?」
「いや……なんでって言われても……」
パパタローの鼻は、すでにうっすら伸び始めていた。
カリンはそれに気づき、眉間に深い皺を寄せる。
「ねぇタロー? 今、絶対伸びたよね?」
そこへ、もう一人のメイドがしなやかに前へ進み出た。
「リディア、そっちは任せますわ」
「お任せくださいませ、カテリーナ」
ライトブルーのメイド服。
金髪が月光で輝き、澄んだ青の瞳には静かな闘志。
リディアは優雅に一歩踏み出した。
突進してきたゴブリンに、
彼女は軽くつま先でステップを踏み――
メイスを、しなやかに振り下ろした。
“ドゥン”という低い衝撃音。
ゴブリンの頭が揺れ、糸が切れたように崩れ落ちる。
その拍子に胸元のフリルがふわりと上下し、
なぜか艶めいた色気が漂う。
「……痛みは、すぐに和らぎますわよ」
リディアはメイスについた血を
“くいっ”と手首の返しで上品に払い落とす。
その動きに合わせて、白い太ももに走る黒いガーターストラップが月光にきらり。
パパタロー「……っ」
鼻が、また伸びた。
カリン「ちょい待て!? また伸びた!? 三段階目行ってるよね!?」
パパタロー「ち、違うって!これは……空気の……対流的な……!」
リディアは小さく笑みを浮かべ、すぐに跳躍。
ノリシオが空から炎を吐き、戦場は赤く照らされる。
ゴブリンの群れは完全に押し込まれていった。
「いけぇぇ! ノリシオおーー!!」
――ドンッ!!
突然、月明かりを遮る巨影が降ってきた。
緑色の鎧に覆われた巨体。
大地が震え、砂煙が舞う。
「でかい!!」
パパタローの声が裏返る。
「ホブゴブリンまで出てくるとは……」
リディアは息を整えながら構え直す。
斧の一撃で周囲の残党が吹き飛ぶ。
リディアは車の前に立ち、静かに詩を口ずさんだ。
その声に呼応して風が彼女の周囲で渦を巻く。
風がスカートを持ち上げ、
太ももに絡む黒のガーターストラップが
月に照らされ妖しく輝く。
パパタロー「……っっ……!」
鼻が伸びすぎて“ぷるぷる”震える。
カリン「タロー!! 鼻が限界突破してるの!!」
「クオオオ!この溢れ出る愛は、我々の飢えを満たす神の贈り物だぁ!!」 「その愛の源泉たるガキをよこせぇぇ!!」 知性ある声でホブゴブリンが吠える。その声は、強奪ではなく、愛への切実な要求のように響いた。
知性ある声でホブゴブリンが吠える。
「まぁ……愛に飢えて、その『愛』を力ずくで奪おうとするなんて、お子様趣味も甚だしいですわね」 リディアは唇の端を上げ、挑発的に微笑んだ。 「愛は、奪うものではなく、尽くすものですわ。あなた方は、愛の何たるかを知らない」
巨体が地面を蹴り、瞬時に距離を詰める。
斧が振り下ろされ――
リディアは風に乗る羽のように斧をかわした。
だが、次の一撃が読んだように横合いから迫る。
視界が弾けた。
“ドガァッ!!”
リディアの身体が木へ叩きつけられ、
砂煙が激しく舞い上がる。
「メイドさぁぁぁーーーん!!」
パパタローの叫びは裏返り、ほとんど悲鳴だ。
砂煙の中から、リディアがゆっくり立ち上がる。
胸元のフリルをそっと整えるその仕草が、妙に色っぽい。
頬はわずかに赤く染まり、
細めた瞳が月光を受けて揺らめいた。
「坊っちゃんのその声……嬉しかったですわ。
でも――リディア、と呼んでほしいですの♡」
軽くウインク。
その瞬間、パパタローの鼻はまた――するりと伸びた。
パパタローの顔は真っ赤。
カリンの顔は怒りで真っ黒。
「タロー。ねぇ。なんで嬉しそうなの?」
「ちちち……違うって! これは……反射で!!」
リディアは微笑み、メイスをくるりと回す。
「さて――続きと参りましょうか」
足元で風が踊り、
彼女の身体能力がさらに跳ね上がる。
美しさと残虐性が混ざり合う舞踏が、夜へと広がった。
「さぁ、大きなお客様……
舞踏のお時間ですわ♡」




