欠けた神は笑った
白い光が島全体を包み込んだ。
空はひっくり返り、波は空へと吸い上げられていく。
世界の形が、笑っているかのように崩れていった。
ヴィクターの声が震えた。
光の中心に立っていたのは――欠陥の神、ゾファールだった。
その身体は、形を保ったかと思えばすぐに崩れ、また組み上がる。
眼の奥では、無数の欠陥が次々と生まれ、変化し続けていた。
裂け、重なり、また裂ける。
意味は、言葉になる前に別の意味へと変わっていく。
「欠陥が……進化している……。
次の欠陥を、生み出しているのか……」
「なんだか、バグってないか? こいつ……」
ゾファールが笑った。
それは静かで、どこか美しい笑いだった。
「欠けることは、生きること。
壊れることは、創ること。
進化とは、間違いを受け継ぐことだ」
ムニンが目を細める。
「でもにゃ……欠陥の繰り返しは、止まらないにゃ」
ゾファールの視線が、ゆっくりとムニンに向いた。
「止まらなくていい。
止まれば、“完全”になってしまう。
完全は死。欠陥は命。
だから私は、壊れ続ける」
パパタローが叫んだ。
「欠陥が、普通のものまで壊しているじゃないか!」
ゾファールが首をかしげて微笑んだ、その瞬間、セラフィナの表情が変わった。
崩れゆく世界の隙間から、セラフィナの声が響く。
「……ようこそ、ミラーベール島へ。
ここは、ゾファール様の思考が、そのまま現実になった場所。
これより皆様を――
神の内側へご案内いたします」
その直後、地面が静かに崩れた。
瓦礫の奥から、地下へと続く階段が姿を現した。




