表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界スイートテイル 〜狐の嫁入りは誰にも見られてはいけない掟なのです(肉球マーク)。  作者: 2番目のインク
第二部:欠けた神の夢編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

54/84

騒がしい夜、静かな嘘

夜。

シルバーハート邸の客間。


パパタローたちは、明日の出発に備えてせっせと荷造りをしていた。


──ところが。


「にゃ~ん……まだ、世界がふわふわするにゃ~……」


ムニンがクッションの上でだらしなく伸びきり、

マタタビの余韻にぐでんぐでんになっている。

半開きの目と、力の抜けた四肢から、完全に使いものにならない様子が伝わってきた。


「ほら、ちゃんと寝なさい。明日、出発でしょ?」


布団を敷きながらカリンが声をかけると、

ムニンはごろんと背を向ける。


「いかにゃい……ムニンはここにいるにゃ……

 マタタビで又旅へ~……にゃぁーー……」


意味の通らぬ寝言だった。


そんな中、

ふんわりと頬を染めたルミエルが、

ぷくっと丸まったシルクのマントをまとい、ぽてぽてと歩み寄ってくる。


「のう、パパタロー。

 妾も行きたいのじゃ……どうか、連れていってくれぬか?」


上目遣いの瞳は、うるりと潤んでいる。


パパタローは少し困ったように笑い、

その緑の髪をそっと撫でた。


「いや……今回は危ない調査だからな。」


「妾は子どもなどではない!

 立派な戦力なのじゃ!

 しかも、そなたと年も変わらぬというのに……!」


必死に訴える声に、

パパタローの表情がやわらぐ。


「わかってるさ。

 でもな、ルミエル。

 お前が無事でいてくれることが、俺にとって一番大事なんだ。」


その言葉に、

ルミエルは真っ赤になり、もじもじと裾を握りしめる。


やがて、

ちょこん――と、パパタローの膝に腰を下ろした。


その温もりに触れた瞬間、

胸の奥がふわりとほどける。


「……ぬくいのじゃ。」


その穏やかな空気を、

盛大に壊す声が響いた。


「にゃーっはっは!

 今夜は踊るにゃ! 旅立ち祝いにゃー!」


「寝ろっ!!」


カリンの投げた枕が、見事に命中する。


笑い声が弾け、

騒がしい夜は、あたたかなまま更けていった。


***


夜も深まり、

邸の廊下には人の気配が消えていた。


小さな足音と、ふにゃりとした鳴き声。


「にゃあ……ルミエル、ここでいいにゃ?」


「うむ。ここなら、誰にも聞かれぬ。」


ルミエルとムニンは、廊下の隅で顔を寄せ合う。


「よいか、ムニン。

 妾は決めたのじゃ──絶対に、密航してみせる!」


「にゃー! 密航大作戦にゃ!」


小さな手と肉球が、ぱちんと合わさる。


【極秘】ルミエルとムニンの密航大作戦書


作戦名

「絶対にバレずにこっそりついていくのじゃ作戦!」


作戦メンバー

・隊長:ルミエル(作戦立案者・可愛さ担当)

・副隊長:ムニン(潜入・運搬担当)


目的

・パパタローと一緒に行く

・ついでにカリンも守る


方法

・荷物にまぎれる

・見つかったら涙目作戦


暗号

・ミカン=危険

・カステラ=続行

・どら焼き=全力撤退


成功率:74%(ムニン調べ)


──だが。


「さてさて、夜更かし組を発見だ。」


闇の中から、にょきっとパパタローの顔が覗いた。

手には、夜食の皿。


「──!!」


ふたりは固まる。


「こそこそ、何してるんだ?」


「ち、ちがう!

 これは……旅立ちの、お祝い会なのじゃっ!」


「にゃ! 密航とかじゃないにゃ!」


「そっか。

 じゃあ、一緒に夜食でも食べようか。」


月明かりの下。

小さな夜食会が、そっと開かれた。


ルミエルは恐る恐る尋ねる。


「……妾、ここに座ってもよいか?」


「もちろん。」


膝をぽん、と叩くと、

ルミエルは嬉しそうに、ちょこんと座った。


「……ぬくぬくじゃ。」


パパタローは、何も言わずに頭を撫でる。


「出発したら、たくさん土産話を持って帰るよ。」


「うん!」


小さな約束。

小さな嘘。


――行かない、という嘘。


その夜は、

誰にとっても、あたたかく、騒がしく、

そして静かに決意が固まる夜だった。


***


(なお、【密航大作戦】は――このあと、三度、始動する。)

まだやってんの?


う”---

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ