光の祭り⑦~災いの神、濁流に流る
「さぁ、私の緑髪のエルフを差し出しなさいぉ。そこの緑髪ですぉ。」
スサノロキーが神輿に鎮座しながら、不気味な笑みを浮かべる。その鼻先がくんくんと動き、奇妙な気配を感じ取っているようだった。
「ふぅ、この石の香りも格別ぉ。4つの脈が聞こえるのも、心地良いですねぉ。」
彼が愛おしそうに撫でる石は、ただの石ではなかった。赤黒く脈打ち、そこから放たれる気配は異様だった。
(あの石…!妙に懐かしい気配だな…まさか――)
パパタローの脳裏に、一瞬、3人と1匹の面影が浮かんだ。
(あれは、元いた世界にも存在していた妖石…。けど、違う…。ただの妖石じゃない…まさか!)
「おい、その石はなんだ?漬物石にでもしてるのか?」
パパタローが敢えて軽口を叩く。
「?」
「漬物石…!?貴様、どこから来た!!!」
スサノロキーの声は激高し、神輿が揺れるほどの威圧感が辺りに広がった。その目がパパタローを鋭く射抜き、鼻先が再びくんくんと動く。
「ふん、その喋り方、そしてその匂いぉ…。貴様、日ノ本の者だな?いや、それだけではない…。緑髪の狐の気配が漂っているぉ!」
スサノロキーの不気味な笑みが一転、疑惑と嫉妬が混ざった表情へと変わる。
「まさか…翠狐と何か関係があるのか?貴様がその緑髪のエルフを隠しているというのかぉ!」
スサノロキーの問い詰める声に、場の空気は一気に緊迫する。
「翠狐?」
パパタローは、あえて知らないふりをしてスサノロキーを煽るような口調を保つ。しかし、内心では動揺していた。ルミエルのことを指しているのは明らかだが、どうしてこの転生した神が彼女を求めているのか、その意図が読めない。
「とぼけるなぉ!」
スサノロキーの手が赤黒い妖石を撫でると、石から放たれる脈動が一層激しくなり、周囲の空間にひび割れたような異次元の気配が漂う。
「その緑髪のエルフは、我が計画の最後のピースぉ…。その力、そして存在そのものが、我の手中に収まるべきなのだぉ!」
スサノロキーの声が不気味な響きを帯び、彼の足元から瘴気のような黒い霧が広がる。
「お前の『器』としての価値は低いぉ。だが、その内部に宿る『魂の欠片』、翠狐の『印』は――我が完成のために不可欠ぉ!」
「この『器』(ルミエル)などどうでもよい。我が求めるは、再構築された翠狐よぉ!そしてその力、そして存在そのものが、我の手中に収まるべきなのだぉ!」
「計画だと?」
パパタローは冷静さを装いながらも、一歩踏み出してスサノロキーを睨みつける。
「答えろ。その石と翠狐、それが一体何を意味するのか?」
「それを知る必要はないぉ、貴様に!」
スサノロキーは手をかざし、脈動する石から一筋の黒い光線を放つ。それはパパタローに向かって一直線に迫ったが、彼は素早く身をかわした。
「きゃーーー」
脈動する石から複数の女の子の叫び声がした。
「なんだ?」
「そのエルフを差し出さぬなら、力ずくでも奪うまでぉ!」
「んぉ・・・?お前ぉ・・・。不完全体だなぉ。」
スサノロキーの声が轟き、妖石からさらに異形の影が湧き出てくる。
沈黙が流れた。
「そうか、なるほどぉ。最後のピースは我が完成するぉ。」
(あの石。声が気になるが、これはまずい…!奴の力は化け物だ…。)
パパタローは心の中で覚悟を決め、再びスサノロキーと対峙する。
「なにごちゃごちゃ言ってんだ!来いよ、スサノロキー。漬物石使いの本気を見せてもらおうじゃないか!」
軽口を叩きながらも、パパタローの目は真剣そのものだった。
スサノロキーは石を軽く叩きながら、楽しげに続けた。
「この石の香りには秘密があるのですよぉ。ふふ、この脈の音が聞こえますかぉ?リラァーックスできますねぉ。」
パパタローの胸に湧き上がる不安は、さらに深まるばかりだった。
「そんなことより、どうするのですぉ?私の緑髪を差し出してくれるのですかぉ?」
スサノロキーが挑発的な笑みを浮かべる。
「断る!目玉野郎!」
パパタローが即答すると、スサノロキーは一瞬、ムッとした表情を見せたが、すぐに笑いに変えた。
「目玉野郎とは!いちいち失礼ですねぉ。でもでも、その名も悪くないかもしれないですねぉ。」
彼は誇らしげに自らの名を告げた。
「我は『創造神連合 災の神スサノロキー』ですぉ。創造神御柱から授かった名前ですよぉ。人を超えた存在、それが神ですぉ。」
その名が響いた瞬間、周囲の空気が一変した。重く、威圧感に満ちた空気が辺りを包み、誰もが息を呑む。
(この石の正体、もっと探る必要がある…。けど、まずはルミエルを守るのが先だ!)
パパタローは決意を胸に秘め、緊張の中、次の手を考える。
「なぁーにが、創造神だ!騒々しいだけだろ!緑亀、緑亀ってうるさいしなっ。
そんなにほしけりゃ、縁日でも行って、モナカのポイで永遠に救ってろ!超人目玉野郎!」
「…はて?縁日やら、モナカのポイやらというものがどんなものか分かりかねるぉ。はて?この頭の悪い童<わらべ>は何をのたもうておるかぉ…。」
とギョロ目が冷笑した時、再びパパタローの頬に何かが飛んできて、頬から血が流れ出るが、瞬時に流血が止まり、傷が治った。
「ほほぉ…すごいすごぉい。我の血弾が当たったても、無傷とは。
お名前を頂いてもぉ?
まぁ、すぐ死んでしまうので、お名前は聞かなくてもいいのですがぁ。
神の慈悲は深いですがきまぐれですよぉ。お聞かせくださいますかぁ。」
「OK.回りくどい自称神よ。パパタロー L シルバーハートだ。」
「それでは、パパタローさんとお呼びしますぉ。緑髪のエルフを渡していただけるのですねぉ?緑髪のエルフは災の神の奉納物・供物・祭品・生贄つまるところ『食べ物・食べ頃』なのですよぉ〜。」
奉納物・供物・祭品・生贄のところは早口だった。
「しかも緑髪のエルフは『災の塊』ですからねぇ〜。私が取り込むことが有意義ってもんですぉ。
私は災いを沈めているのですからぉ。」
「つっ!」
とギョロ目がさらに冷笑した時、再びパパタローの頬に何かが飛んできて、頬から血が流れ出るが、瞬時に流血が止まり、傷が治った。
「…なるほどなるほど…
貴方は不死身ですか?貴方にも興味が湧きましたぉ!
まとめていだきますぉ!」
「すまんの。緑髪のエルフは災いを呼び寄せる存在と言われておっての…。」
ルミエルはその場に立ち尽くした。彼女の心は重く、涙が頬を伝って流れ落ちた。彼女は自らの存在が災いをもたらすものとされることに苦しむと、同時に、愛する者たちを守りたいという想いも胸に抱いていた。
「泣いているのですかぉ!あーもったいないですぉ。災いの蜜がぁ~流れるぅ~。」ゴクリ。
パパタローがルミエルの気持ちを踏みにじる発言に切れた!
「…気持ちわりぃやつだなぁ!ボケギョロ目!夫婦の会話に入ってくるな。」
スサノロキーが冷笑した。
パパタローにまたも傷がつき、治った。
「さっきから痛ーな!!うっっとしぃ!いちいち笑うな!なんか飛んでくるだろ!」
パパタローの声が荒々しく響き渡りました。彼の怒りは爆発寸前だ。
スサノロキーの目がニンマリとした。
「そんなに気に入ってくださったかぉ。…それでは、特別に大放出!災厄の針嵐 (さいやくのはりあらし)」
スサノロキーの周囲に突如として大量の針が出現し、嵐のようにパパタローに向かって飛び散った。
何本かパパタローに突き刺さり、間髪入れず嵐から雷撃され、感電した。
「がぁ!!」
パパタローは体は爛れたが、すぐに回復した。針を体から抜き、投げ捨て叫ぶ。
「刺激的な攻撃だな!だが効かねぇ!」
「まぁ、確かに俺たちがここに来たきっかけは、彼女だ!だがな!俺は一回も災いだとか、不幸だとか微塵も思ったことはないぜ!!勝手に人様を災いに仕立てるんじゃねぇ!なぜなら俺はルミエルの災いって奴をもらい受けた婿だ!俺の国では『災い転じて福となす』っていってな、俺はルミエルの「福男」だからだ!!おととい来やがれ!」
「な!」とパパタローはルミエルに親指を立てた。
「タローさん…」ルミエルの頬から涙が溢れ出た。
「お前の「腹」は「福」じゃ、満たせねぇだろ!わかったか!わかったら帰れ!」と威勢よくパパタローが災の神スサノロキーに憤りや熱い情熱が込め叫んだ。
彼は自らをルミエルの守護者として誇りに思っており、その決意は揺るがぬものだった。
「パパタロー…震えてるにゃ…。」と、ムニンが呟く。
「これは武者震いだ。なんか無性に腹が立って…。」パパタローが明後日の方向を見て言った。
「いい大人なんだから、いきなりブチ切れるのそろそろやめたら?」と呆れ顔のカリンが言う。
「でも、今のパパタローかっこいい!」
災の神スサノロキーがにやりと笑い、
「ご結婚、おめでとうございますぉ。
とでも、許すと思いますかぉ?」
スサノロキーはギョロ目をアピールした。
「そうです。そうです。良いことを考えつきました!
素直に引き渡してくれたら、貴方を配下として迎えますよぉ。泣いて喜ぶような待遇ですよぉ!」
パパタローが嘲笑する。
「独り言が好きだな!お仲間とそこで寝てろよ!」と叫ぶと、パパタローは杖を振りかざした。
パパタローが杖を使うと、周囲の水が圧縮され、超回転し、細い糸状になり、唸りを上げた。回転した物体が周囲に風を巻き上げた。
「なんとぉ!」スサノロキーのギョロ目がますます大きくなった。
パパタローが口を引き締めると同時に杖を振り下ろした。
唸りを上げた圧縮された水糸が、スサノロキーにめがけて切り裂いていった。
水蒸化した水が霧のようになり、あたりの視界を遮っり、血の雨が振ってきた。
霧が晴れると同時に、スサノロキーの重々しい声が響く。
肩から腕が落ち、血が流れていた。
スサノロキーはにやにやと笑っている。
「痛い痛い痛い!!」
「ひゃーーー。この代償は重いですよぉ。」
スサノロキーの流出した血液が玉状になり、バウンド仕出しだ。
「!」
ギョロ目がひん剥いたと思ったら、血液玉が飛んで、爆ぜだした。
カリン!
カリンが木剣で避けると爆発し、木剣がくだけた。
きゃぁ~
カリン!とムニンが駆け寄る。
「大丈夫だ!」
「ノリシオ!奴を焼きはらうんだ!」パパタローがノリシオに命令した。
キョエー
「従魔ですか~。これは美味しそうだ。」
ルミエルが防御結界を貼り、仲間を守っている。
血液爆弾が間髪入れずに、襲ってくる。
ドーン ドーン
着弾らしき音がだんだんと大きくなってくる。
王国軍だ。
こんな時に!!!
王国軍もルミエルを奪いに来ていた。
スサノロキーがノリシオに血の爆弾を直撃させた。
「命中~!」
と落ちてくる、ノリシオが力を振り絞って炎の爪で応酬した。
「無駄無駄無駄無駄無駄~!」
ノリシオ!!
と空に向かって叫ぶパパタローの目にバカでかい水球が映った。
!
備えあれば憂えなし!
「カリン、ムニン!雑魚はたのんだ!」
「もうやってるわよ」
「あー、何なの。しつこい!」
「ほんとにゃー。ほいっ。」
輿を担いでいた男共をカリンが木剣でぶっ叩き、ムニンが悪夢を植え付けて気絶させているが、しばらくすると、涎を垂らして、起き上がってくる。
三角の黒いマスクの下はアンデッドのようだ。
スサノロキーが腕を上げると、空中に黒い雷雲が巻き起こり、雷鳴が轟いた。彼のギョロ目が輝き、不気味な笑みが広がる。パパタローは戦闘態勢に入る。
「ルミエル、後ろに下がれ!こいつは俺が何とかする!」パパタローは叫びながら、拳を握りしめた。
「うぉぉぉ!!」パパタローが全力で突進し、スサノロキーに向かって拳を振りかざした振りをした。
「無駄ですよぉ、パパタローさん。」スサノロキーは冷笑し、パパタローの攻撃を軽々とかわした。「あなたの力では我に傷一つつけられませんぉ。」
「そりゃ、そうだろ。なんせ俺、見た目5歳なもんで。」
とパパタローは杖を地面に向けて振った。
「何をしているのですぉ?
まだ諦めませんか?それは愚かですよぉ。」スサノロキーは冷酷な笑みを浮かべた。
しかし、その時、手を広げたルミエルが前に出て、スサノロキーに向かって叫んだ。「パパタローを傷つけるでない!」
スサノロキーは一瞬驚いたように目を見開いたが、すぐに冷笑に戻った。「ならば、緑髪のエルフよ。お前が自ら我の前に跪けば、この男?ガキの命は助けてやるぉ。」
「ルミエル、ダメだ!そんなことをするな!」パパタローは必死に叫んだ。
ルミエルは一瞬躊躇したが、やがて決意を固め、スサノロキーの前に進み出た。
「…パパタローの命を助けよ。それが妾の願いだ。」
「ふふふ、それで良いのですぉ。」スサノロキーは満足げに笑い、ルミエルに手を差し出した。「では、こちらに来なさいぉ。」
「…!?この圧力は…!?」
「喜べ。お前の好きな、災というのをくれてやる。俺達を邪魔すると、災いが振りそそぐんだぜ。」パパタローはスサノロキーの背後を指さした。
「落ちろぉー!!」
パパタローが杖を振り落とすと、パパタローが作ったが消せないでいた巨大なウォーターボールが、水玉の先端が尖り全体にかけて回転しながら落下し、スサノロキーに直撃した。
「え!水玉!!いつの間にあんなに大きくなってるのよ。」カリン達が叫ぶ。
あ”あ”~!!
私の災いが~~~。
これは!
密の味ですぉ!!!
大地に降り注いだ飛沫はやがて濁流となり、スサノロキー達が湧き出てきた暗躍の中に渦を巻きながら流れ、全てを洗い流しチャポンと音を立てて消えた。
呼応するかのように、各所での争いの音が消え、静寂になった。
神輿の妖石に妹達のシルエットが見えた
やはり!!
「その石おいていけ!!!」
「これで終わりだ…」パパタローは息を切らしながら立ち、ルミエルに向かって手を差し出した。「ルミエル、ナイスな時間稼ぎだったぜ!」
ルミエルは涙を浮かべながらパパタローの手を取り、微笑んだ。「え?うん、ありがとう、パパタロー。」
時間稼ぎじゃなかったのじゃがの…




