光の祭り④~災の神と「福男」の宣言
暗躍の影が観覧車の支柱を掴み、自らを引き寄せた。その道は黒い沼に浸されていく。ギョロ目男が匂いを嗅ぎつけ、支柱を掴んで重力を無視するように登り始めた。観覧車はすでに傾き、足元の沼のせいで危うい状態にあった。
「ひゃーっははっは。匂います、匂いますぉ。近いです、近いですぉ!」
ギョロ目男はルミエルのいる観覧車に到達し、目が合った。
「見つけましたよぉ」
「ついに私のものになるのですぉ、災の蜜、緑髪ぃ!」
観覧車が耐えられず倒壊を始めた。安全魔導装置が発動し、防護結界の膜が各車に現れた。
「倒れる!落ちる!みんな何かに掴まれ!!!」
「え、まじっ?」
パパタローたちが乗った車は地面を転がり落ちていった。
「目が回るにゃーーー!!!」
「きゃーーー、ちょとムニンどこ触っているの!?」
「ごめんにゃ~。不可抗力だにゃぁ~。」
(…ってそんなにないにゃ…。)ボソッ
「何かいった?」
「にゃ?」
落ちていく観覧車を冷ややかな目でおっている。
神輿の男が冷たい視線でパパタローたちを凝視した。その目は気味悪く輝いていた。ルミエルを見て、石の匂いを嗅ぎ、舌なめずりをした。その気持ち悪さは際立っていた。
「ひ〜。同じ匂い!災の蜜を見つけましたぉ。こんなところにいましたかぉ。分かっておりましたがぁ。」
「はぁーい、寝てるみなさん起きてくださいぉ。緑髪が目の前にいますよぉ」
神輿を担いでいた者たちが立ち上がり、ルミエルに襲いかかる恍惚な表情で狂い叫ぶ黒装束の者たち。
「諦めて、緑髪のエルフ、その女を差し出しなさいぉ」
渇望した眼差しが、ルミエルに向けられた。
「緑亀、緑亀ってうるせいやつだな。縁日でも行ってろ!目玉野郎!」
彼らが冷笑した際、その言葉はただの皮肉に過ぎませんでした。しかし、彼らの口調や態度は侮蔑の念を滲ませていた。
「目玉野郎とは失礼な…。う〜ん、でもでもその名もいいかもしれないですねぉ。名は体を表すといいますからねぉ。」
「とはいえ、私の一存では改名はできませんねぉ。
改めまして、私は『創造神連合 災の神スサノロキー』ですぉ。」
「緑髪のエルフを差し出せば、何もしませんぉ。いいですかぁぉ……。」
名乗った瞬間、空気が沈んだ。
カテリーナは微笑みを崩さない。
――けれど、視線だけが鋭くなる。
パパタローが疑問に思ったのか、ブツブツとつぶやいている。考えをめぐらしている。
「創造神連合?…創造神…創造?」
何を思ったのか、パパタローが叫んだ。
「おーい、質問!創造神連合ってのは、神様を作ってる団体か?で、作られたのか、災の神のスサノロキーさんかい。神様じゃねぇーじゃん。自称神っってやつか。」
「は!?」スサノロキーが苛つく。
「で、貴方は?とはいっても、すぐ死んでしまうので、お名前は聞かなくてもいいのですがぁ。まぁ、神の慈悲は深いですがきまぐれですよぉ。お聞かせくださいますかぁ。」
「OK.自称神よ。パパタロー・レオンハートだ。」
「それでは、パパタローさん。緑髪のエルフを渡していただけるのですね?緑髪のエルフは災の神の奉納物・供物・祭品・生贄つまるところ『食べ物・食べ頃』なのですよぉ〜。」
奉納物・供物・祭品・生贄のところは早口だった。
「しかも緑髪のエルフは『災の密』ですからねぇ〜。私が取り込むことが有意義ってもんです。何せ私は災いを沈めているのですから。」
「ごめんなさい。パパタロー。緑髪のエルフは災いを呼び寄せる存在と言われているの…。」
ルミエルはその場に立ち尽くしていました。彼女の心は重く、涙が頬を伝って流れ落ちました。彼女は自らの存在が災いをもたらすものとされることに苦しみましたが、同時に、愛する者たちを守りたいという想いも胸に抱いていました。
「泣いているのですか!あーもったいない。災いの蜜がぁ~流れるぅ~。」ゴクリ
「…気持ちわりぃやつだなぁ!ボケギョロ目!」
パパタローの声が荒々しく響き渡りました。彼の怒りは爆発寸前であり、その言葉は辛辣なものでしたが、その背後にはルミエルへの深い愛情が滲んでいました。
「まぁ、確かに俺たちがここに来たきっかけは、彼女だ!だがな!おれは一回も災いだとか、不幸だとか微塵も思ったことはないぜ!!勝手に人様を災いに仕立てるんじゃねぇ!なぜなら俺はルミエルの災いって奴をもらい受けた福男だ!俺の国では『災い転じて福となす』っていってな、俺はルミエルの「婿」だからだ!!俺の嫁に手を出すじゃねぇ!!」
「な!」とパパタローはルミエルに親指を立てた。
「タローさん…」ルミエルの頬から涙が溢れ出た。
「お前の「腹」は「福」じゃ、満たせねぇな!わかったか!わかったら帰れ!」と威勢よくパパタローが災の神スサノロキーに叫んだ。
彼の言葉には、憤りや熱い情熱が込められていました。彼は自らをルミエルの守護者として誇りに思っており、その決意は揺るがぬものだった。
「パパタロー…震えてるにゃ…。」と、ムニンが呟く。
「これは武者震いだ。なんか無性に腹が立って…。」パパタローが明後日の方向を見て言った。
「いい大人なんだから、いきなりブチ切れるのそろそろやめたら?」と呆れ顔のカリンが言う。
「でも、今のパパタローかっこいい!」
災の神 スサノロキーがにやりと笑い
「ご結婚、おめでとうございますぉ。」
「あんがとよ!」吐き捨てるようにパパタローが社交辞令で礼を言った。
「でぇ~。そんなお二人の門出の祝辞でぇす。」
「悩めるときも病めるときも何でもないときも…恐怖のどん底に引きずり下ろして、お二人を引き裂きますねぇ~。よろしいですかぉ~~~~。」
スサノロキーはギョロ目をアピールした。
「あ””ぁ!上等だぁ!」パパタローぶち切れるっ。
「あー、何なの。しつこい!」
「ほんとにゃー。ほいっ。」
輿を担いでいた男共をカリンが木剣でぶっ叩き、ムニンが悪夢を植え付けて気絶させているが、しばらくすると、涎を垂らして、起き上がってくる。
三角の黒いマスクの下はアンデッドのようだ。
「無駄無駄っ」嘲笑する。
「どんなに引き裂かれようが、砕けようか、親愛なる下僕は、お前たちを襲うのですぉ!」
「門の方が騒がしいですねェ~。」
「そうです。そうです。良いことを考えつきました!
素直に引き渡してくれたら、貴方を配下として迎えますよぉ。泣いて喜ぶような待遇ですよぉ!」
「まぁ、いろいろとひでぇリーダーだな。コンプライアンス違反で告訴されっぞ。」
パパタローが嘲笑する。
「コンプ?」
「それはそうと、独り言が好きだな!お仲間とそこで寝てろよ!」と叫ぶと、パパタローは杖を振りかざした。
パパタローが杖を使うと、周囲の水が圧縮され、超回転し、細い糸状になり、唸りを上げた。回転した物体が周囲に風を巻き上げた。
「なんとぉ!美技!美しいいいいいいいい!ほしいいいい!!」
スサノロキーのギョロ目がますます大きくなった。
パパタローが口を引き締めると同時に杖を振り下ろした。
唸りを上げた圧縮された水糸が、スサノロキーにめがけて切り裂いていった。
水蒸化した水が霧のようになり、あたりの視界を遮っり、血の雨が振ってきた。
霧が晴れると同時に、スサノロキーの重々しい声が響く。
肩から腕が落ち、血が流れていた。
スサノロキーはにやにやと笑っている。
「痛い痛い痛い!!快感!!快感!」
「ひゃーーー。この代償は重いですよぉ。」
スサノロキーの流出した血液が玉状になり、バウンド仕出しだ。
「!」
ギョロ目がひん剥いたと思ったら、血液玉が飛んで、爆ぜだした。
カリン!
カリンが木剣で避けると爆発し、木剣がくだけた。
きゃぁ~
カリン!とムニンが駆け寄る。
「大丈夫よ!」
「ノリシオ!奴を焼きはらうんだ!」パパタローがノリシオに命令した。
キョエー
「従魔ですか~。これは美味しそうだ。オーソドックスに塩にしましょぉ」
パパタローはルミエルをかばい、カリンとムニンは応戦する。
カリンは手袋を外す。全身を魔力でコーティングし、素手で応戦し、倒していく。
ムニンの猫パンチが炸裂し、黒装束達は倒れ去っていく。
「これ、埒が明かない!!!数、多すぎだよ!!」
「ノリシオ!指示待ち社員はいらない!自由に駆逐しよ!裁量権は委ねる!責任は俺が取る!」
もと社長パパタローが命令した。
パパタローの頭上から現れたノリシオが黒装束の者たちに向かって咆哮し、炎を放った。その炎が敵を包み込み、一瞬にして焼き尽くした。
「!?」
風船が破裂した音がした。赤黒い道化師が風船を作り出していた。彼は不気味な笑みを浮かべ、風船を手に持ち、軽やかに踊るように動いていた。ノリシオは再び炎を纏い、道化師に突進した。しかし、道化師は風船を膨らませた。牙を剥く風船獣がノリシオを飲み込んだ。
「ノ!ノリシオ!!!!」
「闇裂きの爪!」
パパタローが叫ぶより早く、ムニンが空中を駆け上がり、風船獣に爪を入れた。破裂して消え去ると同時に、ノリシオが上空へ飛んだ。
「ムニン!でかした!」
「えっへん。まかせるにゃぁ~!」
「もういっちょいってみるにゃ!!」と可愛い表現とは反対に、ムニンは鋭い目つきで道化師に歩み寄った。肉球から黒い霧が立ち上り、不気味な雰囲気を纏っていた。「悪夢の中で苦しむがいいにゃ!ナイトメア・ヴェール !」ムニンが低く囁くと、黒い霧が道化師を包みこんだ。
道化師の表情が歪んだ。「これは…何だ…?」彼は頭を抱え、足元がふらつき始めた。黒い霧が彼の意識に入り込んだ。
カリンはその隙を逃さず、高く跳び、道化師に一撃を見舞った。道化師は悪夢と攻撃に対応できず、地面に倒れ込んだ。
「ぐわぁ~~~……」
「ぐわっ」
「…なんちゃって、痛くなぁーい!」
「…」
「ちょっと痛ーい。」
どっちなんだよ? 皆心の中で突っ込んでいた。
「あとよろしく。」
ポーン!!!
倒れたかと思われた道化師は、突如起き上がり、不気味な笑みを浮かべ黄色と青が混ざった黒色になり膨らみ、自らを刺し弾け飛び、鳩と普通の風船が空に飛んでいった。
飛んでいったものに気を取られていると、その後に、2人の道化師が立っていた。
「はーい。」
黄黒い道化師が玉に乗っている。腹を掻き壊しても、掻くことをやめない。
「わかりましたわ。」
青黒い道化師がムチを持ち、ポーズを取っている。
「…あら、災いの蜜さんは、あなたね。お嬢ちゃん」
「こちらにいらっしゃい。」
「可愛がってあげる。」
パパタローは両手を広げ、集中した。炎の魔法陣が足元に現れ、赤い光が放射状に広がった。「準備はいいか!」
カリンは構え、目の前の敵に向けて突進した。道化師はムチを振り回しながら笑みを浮かべたが、カリンの迅速な攻撃には対応しきれなかったが、傷を負いながらも、道化師のムチを弾き、その隙に一撃を加えた。「これで終わりよ!」
しかし、道化師の動きは想像以上に素早かった。カリンの拳をかわし、ムチでカリンの腕を巻き取った。「甘いわ!」青黒い道化師はカリンを自分に引き寄せ、頬を舐めた「思ったより甘くないわ。しょっぱいぐらい!」と意表を突かれ、ひきつる表情のカリンをそのまま地面に叩きつけた。カリンは受け身をとって、衝撃を和らげ、再び立ち上がろうとした。
「んー?」
青黒い道化師はカリンの頬の傷が消える瞬間を見た。
「ほしぃわ。取り込みたいわ。拳の娘は私がもらうわ。」
「坊やは、あげるわ。」
「女がいいなー。まぁ、わかったー。」
血まみれの手で腹を掻きむしりながらいった。
「あげないわよ!!」
「ムニン、援護して!」カリンが叫ぶと、ムニンは黒い霧を操り、敵の視界を遮った。「悪夢に飲まれろ、いっちゃえ。にゃ!」霧が道化師を包み込み、彼の動きを鈍らせた。カリンはその間に素早く動き、敵の背後に回り込んだ。
「チャンスだ!」パパタローが叫び、炎の魔法を解き放った。巨大な火球が空中に浮かび、道化師たちに向かって急速に迫った。カリンとムニンは敵を押さえつけ、ルミエルの幻影が敵の動きを封じた。
「これで終わりだ!」火球が道化師たちに命中し、爆発音と共に彼らを焼き尽くした。炎の中からノリシオが現れ、再び力強く咆哮した。
砂埃、土煙入り、とにかく煙が立ち込める。
「煙たいですわ。コホッ」
しかし、煙が晴れると、道化師たちはまだ立っていた。しかも、笑みを浮かべながら腹を掻いている。
「な、なんて奴らだ…」
「これは手強いにゃ…」ムニンが息を整えながら言った。
「やっぱり、楽には勝たせてくれないかぁ。」パパタローが呟いた。
「じゃぁ、こちらからも行っきますよー」
狂気の絵画!!
腹を搔いて手に付いた血を振り飛ばすと、その血は空中に散り、闇の中で赤い飛沫の形を描いた。飛び散った血は鋭い曲線を描き、まるで暗闇に浮かび上がる不気味な絵のように広がり、カリンに飛んだ。
パパタローは防御結界を張るが、一部が破られ、カリンの肩に刺さった。「くっ…!」
血が出るが、傷はすぐ消えた。
「カリン!!」
「その娘、私の獲物だって言ってるのに!!」
青黒い道化師はムチを振り回し、ムニンに狙いを定めた。「逃がしませんわよ!」
「僕は男の子にゃー!!」
冥府の鞭舞!!(めいふのむちまい)※3
青黒い道化師が死神の形相で繰り出したムチを無慈悲にムニンに浴びせた。「にゃぁぁ…!」
「私が何とかするわ!」ルミエルは必死に力を振り絞り、再び幻影を作り出そうとするが、道化師たちの攻撃が続く。ルミエルもまた幻影を使う余裕がなくなり、実体を現してしまった。
パパタローが仲間たちを鼓舞するが、道化師たちの圧倒的な力に追い詰められていく。戦いは激しさを増し、パパタローたちの力も限界に近づいていた。
「まだ終わってないぞ!」パパタローが叫び、再び炎の魔法を放とうとする。しかし、その時、黄黒い道化師が彼に向かって風船を投げつけた。風船が破裂し、パパタローは爆風に巻き込まれ、地面に叩きつけられた。
「パパタロー!!」ルミエルが叫び、駆け寄ろうとしたが、青黒い道化師のムチが彼女を捕らえた。「捕まえ~たぁっ。災のよ。話が主の糧となれ。」
「ルミエル!」パパタローは必死に立ち上がろうとするが、身体が言うことを聞かない。カリンとムニンもまた、道化師たちに押さえつけられ、動けない状況だった。
道化師たちは勝ち誇った笑みを浮かべながら、パパタローたちを見下ろしていた。
「さあ、これで終わりだ。災の蜜は我々のものだー。」
棒読みのセリフがなんとも苛つかせた。
※1 カタリーナさんはメイドさんですが、戦闘民族メイダの人です。本業は戦闘です。
※3「冥府」は、「死後の世界」や「黄泉の国」を指し、死者の魂が裁きを受ける場所。




