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異世界スイートテイル 〜狐の嫁入りは誰にも見られてはいけない掟なのです(肉球マーク)。  作者: 2番目のインク
第一部:狐嫁と光の祭り・災の神編

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初対面の再会@海山楽市② ――メイドの一撃と、緑髪の“初めまして”

「やるなら、やるっって言ってくれ!」

「しょうが無いじゃない!文句ならこのおっさんに言ってよね。」

パパタローも戦闘体制だ。

「…お前、俺に似たな」

「それは嫌だ。言わないで。」


「何をブツブツ言ってるんだ。このクソガキども!!!」と、衛兵は歯を食いしばって、怒り立ち上がった。

掴んだ兜を被り直すが、凹んだ兜は頭に入らない。苛ついた衛兵は兜を投げ捨て、ふらつく足を整え、剣に手を伸ばした。


カテリーナがパパタローとカリンの前に立ち、鬼の形相で衛兵に立ちはだかった。

「我が名は、かの宮廷魔法七師の一人・シルバーハートの直属のメイド カテリーナ。

お前たちの一連の暴挙を見ていた。此度のことを報告する。このまま引けば大きな処罰はせぬよう進言することを約束しよう!直ちに立ち去れ!さもなくば、衛兵とは言え、この場で一掃する!!※1」


「くっ」


その時、衛兵がカリンの右手の甲を見た。

先の交戦で破れた手袋の隙間から、淡く光る“印”が覗いていた。


「……! 見つけた……この娘だ!」


イゾレーター少佐の目がギラリと光る。


「連行しろッ!」


怒声とともに、近衛兵が一斉に動いた。


「や、やめて!」

カリンが身を引こうとした瞬間、イゾレーター少佐が自ら彼女の腕をつかもうと前に出た。


「その手に宿るのは“禁域の徴”──お前に問答無用の選別が下ったのだ!」


「なんの真似ですの!」


突如、風を切る音が響く。

横合いから飛び込んできた影が、イゾレーターの前に立ち塞がる。


カテリーナであった。

その手には、漆黒と銀で飾られた重厚なウォーハンマー〈王家儀礼用破魔鎚・カルミナ〉が握られていた。


「それ以上、お嬢様に触れてみなさい。あなたの命、持ち帰れると思わぬことですわよ」


「邪魔をするな、下賤のメイドがぁッ!」


イゾレーター少佐が憤怒に任せて剣を抜いた。

ギラリと輝く軍制式のレイピアが、カテリーナの胸元へ一直線に伸びる!


「──遅いですわ」


その瞬間、カテリーナは地を滑るようにかわし、ハンマーを肩から振り抜いた!


ゴンッッ!!


金属と金属がぶつかる音ではない。

それはまるで「鐘の音」だった。


イゾレーター少佐の剣が弾き飛ばされ、甲冑の上から叩きつけられた衝撃で、その体が地面に転がった。


「な、なにっ……っ!? メイドの、動き……じゃ……」


「ふふ、言ったでしょう? 我が主は“宮廷魔法七師”シルバーハート様。

そのお傍に立つ私が、ただの掃除婦で済むとでも?」


カテリーナの瞳が鋭く輝いた。


「これが“主命を守る”ということですのよ、愚か者」


ゴォン……!


再び、ハンマーが地面に打ちつけられ、土煙が舞う。

威圧に飲まれた衛兵たちが後ずさる。


パパタローが思わず呟いた。

「す、すげぇ……カテリーナ、マジで強ぇ……!」


「“我が家の誇り”ですからね」

カリンがにっこり笑って、そっと右手を引っ込めた。



「イゾレーター少佐!何をしているのだ!」


騒ぎを聞きつけた男が割って入って来た。


「コントレア中将!」

さらに厳つい男が馬に乗って割って入り、叫んだ!

「この度は我が部下が、とんでもない失態をおこしたことを謝罪する!」

そして、コントレア中将が馬から飛び降り、イゾレーター少佐の胸ぐらを掴んだ。

 (あの娘の右手に印があります。)

 (でかした。少し演じろ。)

剣の鞘でイゾレーター少佐の顔をぶちのめし、大袈裟に倒した。

額から流血している。


ぐわっ


「申し訳ありません!!」

イゾレーター少佐をぶちのめすことで、コントレア中将が空気を変えた。


「ところで、そこの、子供。その目についている物は何だ!取れ!取るんだ!」

コントレア中将が厳しい口調で叫びました。パパタローは少し動揺した。

カテリーナが食い下がろうとするが、

「宮廷魔法七師の一人シルバーハートの直属のメイドといえども、王の命により確認させてもらう!」

「まさか、あの方の印を隠し持っているのではあるまいな!!」

パパタローは首を振りながら、「『あの方』の『印』?」と尋ねた。

「取れないうしろめたい理由でもあるのか!抵抗するなら牢屋にぶち込むぞ!」と叫びながら、パパタローの眼帯を引きちぎった。その瞬間、に右眼球がメッシュで白くなっているのに2人の衛兵が後退りした。


「な、なんだ、その目は…。」


パパタローは説明を始めた。「…網膜褪色の呪い《カラコン病》(めんだいしょくののろい)で、失明してしまいました。目から朽ち果てる死を待ち望むばかりです。この呪いは空気感染する速度が早いので、魔具で呪いを抑制している眼帯を外すなと魔法師様に口酸っぱく言われておりまして…。眼帯を早くつけたいのですが…。」


一歩引き下がった。


「早く眼帯それをつけろ!」と衛兵は眼帯をパパタローに投げつけ、足元に落ちた。パパタローは眼帯を拾い、かがみながら眼帯を付けました。顔をあげて言いました。「早い段階で目を井戸の水で洗い流せば大丈夫だと言われています。私はそれを怠ってしまったもので。」 衛兵はそうかと首を横に振りながら、「怪しい格好をしやがって。今後はばばぁをしっかり見ておくんだぞ!」

「まあ良い!そこの娘!まずはお前を王前へ連れて行く!」


近衛兵がカリンの右手首を掴んだ。


「痛っ……!」


その瞬間、彼の手に触れた肌がざらりと変質し始めた。

見る間に毛が生え、黒く硬い獣毛がぞわぞわと逆立ち、腕は逞しい獣の前脚へと姿を変える。


「な、なんだこの毛深さは……!?」と、コントレア中将が顔をしかめて前を見た。


その視線の先に――


ぱっくりと口を開け、涎を滴らせながら巨大な牙を見せる獣がいた。

まるで夜そのものが形を取ったような黒き影。

四つ脚で立ち、鎖のように蠢く尻尾を持ち、瞳は赤く光り、今まさに衛兵たちを呑み込まんとしていた。


「ぎゃああああっ!!」

「化け物だあああああっ!!」

「黒き影……禁域の獣だ……あれは“セリューの祠”から来た奴だァあああっ!!」

「逃げろ!逃げろぉおおお!!」


「中佐ぁあああ!置いていかないでぇええ!!」


霧が一気に濃くなり、周囲を飲み込む。

声だけが、場違いなほど大きく、霧の向こうで喚き散らされる。


パパタローとカリンには、衛兵たちが虚空に向かって悲鳴を上げているようにしか見えなかった。


「……誰が化け物だっつーの。」

カリンはふんっと鼻を鳴らし、逃げていく衛兵の背中に向かって舌を出し、あかんべーを決めた。


「セリューの祠?」とカテリーナが呟いた。



1枚の葉が、ふわりと空を舞い――

光を反射しながら、ゆっくりと地へと落ちていく。

パパタローとカリンの目の前で、その葉は地に届く寸前、ふっと光を放って――

霧のように、粉となって消えた。


「え……?」


次の瞬間、しゃがみ込んでいた“老婆”の輪郭が揺らぎ始めた。

肩を覆っていたはずの白髪は、艶のある緑の髪へと変わり、

皺に覆われていた肌はみるみる若返り――


パパタローとカリンの目の前に、まったく別の姿が現れた。


柔らかな声とともに微笑むその少女は

誰の目にも、間違いなくパパタローと同じ年頃のエルフの娘であった。


美しい緑髪、整った顔立ち、大地の精霊を思わせるような落ち着いた雰囲気

その瞳の奥に、確かな知性と懐かしさが宿っている。


彼女の緑髪は、陽光を浴びて草原のように輝き、肩まで柔らかく波打っていた。

その瞳は深いエメラルドグリーンで、純真無垢な好奇心が煌めき、見る者の心を奪う。

長く尖った耳は、彼女がエルフであることを静かに告げ、微かに動くたび感情の揺らぎを映し出す。


透き通るように白い肌は滑らかで、健康的な輝きを放ち、頬に差した淡い桃色の紅は彼女の若さと生命力の証。

微笑むと現れる小さなえくぼは、無垢な魅力を一層引き立てていた。


フードの下には、自然を映したような装いが隠されている。

緑と茶色を基調とした軽やかな布地のワンピースは、小さな花や葉の刺繍が揺れて、まるで森の精霊が舞うかのように美しい模様を描いていた。


小さな足元には革製のサンダルが優しく包み、足首を飾る木の実や小鈴のブレスレットは、彼女の動きに合わせてチリンと軽やかな音色を奏でる。

その音は彼女の無邪気さをやさしく彩っていた。


彼女が一歩進み出ると、フードの奥から、頭頂部のあたりから落ちた葉がひらりと舞い落ち、地面に触れる前に粉となって消えた。


彼女はパパタローを見つめそっと微笑んだ。

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