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異世界スイートテイル 〜狐の嫁入りは誰にも見られてはいけない掟なのです(肉球マーク)。  作者: 2番目のインク
第一部:狐嫁と光の祭り・災の神編

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今更なカリン:ザ・ショック in 異世界

肉球の柔らかさとほどよい湿り気、そして指で触れたときのぷにぷに感。まさに至福の体験。これぞ肉球・ザ・フェチのための極上の至福だな。愛らしさと温かさ、この何とも言えぬ重さ…。いや、重い…

はっと目覚めると猫娘?がタイのマッサージのようにパパタローの顔に乗り、ふみふみしていた。時々、コサックダンスぽいものを取り入れたときは、頬が波打った。


「… … …」


向こうで寝ているカリンを起こさないようにムニンが楽しげに長い尻尾でバランスを取りながら顔らしき物を踏みつけている。一夜で猫に戻ったようだ。

「パパタロー、起きてくれないにゃ〜」

ふみふみふみふみ~踏みつけられていおるのに喜ぶパパタローはMだにゃ~。そんな僕はSなのにゃ~♪


「喜んどらんし、歌うな。猫娘!」と少しモゴモゴと叫んだ。何度か足が口に入る。

「ははぁ~ん。タロっちはいままで勘違いをしているにゃ。そして何かよこしまだにゃ。その幼い顔で劣情をいだいちゃだめにゃ。」

「勘違いでよこしまで、劣情って何だよ。なんか俺が変態みたいじゃないか。」

「だって僕は娘じゃないにゃ。対義語だと……えっと、息子にゃ!」


「え”!? 男か!?」


パパタローの思考が、瞬間的に凍りついた。


そんなはずはない。いや、でも確かに言った。言ったよな? 『息子』って。

……いやいや、でも、待てよ。あのしぐさ、あの声、あの甘え方――完全に女子だったろ!?

そもそも、胸。あのふわふわの、谷間っぽいアレ。あれは何だ!? もしかして、毛? 幻覚? 希望?

まさか筋肉!?


ぽかーんと開いた口に、ちょうどいいタイミングで足がずぼっと入った。……うげっ。


眉毛は白くてピンと伸び、口元には細いヒゲが数本。耳はぴくぴく動き、長い尻尾はしなやかに揺れる。

どこからどう見ても猫だが――問題はそこじゃない!


「……え? 男? いや、ウソだろ? ウソって言え……って、言わねぇのかよ!?」


声にならない叫びを飲み込んで、パパタローは静かに目を閉じた。現実逃避の儀である。



はっと正気に戻った。



「お前、眼の前の男がショックがっていることを喜んでるだろ。」

「大体、誤解を与えるような、その胸はなんだ!?」

パパタローが思わず問い詰める。


「もふもふでしょ? それともパパタローは何だと思ったんだにゃ?」

ムニンは耳をピンと立てた。


「くっ……」

言い返せず、パパタローはただ悔しげに顔をしかめた。



「いやー、パパタローの駄々漏れ魔力の顔の上で寝てたら、また獣人になっちゃったにゃ。これは病みつきになりそうだにゃ。」

ムニンが得意げに言う。


「分かった。人の顔の上で人を見下しながら会話するの、やめてくれ」

パパタローが呆れた声で返す。


「あっ、ごめん」

そう言うとムニンはぱっと上を向き、黙り込んだ。


「……」

沈黙が続く。


「あの…ムニンさん、どうされたのですか?」

パパタローの声がかすかに震えた。


「パパタローさんのリクエストで、上を見て黙っているのです」

ムニンはすました顔で答えた。


「そういうのはもういいから。俺は重いから顔から降りろって言ってんの。軽いって言えば軽いけど……あー、そんなのどうでもいい!足が口に入るから!」

パパタローが必死に叫んだ。



「『重い』『重くないって』、どっちなんだにゃ、パパタロー君。しかも、この後、パパタローの涎で汚れた足を洗う身にもなってみてよ」

ムニンはむっとした顔でそう言った。


「ムニン君、寝てる男の顔に乗ってる時点でおかしいと思いなさいよ。っていうか、その前に、御前の足は本当に綺麗なんだろうな?」

パパタローも負けじとむっとした表情で返す。


「歩く時は素足だからね。てへっ」

ムニンは猫ポーズで舌をペロリと出し、無邪気に笑った。


「何が『てへっ』だよ!ごまかすな!口の中が砂っぽいっていうか、じゃりじゃりなんだよ!」

パパタローは舌を出して抗議した。


「変なもの踏んでないだろうな、ホントに!」

パパタローの声に、ムニンの耳がピンと立った。


「そういえば…」

パパタローの声に、ムニンの耳がピンと立った。


「やっぱり、なにか踏んだのか!」

パパタローが疑念を隠せない。


「あ! やっぱいい、聞きたくない聞きたくない!」

パパタローは両手で耳をパタパタさせながら、あ~あ~と叫んだ。


「違うにゃ! ちゃんと聞いてよ! 顔の上で寝てたのはね、パパタローが悪夢に襲われないように守ってたんだにゃ。お陰で幸せな目覚めだったでしょ? まぁ、起きなかったら、こないだゲットした悪夢を植え付けようと思ってたんだけどにゃ! うなされて起きるのも一興だにゃ」

ムニンは自慢げに言った。


「夢食いは僕の得意技だからねっ! 特に悪夢はねっ!」

ムニンはキックのポーズを取りながら紛らわしい胸を張った。


「結局、お前の自己満足じゃねぇか~~!」

パパタローは呆れつつも、ムニンの言動に笑いをこらえきれなかった。



コホン、と一つ咳払い。

「気持ちを切り替えて、ムニンくん、質問だよ」

「何だい? タロっち」


「女カテゴライズの猫族の得意技ってなんだ?」

「さぁ? 会ったことないからなぁ……いい夢を見せてくれるんだっけ? それとも悪夢だったっけ?」


「会ったことないんだ……結婚とかどうするんだ?」

「僕は獣人だから、人間でも恋愛対象さ。僕は愛に従順なんだにゃ」


「あ、そ」



「で、阿呆な話をしている間に……もう4時かぁ……寒っ、寒いわ~。」

パパタローは白い息を吐きながらつぶやいた。


「おはようございます、パパタローさん」

柔らかな声が背後から響く。


「おはようございます、カテリーナさん。こんな早く、どうされたのですか?」

パパタローは振り返って尋ねる。


「ムニンと仲良くなられたみたいで、なかなかお部屋に入れませんでしたわ」

カテリーナは微笑みを浮かべながら答えた。


「それはそうと、外にアシュレさんのお迎えが参っております」


「こんな早朝に、しかも寒い中、本当に申し訳ないですね」

パパタローは少し気まずそうに言った。


「いえいえ、そう思いまして、これをお使いくださいませ」

カテリーナは差し出すように、作業用のつなぎともふもふのジャケット、手袋、帽子を渡した。


「ありがとうございます。これは暖かそうですね。早速着ます」

パパタローは感謝しつつ袖を通した。


「あったけぇ~」

思わず安堵の声を漏らす。


「あれ、その猫耳の方は?」

ムニンがニヤリと笑いながら、カテリーナをじっと見つめた。


「! やっぱりムニンちゃんですわね!? パパタローさんにまた男にしてもらったのですの? 夜のうちにこんなに立派になられて…」


「にゃ!」


「な、なんだか誤解を招く発言は控えてくださいますか、カテリーナさんっ」


「そういうつもりじゃありませんわ!」

カテリーナは真っ赤な頬をそらしながら慌てて答えた。


「というか、ムニン」

「何だい?パパタローにゃ」

「俺の顔の上で寝ないと、獣人化できないのか?」

「それはね……できるといえばできるにゃ。できないといえばできないにゃ」

「なんだそりゃ」

「というのも、今の獣人化はパパタローの魔力で強引に成立してるのにゃ。まあ、つまり僕の能力が開花すれば、自分の意志で獣人化できるってことにゃ」

「そうか、そうか」


この後、カテリーナとムニンはパパタローの存在をそっちのけで女子?談義*に花を咲かせていた。

*女子?談義の一部:

「そういえばムニンちゃん、最近の流行の猫耳アレンジってどう思うの?」

ムニンは首をかしげながらも、得意げに答えた。

「やっぱり、耳の角度と毛の柔らかさが命にゃ。動きに合わせてぴょこぴょこ動くのが可愛いにゃ〜」


カテリーナはにこりと微笑み、

「私は帽子の下に忍ばせる小さな猫耳ピンが好きですわ。目立ちすぎず、さりげないのが上品ですのよ」


「おお、それはいいにゃ!さりげなさが一番にゃ」

ムニンはしっぽをゆらゆら振りながら言った。


「そういえば、女子力アップの秘訣ってなんだと思います?」カテリーナが目を輝かせて尋ねる。

ムニンはちょっと考えてから、

「やっぱり、毎日のお手入れにゃ。毛づくろいならぬ、自分磨きにゃね。あと、愛されオーラをまとってると自然と皆が寄ってくるにゃ」


「なるほど……愛されオーラかぁ。私も頑張らなくちゃ」

カテリーナは少し照れながら答えた。


「それと、やっぱりおしゃべりが上手だといいにゃ。話題が豊富だと、みんなが楽しくなるからにゃ〜」

ムニンは満足げに笑った。


「おしゃべり上手……それは私も見習いたいですわ」


二人は、そんな小さな秘密を共有しながら、明け方の冷たい空気の中で楽しげに話し続けていた。



…この間に、顔を洗いに行こうと思った。

「ふぅ……」と深く息を吐く。

「顔は5歳でも、中身はおっさんだなぁ」

「7歳くらいには成長したかな……いや、まだ変わらないかもしれない」


鏡の前で顎に触れると、すべすべとした肌の感触に若さを感じ取った。

冷たい水が顔に触れると、肌の弾きを実感し、拭いたタオルを肩にかけて外へと出る。


空はまだ暗く、吐く息は白い。

満天の星が煌めき、あまりの美しさに心が震え、同時にどこか恐怖にも似た感覚を覚えた。



「いつ見ても広いですね」

「ほんとにゃ。広いにゃー」


女子談義を終えたのか、カテリーナとムニンが静かに外へと姿を現した。

3人で満天の星空を見上げていると、やがて漆黒の翼が夜空を舞い降りてきた。

その翼は次第にパパタローたちの頭上へと迫り、地面に降り立つとともに、細かな埃が舞い上がった。


「キィィン!」と鋭く響きつつも、どこか優雅で風を切るような鳴き声をあげて――

馬の体に鷲のような頭と翼を持つ、神秘的な生き物――アシュレさんが、静かにその姿を現したのだった。


「パパタローさん、お早うございます。」


驚きつつもパパタローは答えた。


「アシュレさん、おはようございます。これは…?」


アシュレさんはその動物の顔を優しく撫でながら説明を始めた。


「ここで育てているのはヒッポグリフです。絶滅寸前でしたが、ヴィクター様が絶滅危惧種のヒッポグリフをこの地で保護し、育てております。人間に育てられてしまったため野生には戻れませんが、それでも意義のあることです。


というわけで、パパタローさんにはこの子たちのお世話をお願いしたいのです。


早速ですが、背中に乗って、手綱たづなを取ってください。」とアシュレさんは言った。



一人では心細いと思ったパパタローは、とっさにムニンに声をかけた。


「ムニンも来い。一緒に能力の開花だ!」


ムニンは満更でもなさそうに答える。


「いいのかにゃぁ〜」


「パパタローは僕の価値が分かっているにゃ」とムニンがニンマリと笑った。


(そうそう、顔の上で寝られてたまるか)


アシュレさんが微笑みながら言った。


「まぁ、問題ないでしょう。仲間はたくさんいても困りませんから」


「OKが出たぞ」とパパタローはムニンの猫耳の頭を荒っぽく撫でて言った。


「よろしくな!」


「ちょっと!猫毛が乱れるにゃ!」とムニンは逃げるように抗議した。


カテリーナさんとアシュレさんはそれを見て笑っていた。


「牧場までは40キロほど先です。道はある程度整備されていますが、馬車だと5時間かかります。ヒッポグリフなら30分程度ですよ」とアシュレさん。


「へぇ……」 


時速80キロくらいか、とパパタローはおそるおそる手綱を掴み、背中に乗った。


ムニンは軽々とパパタローの後ろに乗る。


羽はすべすべで心地よく、その中は温かかった。


「これは……眠くなるにゃ」とムニンは丸くなり、羽の中に身を沈めた。


「じゃあ、行ってきます!」


「パパタローさん、気をつけて!」


「カリンによろしく伝えてください〜」


「分かりました〜」


「行ってくるにゃぁ〜」



「では!現地でお会いしましょう。」とアシュレさんが告げると、ヒッポグリフのお尻を軽くたたいた。


その瞬間、ヒッポグリフは軽やかに跳躍し、一気に上空へと加速して飛び立った。加速時には息が詰まり、パパタローは必死に呼吸をこらえたが、水平飛行になると自然に呼吸ができるようになった。


ふと見下ろすと、手を振るカテリーナの姿はすぐに小さくなり、やがて視界から消え去った。


地平線には、今まさに太陽が頭をのぞかせようとしている、濃厚なオレンジ色の光が広がっていた。


陽の光とともに、大地が目覚めるように風が吹き抜け、葉が揺れて夜露を払い落とす。


風が吹くたびに、葉の一滴一滴がキラキラと煌めき、世界が輝きを増していった。


「眩しい」とパパタローは手を翳しながら、ゆっくりと目を細めた。



※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ 

カリンカリンカリン


「本当に機械音みたいに鳴くね、ノリシオは。」


カリンは肩にノリシオを乗せ、のり塩ポテチを食べさせながら、上に高く掲げた輪っかをくぐらせる特訓を続けていた。


「よし、いけぇ~!」


ヒョエーッ!


その隣で、赤い毛並みが艶やかに輝く従魔のノリシオが、機械音のような「キョエー、キョエー」という声を上げながら、足裏に魔法陣を煌めかせてふわりと宙に浮いていた。


そこへ爽やかな風のようにクラウスが現れた。


「お待たせしました、カリンさん……? いったい何をしているのですか?」


「大道芸で生きていこうかと思いまして、ノリシオを調教中です」


「従魔に大道芸ですか? そんなことしなくても、カリンさんなら剣技で食べていけますよ。戦技院もありますし、従魔がいるので食うに困ることはありません」


「戦技院……?」


「はい。戦技院は剣術や魔法、あらゆる戦いの技術を学ぶ施設で、冒険者や傭兵、騎士たちが技を磨く場です。登録すれば、仕事の紹介も受けられ、食べていくための支援が得られますよ」

「へぇ……そんなのがあるんだ」


「だから、無理に大道芸で食べていこうなんて思わなくていいんです」


「クラウスさん、やだー、そんなファンタジーみたいなこと言わないでぇ」


「ファンタジー……ですか?」


「……」


「「え~~! 異世界にきちゃった!!」」


突然のご乱心に、クラウスはすぐさまカテリーナを呼び、カリンの看病を申し出た。


その後、カリンはこの世界が本当に異世界であることを現実として受け入れたことで、精神的なショックを深く負い、しばらくベッドに伏せていた。


彼女は食欲を失い、言葉少なに。何を見ても、ぼんやりと反応が鈍くなっていく。


そんなカリンに、カテリーナはそっと肩に手を置き、優しく語りかけた。


すると、少しずつ目を合わせて微かな頷きを返す日が増えてきた。


やがて、彼女はカテリーナにぴったりと寄り添い、離れられない子になってしまった。


「行っちゃやだ、異世界が怖いの」


「あら、カリンさん……わたくしがついておりますから、どうかご安心くださいませ」

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