良物の対価
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グラスラビットは全く強くないことが分かり、それぞれで十匹ほど倒したところで私たちは一度街道の側まで戻ることにした。
「何か手に入った?」
「肉、足、耳」
「え、耳なんて落としたんだ」
私の方は足が一個ある以外全て肉だったのに。もしかしたらヒューマンは猫よりも運が悪いのかもしれない。私は見た目の寂しいインベントリをそっと閉じ、これまでに獲得したスキルと称号を確認することにした。
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スキル【足さばき】
敵の単調な攻撃を避けられる者が持つスキル。敵の攻撃を躱しやすくなる。俊敏値が小上昇。
スキル【気配察知】
敵意を持つ生物に視覚以外で気づくことのできた者が持つスキル。敵性生物の接近に気づけるようになる。
称号【初めの一歩】
この世界に降り立って最初の一歩目を踏み出した者に贈られる称号。
称号【旅するヒヨコ】
駆け出しの旅人に贈られる称号。
称号【生来の命知らず】
ステータスに大きな不足のある状態で初戦闘に挑んだものに与えられる称号。ステータスが不十分なとき、攻撃が上昇、防御が減少。
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思ったよりも色々手に入っていた。
特に最後の称号は大きい。攻撃が上がるのは嬉しいしそもそも防御は伸ばすつもりがなかったからデメリットも気にならない。これを獲得できたのは多分メインジョブを設定していなかったからだろう。そう思うと私のステータスも悪いことばかりではないような気がした。
街道の近くはモンスターのレベルが低いようで、今もたくさんのプレイヤーがラビット討伐に奔走している。苦戦するような声は重戦士とか大楯使いとかのものだろう。どっしりとした装備で飛び回る小動物を攻撃するのはきっと難しい。
屋台のサンドイッチを片手に学校の話で盛り上がっていたところで、私とニィナの間を一筋の風が通り抜けていった。ニィナの藍色の髪がさらりと流れ、それを見て装備のことを思い出した。
「茜が来るまでまだ時間があるからもう少し討伐していこう。思い通りに動けるように練習も必要だし」
「分かった」
装備にはお金がかかる。
良いものにはそれ相応の対価が必要なのだ。
兎のついでに採取もしようということで私たちは草丈の高いエリアへ向かった。そこに薬草などが散生しているという情報をギルドで得ていた。
「うわ、かなり茂ってるね」
「探すの大変」
その上ちょうどこの辺りは雲の影が差していて、暗い足元を探すのは大変そうだった。
ゴウッと強い風が吹いて千切れた草が飛んだ。
結局は大して時間が経たないうちに茜からログインしたというメッセージが届き、私とニィナは採取開始から意外と短時間で街へ戻ることになった。
しかしその割には成果は悪くない。結構な種類の植物が植わっていたし、その中には希少なものもあったようだった。私たち二人の雀の涙ほどの知識による同定で【植物識別】が手に入ったほどなのだから。
ただ、雲が次第に厚くなってきたせいで後半はあまり採れなかった。
「ルーティ」
「待って、これだけ」
帰り際に見つけた魔力草──葉っぱにある黄色の星印が特徴的で、【植物識別】によれば希少だそうだ──を採ろうと私は腰をかがめて右手を伸ばす。
この欲張りが良くなかったのだろう。私の【気配察知】が発動して背後に何かを感じた瞬間、屈んでいた私の背中すれすれを灰色の何かが跳んでいった。
すぐに起き上がって右腰の短剣を抜く。
「大丈夫?」
「うん。ギリギリだったけど当たってはいない。敵は?」
「あれ」
じっと動かないニィナの視線の先を辿る。
灰色のオオカミが一匹、唸り声を上げて私たちを睨みつけていた。
スキルのところの +, − はもしかしたら後で数値を加えるかもしれません。調整が難しいので加えない可能性の方が高そうですが......。
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