冒険者ギルド
そこそこ描写にこだわったので伝わると良いんですが......(なお技量)
「大きいな」
私は思わず呟いた。
側に立って一番上を見ようすると太陽光が眩しくて手を翳さなければとても目を開けていられない。そのくらいの大きさだ。
冒険者ギルドは随分と立派な建物だった。窓口や食事処――酒場とも言う――がある本館は地上三階のレンガ造りで体育館くらいの大きさがあり、隣の区画には石造りの史料庫。加えて案内板によれば奥に解体場があるらしかった。
建物に扉はなく外とオープンにつながっていて、中からは楽しげな声がガヤガヤと聞こえて来る。
剣のマークが描かれた大きな看板の下を通って中に入ると、登録窓口の方にはかなりの数のプレイヤーがいた。二陣の人だということは見た目で分かった。
一番人が少ないところに並ぶ。
「当ギルドにようこそお越しくださいました。人も多いことですし早速始めますね」
少しして私の番になって、担当の人が鈍色の金属プレートを私の目の前に置いた。右手でそれを指しながら彼は説明を続ける。
「これが冒険者証です。依頼を受けたり解体場を利用したりするのに必要になります。あと、いくつかのお店で割引が効きます」
それは便利だ。しかも彼によれば失くした時は無料で再発行できるのだという。普段の自分の部屋を思い出して私はほっと息を漏らした。
「これを受け取るとあなたは自動的に冒険者ギルドに登録されて加盟したことになります。よろしいですね?」
私は思いっきり身を乗り出して「はい」と答えた。それはもう、彼が少し引くほどに。
ファンタジーの代名詞とも言える「ギルドカード」をぶら下げられて、宙を舞うような気持ちでそれしか見えなくなっていたのだ。
私が触れるとプレートは一瞬だけ黄色い光を発して、またすぐに灰色の金属に戻った。私のプレイヤー名といくつかの数字が刻印されたのだという。
この部屋の明かりの位置が悪いのか、プレートの一部だけが光の反射で輝いて私の名前はどうにも翳って見えなかった。
冒険者証の使い方の説明をいくらか受けた後、依頼ボードの隣に寄りかかっていたニィナと合流した。現実の三十分はこちらで一時間半になるから、茜が合流するまでにはもう一時間以上あるということになる。話し合った結果、一番レベルが低い「北の平原」で色々試してみることにした。
「パーティ申請送った」
「今受けるからちょっと待って」
パーティというのはプレイヤー複数人を一まとまりにして考えるようなもので、パーティ内のプレイヤーは経験値もドロップアイテムも共有になる。モンスターの討伐にどれだけ貢献したかを踏まえた上でパーティ内のプレイヤーに割り当てるということだ。
せっかくなので依頼も受けようということになり、二人して手元のパネルに表示された依頼一覧を見る。スクロールで下がっていくとグラスラビットの討伐というのがあった。
「グラスって?」
「草のこと」
玻璃細工のように透き通った綺麗な兎はぴょんと背を向けて去っていき、代わりに何の変哲もない野良兎がわらわらと私の前に湧き出てきたのだった。
「北の平原」については名前を変更するかもしれません。
行けるワールドがこのあと広がって行った時に他の平原と区別しづらいのは嫌なので......
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