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称号と強力な助っ人

主人公とリアーナさんの会話が久しぶりで、話し方が以前と変わっているかもしれません。変なところはご指摘いただけると嬉しいです。


(10/29)

【古書の解読者I】の内容を若干変更。


(12/13)

第二回イベントに関する記述を変更。「今朝詳細が発表」から「概要が発表」に。


あと、前に書いたかもしれませんが主人公(ルーティ)が呼ぶ「アル」は「アルジーン」の略称です。

 朝、ぼんやりと微睡(まどろ)みながらスマホのアラームを止めようとして、私はそこに表示されている曜日に気が付いた。


「土曜日じゃん」


 しかも今日は部活がないし、どこかから助っ人に呼ばれてもいない。

 眠気はすぐさま吹き飛んだ。


 ランニングをして、朝食を食べ、いつも通り仕事に向かう両親を見送った私は、藍奈と一緒に家の掃除を済ませてからログインをした。ゲームの中はまだ夜中で、宿屋のベッドから窓の外を見ると家々の屋根の際まで星が散りばめられていた。

 そこで軽快な通知音が郵便箱(メッセージボックス)にメッセージが来ていることを教えてくれた。差出人はアルで、わずか五分前のことだった。


「『一緒にどう?』か……決まった予定もないし、招かれようかな」


 私はする必要はないと知りながらも抜き足差し足で宿屋を出て、広場に向かって星下の静かな街並みを歩き、到着したところで意外と人が多いことに驚いた。こっちは夜でもあっちは午前なのだから、当たり前と言えば当たり前だけど。

 街中の小路と違って灯りも十分にあり、私はすぐに噴水のベンチに座るアルを見つけることができた。

 彼女の手招きに応じて私もベンチに腰掛ける。


「待たせてごめん」

「ううん、来たばっかりだよ。リーちゃんもまだだしね」


 そう言われて私は周囲を見まわした。確かにリアーナさんはまだ来ていなかったし、それにアルが私と同じように誘っていたらしいニィナの姿もない。そっちについて尋ねると、アルは肩を落として「断られちゃった」と言った。


「進行中のクエストがあるんだって。なんか順調みたいだよ?」

「へえ」

「ルーティはどう? どんな感じ?」


 私はベンチに座ったままで自分の格好を見下ろした。それから所持金と自分の持っているスキルを見て、少しばかり惨めな気持ちになった。


「称号はいくつか手に入れたんだけど」


 この間の図書館のクエストでもらったのをアルに見せる。


────

称号【図書館の友人】

図書館の司書と一定以上の友好関係に至った者に贈られる称号。司書が積極的に手伝いや情報提供をしてくれるようになる。


称号【図書館の救済者】

クエスト【図書館の盗人】を最善の状態でクリアした者に贈られる称号。第一の街プリマの図書館の第三書庫までの本が閲覧できるようになり、また引退した例の老司書の家に招かれて本を閲覧できるようになる。


称号【図書館の御使い】

女神アレティアの祝福を得た状態で図書館を十分利用し、また図書館に十分貢献した者に贈られる称号。全ての街の図書館で特別な待遇を受けられるようになる。


称号【子どもたちの憧れ】

子どもを助けたり救ったりして子どもたちの憧れの人物になった者に贈られる称号。子どもたちからの好感度が大きく上昇する。


称号【古書の解読者Ⅰ】

古書をいくらか読んだ者に贈られる称号。古い記述の閲覧制限が一部解除される。

────


「すごいね!」

「そう?」

「うん! 称号って普通はこんなに手に入らないし、デフォルトのやつ以外は持ってない人も多いくらいなんだよ?! しかも救済者とか御使いとか、レアそうなのもあるし。あ、このⅠって付いてるのはⅡとかがあるのかな!?」


 興奮気味にアルが言う。しかしそこで彼女は「でも──」と心配そうな表情で続けた。


「スキルとかは手に入ってないんだね」

「うん」

「大丈夫? イベントには出たい、って学校で言ってなかったっけ」

「言った」


 そろそろなのではと予想されていた第二回イベント。その概要が今朝ちょうど発表されて時間加速下でのバトルロワイヤルだということが明らかになった。詳細はまだだけど、どうも一陣プレイヤーも二陣プレイヤーもごた混ぜになるっぽい。

 端的に言って──


「何一つ大丈夫じゃない」


 いまだにほとんど初期のままの装備、それを買うこともできない貧乏具合、数が少なすぎるスキル⋯⋯大丈夫じゃない理由は色々とあるけれど、一番の問題は陰陽師に関する情報が全然ないことだった。おかげでメインジョブが空欄のままだし、サブジョブの【短剣使い】もレベルを上げづらい。

 そういう現状を伝えるとアルは「あはは」と苦い笑いを浮かべた。


「それでバトロワは難しいかなぁ。でも、イベントに出ないっていう選択肢はないんだよね?」

「イベントでしか会えない何かがあるかもしれないからね」

「うーん」


 二人で唸っていると聞き覚えのある声が前方から飛んできた。


「お二人とも悩んでいるみたいですけど、何かあったんですか?」

「あ、リーちゃん!」


 アルがベンチから勢いよく立ち上がってリアーナさんに抱きつき、私も立って「こんばんは」と会釈をする。そして続けざまに私が「困り事」を説明すると、彼女は心底不思議そうに首をかしげた。


「陰陽師でしたらβの時に見ましたし、更に言えば彼女とは今もフレンドですけど、メインジョブは普通に持ってましたよ、カグヤヒメさん」

「え、あの人陰陽師だったの!? 槍使い派生の薙刀だと思ってた!」


 そのカグヤヒメさん、という人はどうやらアルの知っているプレイヤーらしかった。


「ジョブに魔法系を入れなければ良いみたいで。序盤に物理のレベルを上げていたらああなったらしいですけど、れっきとした陰陽師ですよ」


 アルが空を見上げながら「えー」と息を吐いている。

 私はそれを放って、それなら物理系のジョブを取ればイベントも陰陽師も目指せるのかとリアーナさんに確認した。


「あと一ヶ月弱ありますし、ステータスについては大丈夫だと思いますよ」

「良かった。ありがとうございます」


 これなら【短剣使い】をメインジョブにしてレベル上げとスキル獲得に励めば良さそう。サブはリーチが長いのを何か選んで⋯⋯。

 そんなふうにこれからイベントまでにしておくべきことを考えていると、しばらく突っ立っていたアルが私の方に歩いてきて「力になれなくてごめん」と謝ったあと、突然「そうだ!」と大声を上げた。


「今日はルーティの手伝いをして、それで埋め合わせにする!」

「え」

「だからリーちゃん、申し訳ないんだけどさ⋯⋯」

「ふふ、私も手伝いますよ。ルーティさんにはクランのネーム決めでお世話になりましたし」

「じゃあ、短剣のレベル上げにいい場所を調べないと!」

「でしたら確かあそこが⋯⋯」


 トッププレイヤーはさすがに持っている情報も多くて、私を抜きにして次々と予定が決まっていく。


「え、いや、そこまでのことじゃ」

「いいの! 今日は一緒に遊ぶっていうだけで、何をするかは決まってなかったから!」

「あ、そう⋯⋯」


 私は頼もしいと思いながらもその自由奔放さに深くため息をついた。



称号についての詳しい会話はどこかで入れたいです。

次話でリアーナさんを交えてになる可能性大。

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