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クエスト【図書館の盗人】

少しずつタイトル回収に近づいてきております。

 なんとなく館内がオレンジ色になった気がした頃、突然に自分の手元がうす黄色に光った。

 驚いて本を手から放してしまったのを地面に着くギリギリで掴み、私は視界の端から端まで素早く視線を走らせる。何も見当たらずに背後をふり返ったところで閉館を知らせる鐘の音が鳴った。

 そういえば熱中しすぎる人のために本が光るようになっているんだった。カウンターで説明を受けていたのに。


「……恥ずかし」


 私はもう一度辺りを見て息を吐いた。


 本を棚に戻して出入口に向かう。本の貸出はしていないらしいから、続きを読むにはまた明日来ないといけない。ちょっと残念だ。今日はあまり読めなかったから。

 というのも、実は最初に手に取った本が全く判読できなかったのだ。それで困っていたら待ち構えていたかのようなタイミングで司書さんが来て、古書を読むにはスキルが必要なのだと教えてくれた(技能じゃなくてゲームシステム的なスキルがいるらしい)。それを小一時間くらい司書さんから習って修得するとようやく私の知っているミミズになった。万葉仮名だったのには驚いたけども。

 まだレベル1だから、これを上げるとだんだん現代語に近づいていくのだと思う。そうでないと誰も読めないし。


「まあ、私はこれでも読めるからレベル上げはしないけどね」


 スキルレベルは古書を読むんじゃなくて古語を知ってる人から教えてもらわないと上がらないらしい。読みながらできるならまだしも全く別に時間を作らないといけないのなら、現状でもう読めている私にとってはただの時間の無駄だった。


 アレティアさんの像が立っているところまで戻ってくると、カウンターの内側が何やら少し騒がしかった。閉館する間際だというのに入ってきた時よりも多くの司書さんたちがいて、慌ただしく動き回りながら書類をめくったり何か相談したりしている。

 事情が気になった私は出口に向かっていたのをやめてカウンター近くの一人に話かけた。

 小柄なその人の肩を叩くと、アワアワと目を回していた少女の顔がこちらを向いた。


「何かありましたか」

「あっ、ルーティさん! ちょうど良いところにいらっしゃいました! 実はですね、お恥ずかしい限りなのですが本を盗まれてしまいまして」

「盗難ですか」


 領主が持っている図書館だし、そういう面もしっかり対策されていると思っていたのだけど。


「ここ最近になって突然始まって、それなのにもう何冊も奪われてしまっているんです。しかも全て古書なので金銭的にも史料的にも損失が大きく……ルーティさんは何かご存知ないですか?」


 彼女のくりくりとした両目が私を見上げる。

 古書――さっきまで読んでたし、もしかして。


「もしかして私って容疑者の扱いですか?」

「そんなわけないですよ! ルーティさんは女神様に認められた方なんですから!」

「なら良かった。でもそうなると私は特に何も」

「うっ、そうですか……」


 顔を伏せて見るからに意気消沈する彼女に、これも女神様に与えられた仕事かと思った私は一つの提案をした。


「私も手伝いましょうか」

「良いんですか!」

「はい。今日はたくさんお世話になったので」

「ありがとうございます!」


 彼女の目が宝石のように輝いて私の顔を見上げたと同時、私の手元に見覚えのあるハチミツ色のパネルが現れた。そこに書かれたクエストについての説明を読んで Yes をタップする。

 そうするとクエスト【図書館の盗人】が始まって、まずは図書館の司書さんたちに話を聞くように指示が与えられた。


「それじゃあルーティさん、詳しいことをお教えしますのでこちらに!」


 さっきまでとは一転して元気になった彼女によって、私はカウンターを通り過ぎた先の司書室へと案内された。領主が持っている図書館に相応しい、人が三十人は入るくらいの大きさの部屋で、調度品にも深い色合いの木を中心に高級感や洗練された趣があった。

 少し……いや、かなり欲しいかもしれない。今度聞いてみよう。


「これが今までに盗まれた本のリストです」


 内装に夢中になっていた私に彼女は一枚の紙を手渡してきた。


「全部で五冊です」

「思っていたより多い……これは薬草と歴史と、それから地誌の本か」


 取り留めのない感じだ。


「これらはいつぐらいに?」

「えっとですね――」


 私たちは近くにあったテーブルに腰を落ち着けて、閉館になった後の図書館で情報共有に勤しんだ。



評価・ブックマーク等、大変励みになっております。ありがとうございます。

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