挑戦状
こういう展開が好きなんです......
街の門が見えてきたところで私はさっきの話の引っかかったところを思い出した。
「ねえアル、さっき言ってたクランについてだけど」
「あれ、もしかしてルーティはアプデ情報を見てないの?」
彼女は首を傾げた。
うん、実を言うと私はまだあれを読んでいない。ちらっと見たが文量が多すぎて諦めたのだ。紙ならまだしも電子であれを読むのは私には厳しい。
その前のアップデートは何とか読み切ったがその時にはクランについて何も言及されていなかったように思う。
「今はまだだけどね、近くクランシステムを追加するって記載があったの。あ、クランは流石に分かるよね?」
いわゆる「ギルド」のことだろう。ただこのゲームにはギルドというものが別であるから、それでクランという名称なのだと思う。
「そうそう、それでね。βで一緒だった人からクランに入らないかって言われて、私とかリーちゃんとかβからの付き合いの人が集まったの」
「強そう」
「ニィナに同意かなぁ。β勢の集まりって」
「β以外の人ももちろんいるよ。これから勧誘もするし」
例えばね、と彼女が話し始めた内容はかなり興味深いものだった。
どうやら彼女のクランは攻略を主とするようで入団希望者には小さいながらも試験を課すのだそうだ。もちろん人によって戦闘以外にも様々な特技があるからそこをアピールすれば落ちることは無い。
落とさないなら意味があるのかと思ったが、どうやらこの試験はロールプレイの意味が強いらしい。リアーナさんが説明してくれた。
「騎士団っぽいものを追求していて、そのために色々考えているんですよ。まあ、見た目が騎士っぽいのは団長とアルジーンさんだけですけどね」
私はアルの格好を見た。確かに騎士っぽい見た目だ。
「まあ見た目の話は置いといてっと」
アルはトンと足を止めてくるりとこちらへ体を翻した。
「実は私たちβメンバーって、一人につき二人までなら試験なしで勧誘できるんだよね。もちろん実力はないといけないけどっ」
背中の大剣を地面に突き立て、リアーナさんと横に並んだ彼女は私とニィナを正面から見据える。
「二人はうちらのギルドに入るつもりは無い?」
ふっと風が止んだ。
私はニィナと視線を交わす。これについては今日の昼にもう決めてあった。アルと一緒に遊ぶのか、ひいては三人一緒で遊ぶのか、それとも──別々か。
アルは普段通りに微笑んでこちらを見ている。彼女自身、尋ねたつもりでは無かったのだろう。私たちがどういう返事をするか予想して、自分の中ではもう結論を出していたに違いない。
だから私とニィナが答えを伝えた時、彼女は激しくうろたえた。
「うぇっ、なんで?!」
どうやら相当な衝撃だったようで、彼女は立てていた剣を蹴とばした上に地面から抜けたそれを足の甲に落としている。「いっったい!」と高い声が響き、大剣がグワングワンと音を立てて回った。
うん、確かにアルやニィナとプレイするのは楽しいに違いない。これまで十年以上も一緒に遊んできたのだし、それは確信している。
「だから別に、ゲーム内で集まって遊ぼうっていうのは良いと思うし、私もそうしたいんだけどね」
私はそこで言葉を止め、一度大きく息を吸う。こんなことを言うのは初めだなと思いながらゆっくりそれを吐いた。
「たまには競ってみるのも良いでしょ」
彼女は目を瞬いた。次いでさっきまでの悲しそうな顔から一転して口角を上げる。
「ニィナも同じ?」
「ん。首を洗って待ってるといい」
いよいよ笑みが大きくなる。
彼女は地面に落ちていた大剣を右手で易々と持ち上げると、それを私たちの方へと突きつけた。
「いいよ。楽しみにしてる」
次回は 09/01 と言いたいところですが、ストックが少ないので少し後になるかもしれません。




