第96話 クロのその後
ミルーのとある中華ソバ屋。カウンターに席を並べて中華そばをすするヌマルルとマイアの姿があった。
店の中はそれなりに混雑し、数人のお客さんが外に列を作っている。
マ「ずるずる。それでクロのその後はどうなったんですか、ヌマルルさん?」
同じく中華そばを食べながらヌマルルも答える。
ヌ「ずるー。それがだにゃ、結論からいうと最長1年の懲役ということになったにゃ。態度や働いた内容いかんによって早まることもあるかもしれにゃいにゃ。
あー、それとヌマルルにはもう敬語はいいにゃよ?一緒に命を賭して戦った仲間同士、気軽に呼び捨ててくれにゃ。」
マ「そうですか、なんだか改まってしまいますね。それでは。
ヌマルル、その期間は長いのか短いのかわからないんだけどどうだったの?ずびっ。」
ヌ「とてもとても短いそうにゃ。冒険者に手を上げた犯罪者はそのままお尋ね者になってもおかしくないにゃ。冒険者はお金になるものを持ち歩くし、相応の凶悪性が見られると判断して然りなんにゃね。ずるずる。
ただ、今回はシトロが、ヌマルルの友人だということで先手を取って動いてくれたにゃ。減刑の嘆願書を携え、ヌマルルと一緒に法務機関へ直談判に行ってくれたのにゃ。
正直これがなければ5年の禁固は覚悟しなければなかったんにゃろうね。
唯一の被害者が軽い罰を強く求めているし、強盗目的でもない。よって、法務機関も大きな措置には出られなかったんだにゃ。1年というのはこの犯罪に対する最低限の刑罰という話だにゃ。ずびっ。」
向かいのカウンターから振り向きざまにメメが声をかける。
メ「良かったじゃない。あなたたちシトロには感謝してもしきれないわね。そういえばヌマルルはクロにはよく会っているの?」
ヌ「約束通り毎日のように通っているにゃよ。ただちょっと気になることがあるんにゃ…それが」
そこへ中華そば店主がいかつい顔でヌマルルたちをにらみつける。
マ「ちょっと話をし過ぎたね。お客さんも待っているし、早く食べて場所を変えようか。メメも急いでね。ずるずる。」
ところ変えて、今度は大通りに面したお洒落なカフェテラス。
メメが早速話をヌマルルに投げる。
メ「で、気になることがあるって何、ヌマルル?クロが落ち込んだり、ホームシックになったりしているのかしら?」
ヌ「いやー、そういうわけではないんだがにゃあ。むしろ絶好調かも。
実はクロったら最近ヌマルルのことが『好き』だったり『会えて嬉しい』なんてことを恥ずかしげもなく言うんにゃよ。」
マ「ん? というと以前はそうじゃなかったのかな?」
ヌ「前はどちらかというともっとクールかつ孤高の存在で、そんな直接的な好意を前に出すような獣人じゃなかったのにゃ。今はヌマルルは恥ずかしくてやめてほしいほど言ってくるんにゃよ。」
つまんなそうにのけぞりながらストローをくわえ、遊ばせるメメ。
メ「なーんだ、惚気話じゃない。犬も食わないわよ。」
マ「それは夫婦喧嘩でしょ。どちらにせよ仲のいいことでよかったじゃない。」
ヌ「仲が良すぎるのも怖いもんにゃよ。…クロのやつ、まさか本気じゃないにゃよね??ヌマルルにはその気はないんにゃよ。
今のクロにはどういう答えが返ってくるかわからないから、恐ろしくて聞けないにゃあ…。」
マ「それはどうにも。」
メ「きいてみろとしか。私たちクロじゃあないし。」
ヌ「そんにゃあー。どうにかしてくれにゃあー。」
ヌマルルの悩み。それは危ない橋を渡ってみないと尽きないものだった。




