第95話 晴れ渡る空 その3
空き地にて。アロの道具が無事出揃い、なんとか爆発までの期限に首輪を取り外す手筈が整った。
とうとうこれから危険が伴う首輪取り外しの作業に取りかかる。
ア「ダフダフさんの防御円陣も用意できました。では行きますよ。いいですね?」
ク「今更研究所に充電に戻ろうにも、もう時間がないわ。どのみち進退極まったのよ。よろしく頼むわね。」
アロが首輪の接合部分2か所に機械の端子を取り付ける。どうやらこれで首輪の電気回路は端子の方に繋がり、接合部分の間の場所に手をかけることができるようだ。
ア「1番危ないとしたらここです。ヒーラーの方、いざという時は準備をお願いします。」
アロが小さな電磁カッターを構えると、スイッチを入れる。数センチの電気の刃がその先から出現した。
マイアとコルックもよもやの時に備えている。
アロはクロの体を傷つけないよう、また首輪の不慮の爆発にも備えながら、小さな刃を首輪の接合部分の際に当てる。
カッターが首輪に食い込む。
しかし首輪は爆発することはなかった。ひとまず成功だ。
アロは繊細な手付きで2箇所を切断し、首輪の接合部分の間をクロの首がちょうど通れるように切り離した。
取れた部分が地面に落ち、石に当たって乾いた音を立てる。
ア「クロさん、センサーに誤反応がないとも限りません。
素早く首輪を着脱して、あちらの誰もいない方へ投げてください。」
クロはヌマルルの方を振り返る。
ク「…ねぇ、ヌマルル。言い忘れてた。
私がもし運悪く死んでしまったら、遺灰はどこか水辺に撒いて。
そして私が死んだ日にはそこが見えるところで、何か歌でも歌ってほしい。」
ヌ゙「そんな不吉なこと…。」
ク「いいから。お願いね。」
コ「い、行きましょう、クロさん。神のご加護のあらんことを…。」
ク「行くわよ…3、2、1…!」
クロは素早く首輪を外すとアロの示した方角へ投擲する。
あっけないことに首輪は持ち主を失っても爆発することはなかった。生命探知センサーが宿主の死を感じ取り爆発をやめたのだろうか。
ヌ゙「おめでとう、本当におめでとう、クロ!これで晴れて自由の身にゃあ!」
ク「生きてる、私生きてるわ。ヌマルル、私開放された!」
きゃっきゃと騒ぐヌマルルとクロ。陰鬱な期間が長かっただけに喜びも一入なのだろう。
マ「おめでとう、二人とも。
けど、はい、注目。これから危険な首輪を誘爆させるからみんな首輪から距離をとってね。」
メンバー全員の退避を確認したのち、コルックにシールドをお願いするマイア。
準備が整うとミカの助けを借り、首輪にしこたまフレアを叩き込む。
炎に包まれる首輪。
それなりの爆発音を立て、首輪が宙を舞いながら爆ぜていった。
ミ「キャンプファイヤーみたいっスね。」
リ「祝いに景気づけできて何よりだな。」
ク「終わってみれば、あれだけの爆発なんかに私は全てを囚われていたのね…。」
ヌ゙「といっても至近距離だと十分すぎる威力にゃね。クロが無事で本当に良かったにゃ。」
ク「うん、ヌマルル、大好きよ。」
セシリアが2人に声をかける。
セ「アツアツのお二人さんには悪いけど、これからのクロの身の振り方は決まっているの?
事情があれ、クロは犯罪者。出るとこには出て、償うものは償わないとね。」
ヌ゙「たはは。そういう手続きにはヌマルルは疎いんにゃあ。
ライネに一度クロを引き渡して公的機関を通さないとにゃ。」
ク「ヌマルルと会えなくなるのは寂しいけど自分の撒いた種ですもんね。
ヌマルル、時期が来たらきっと面会に来てね。」
ヌ゙「必ずいくにゃよ!毎日でもいくにゃ!」
クロがふと上を見上げる。
ク「空…。いつでも見れたのに、こんなにも透き通って素敵だったのね。
ほら、枯れたと思っていたのにまだ」
クロの目から頬を伝い落ちる水滴。
自由という高揚感と友と過ごせるという感慨。それはまだクロの中で整理出来た感情ではなかったのだ。




