第88話 クロ決戦 その1
電光石火のごとく動き、ぶつかり合うヌマルルとクロ。
繰り出される幾つもの手拳が顔を掠めていく。
ただし形勢は互角ではなかった。説得をあきらめないヌマルルは防戦一方を強いられていた。
ク「ヌマルル、冴えないじゃあないの、あなた。いいのよ?もっとぶつかってきなさいな。
それともあなた、このまま他愛も無くやられてあの研究所に帰りたいのかしら?」
ヌマルルはしかし手を出せずにいた。
ヌ「あの日のことは済まなかったにゃ。
教えてほしい、ヌマルルに今何ができる?ヌマルルはクロのためになりたい。これからも一緒にいよう。ヌマルルにはクロが必要にゃ!」
ヌマルルの言葉に一瞥を返すと、クロが鋭く言い放つ。
ク「だからあなたが気遣う必要などないと言っているでしょ!動けなくなったあなたの体を引っ提げて、私は研究所に帰るのみ。」
『フッ』、と低い吐息を吐き出すと、クロの逞しい右脚が唸りを上げた。
直後、鞭のようにしなったミドルキックがヌマルルの脇腹に食い込む。
世界が止まったかに思えた刹那、打ち上げられたロケットのようにヌマルルの体が宙を行く。
痛々しいほどの音を置き去りにした後、ヌマルルは壁に吸い込まれ叩きつけられた。
砂塵が辺りに立ち込める中、そこにはピクリと動く物の気配すらない。
ク「さて、片付いたっと。これぐらいでくたばらないわよね、ヌマルル?彼女の泣き言は後ほど研究所で、嫌というほど聞かせてもらおうかしら。」
ヌマルルがぶつかった地点に向かって歩を進めるクロ。
そこへはなまるパーティが立ちふさがる。
ク「何か御用?あなたたちもそこそこの手練れではあるわよね。力の差ってものがわからないわけじゃあないでしょうに。
そこをどきなさい。二度は言わないわ。」
メ「あなたこそわからない?人の道を外れた下衆に譲る道などないと言っているのよ。
ヌマルルは私たちがもらい受けるわ。研究所にはあなた一人で帰るのね。」
二コリと笑うクロ。そして正面のメメに襲いかかる。
同時にセシリア・ガネーシャとナギサがメメの左右から躍り出る。はなまるパーティが誇る前衛4体で強襲をかける。
4人の攻めは鋭く、強靭で、巧みなものだった。
しかしクロはそれをどこか余裕をもっていなしている。
メ(私たちは強くなった。クロの素早い動きも十分目で追えているわ。
しかしそれだけ。素早さに、戦闘センスに、地の身体能力に、あまりにも差がありすぎて、まるで相手になっていない…。)
クロは赤子の手をひねる様に次々と彼女らを突き飛ばしては組み伏していった。
いい防具をつけているわね、と囁くクロ相手に、次々に無力化され気を失っていく前衛たち。
ク「無様とは言わないわ。人が誰かのために戦う姿は美しいもの。
だから正しくは無謀であったと言っておこうかしら。」
思わず後ずさりする残ったはなまるパーティ。
ミ「こ、これはひょっとすると大ピンチなのでは…。」
そこへリオンがミカの袖を引き話しかける。顔にはいつもの余裕がない。
リ「もう出し惜しみしてるわけにはいかねぇ。コルックも頼む。…あの技やるぞ!」
コ「り、了解です。」
ミ「わかったっス!」
一方訝しげな表情のクロ。
ク「何か奥の手かしら?今更何をしようが構わないわ。全てを出してかかってきなさい。」
コルックはリオンの全身にありとあらゆるありったけのバフをかける。そしてそのリオンがミカをおんぶする。
緊迫した戦いのさなか、騎馬戦の騎馬を思わせる面妖な立ち姿が現れた。
ミ「…これがはなまるパーティ新奥義、『ライディング・バーサーカー』っス!」




