第83話 クロ・クライシス その1
早足でヌマルルの示した洞窟へ向かう、はなまるパーティとヌマルル。
日は暮れかけていて、各々の頼りない松明だけが光源の役目を果たしていた。
差し迫る時の中、一行は無駄口を叩くことすら忘れて行軍に従事している。
――――十数分前――――
マ「私たちに来てほしいってどういうことですか?ヌマルルさん。何か特別なクエストでしょうか。」
リ「こんな時間に急じゃねぇか。穏やかじゃねぇな。」
ふぅ、と息を一つつくヌマルル。急いているのを押し殺すように、冷静であろうとしているのが見て取れる。
ヌ「実は前から話していたクロがとうとう見つかったにゃ。居場所もわかっている。
ヌマルルは今からクロに会いに行かなくてはいけないのにゃ。」
ア「ご友人が見つかって何よりです。しかし、それと私たちとどう関係があるんですか?」
ヌマルルの顔は今までよりさらに厳しさを帯びた。
ヌ「ヌマルルの懇意にしていたパーティはクロの人相書きを持っていた。それでクロが当人だと気づき、ヌマルルの名前も出して声掛けを行ったにゃ。
すると何を思ったか、クロはそのパーティに手を上げたらしい。」
ざわ、と不穏な空気が流れる。
ヌ「攻撃は危険なものだったにゃ。パーティは少しの間応戦したが、すぐ帰還チャームを使って退避し、他のパーティと連絡・連携して現在はかの洞窟の入り口を封鎖しているのにゃ。」
コ「そ、そんなことが…ヌマルルさん、何か心当たりがありませんか?」
ヌ「わからない…わからないのにゃ。クロに何かあるなら、今でも力になりたい気持ちはあるにゃ。
だけどもう、そういう次元の話じゃなくなっている。
…ヌマルルはクロを捕縛しなくてはならないにゃ。無実の冒険者に手を上げた罪を、正しく裁かれる場に連れ出さなければいけない。」
セ「ヌマルルさん、あなたにはつらい役目になるでしょうに。トールの他のメンバーはいないようだけど手伝ってはくれないの?」
ヌ「実は以前から決まっていたのにゃが、今晩は他方で大きな協同クエストがあり、トールはもともとそちらに参加して指揮をとる手筈だったにゃ。」
マ「確かにそういうお誘いがあったね。私たちは護衛やクエストの件で出られなかったけど。」
ダ「急な事件を受けて、リーダーはヌマルルに、クロの解決に参加できるよう手配をしてくれたにゃ。リーダーとライネの2人は今協同クエストに出かけている。」
それで2人はこちらに参加できないのね、とメメ。
ヌ゙「そうにゃ。ただ、クロの今の実力は容易に測れない。ヌマルルだけで捕縛の任に当たっても、返り討ちに合わないとも限らないのにゃ。
力添えしてくれる実力あるパーティの助けが欲しい。有力なパーティが協同クエストで抜けている中、力を貸してくれるパーティを探していたにゃ。」
ダ「なるほどねー。それで今回のお願いに繋がったというわけだー。」
ヌ「お願いにゃ、洞窟の封鎖にも人手に限度がある。それにクロをこのままにしてはおけない。
クロがやってしまったことの責任をしっかり償えるよう、ヌマルルが引導を渡さなければいけないのにゃ!」
がばっ、と再びヌマルルが頭を下げる。張り詰める雰囲気。周囲に神妙な空気が流れる。
そこへ耐えきれず、呆れたようにため息を漏らすミカ。
ミ「案ずることはないっスよ、ヌマルルちゃん。はなまるパーティがくぐった修羅場は数知れず。
きっと君の友達も更生させてあげようじゃないっスか。
それにミカたちには悪事を働いたのに立派にやり直した友達もいるんスよ。今では彼もみんなに必要とされる存在っス。大船に乗った気でいるといいっスよ。」
本当に君は安請け合いするなぁ、とこちらも呆れ顔のマイア。
マ「ヌマルルさん、我々はクロについて何も保証できません。全てあなたの責において、あなたが物事を進めるんです。
ただ、困ったときは少しばかりお力添え致します。
だって私たちも同じ冒険者で、一緒に戦った仲間じゃないですか。」
顔を上げたヌマルルはウルウルと大きな目に涙を溜めている。
メ「問答は移動しながらでもできるわ。みんな急ぎましょう。」
かくしてはなまるパーティはクロの捕縛に加わり、洞窟を目指すこととなった。




