第82話 閑話休題 15 あなたは…どんな味?
とある午後、宿に2人の来客があった。
ロ「こんちわー。はなまるパーティ、いるかー?」
マ「待ってくださいねー、いらっしゃい…なんだローズじゃないか、久しぶり。どうしたんだい?」
ロ「スピニアからミルーの冷凍保存食の買い出しにきたのさ。ついでに挨拶がてら寄らせてもらったよ。」
マ「ということは後ろにいるのがハレさんかな?
初めまして、噂で聞いていますよ。お元気そうでなにより。」
ハ「初めまして、皆さんのおかげで元気でやっています。」
マ「立ち話もなんだから中へどうぞ。みんな話したがってるよ。」
中へ通される2人。すぐに大人数に囲まれる。
ミ「久しぶりっスねー、ローズくん。スピニアではもう悪さしてないっスか?」
ロ「スピニアのみんなには感謝しかない。できることを返させてもらっているぜ。悪いことなんて逆立ちしてもやらないぞ。」
セ「もう、懲役は終わった頃よね?まだスピニアで恩返ししているのね。」
ハ「ローズは今、橋の修理に一役買っているんです。体力もあって空も飛べるから、立体的な造形が人一倍進めやすくて活躍してるのよね。」
そういうハレの顔はほんの少し固くなっているように見えた。
ロ「…ハレ、また我慢してるだろ。俺にはわかるっていったろ?
こいつ、ほんと見栄っ張りなんすよ。『腹減った』の一言が言い出せずに、我慢に我慢。
具合悪くなったら周りが困るんだから、いい加減早めに」
その瞬間、ハレの鉄槌がローズの頭を襲っていた。鈍く大きい音には、相当な威力が込められていたようだ。
ローズは悶絶し、当のハレは恥ずかしそうに顔を赤らめ汗をかいている。
ダ「ご愁傷様ー。それより何か食べ物がいるのかなー?」
よろよろと這い上がってきたローズが質問に答える。
ロ「俺は食べ物でもいいんだがな、ハレは吸血鬼の血が濃くて、吸血での食事でないと十分栄養が摂れないんだ。
ちょっと待ってくれ、市場に行って血を買ってくる。」
出ていこうとするローズをセシリアが止める。
セ「たかが血でしょ。別に私のをあげてもいいわよ。」
ロ「本当か?それは助かる!」
ミ「ミカもいいっスよ。」
マ「困ってるんだよね?私も構わないよ。」
はなまるパーティ全員が血の提供を申し出る。
ロ「おい、喜べローズ!
最近じゃ鮮度の低い血しか飲めなくて、若い女性の生血液が飲みたい飲みたいって溢してたじゃないか。
でもそんなおっさんみたいなこと、とても言えないからってお前」
再びローズに振り下ろされる拳。さっきより強烈なようで、床をのたうちまわるローズ。ハレはというとやはり恥ずかしそうに、顔を火のように赤らめている。
ア「口は災いのもと、ですね。さすがに身が持ちませんよ?」
ナ「じゃあリクエストに応えて、女性陣の血を飲ませてあげようじゃないか。」
ハレへと行列を作るはなまる女性陣。
ハ「こんな厚かましいお願いに…。みなさん、本当にありがとうございます。
ではまずナギサさん、血を頂きますね。カプッ…これは健康的で元気になる味です!」
ナ「日頃のトレーニングの成果だな。」
コ「ひ、人によって味も違うんですか?」
口元をハンカチで拭いつつ答えるハレ。
ハ「もちろんです!それが醍醐味だったりするんですよ。
では、次はダフダフさん。お願いしますね。」
ダフダフがはだけた肩に牙を軽くかけるハレ。
ハ「んんっ、これはゆったりしてリラックスする味ですね。」
ダ「ダフダフの生き様そのものだねー。やったね。」
リ「一体何が嬉しいんだ。」
ハ「皆さん特徴があって素敵です。次はメメさんですね。頂きます。」
メメの小さな肩に身長を合わせ、そっと牙をかけるハレ。
ハ「ほぅ、これは燃え上がるような力強い味ですね。」
メ「私は戦闘に、趣味に、燃える女なの。」
ハ「次はセシリアさんですね。頂きます。」
ハレはセシリアの白い肌に口づけると唇を少し赤く滲ませる。
ハ「うんうん、これは飲みやすくて清廉な、どこか気高い味です。」
セ「おーほっほ、高貴な性格は血にも表れるのかしら。」
ハ「案外そういうのもあるかもしれませんね。ではお次マイアさん。」
ハレの牙が刺さったとき、ピクリとマイアの顔が歪む。慌てて牙を抜くハレ。
ハ「痛かったですか?」
マ「いや、慣れない経験だったもので、つい緊張して。痛くないんで続けて。」
マイアの血はハレ曰く頭が冴える味ということだった。
ハ「最後はミカさんですね。頂きます。カプッ…んー!これはものすごくお腹にくる、栄養超満点のハイパーこってり味ですね。」
ミ「ミカはマナがすごいんスよ!堪能して頂けましたかな?」
はい、と満足気な顔を見せたハレ。
ハ「皆さん、本当に助かりました。こんなに色んな人の血液が飲めて嬉しいです。これで2週間程度は吸血せずに済みそうです。」
マ「またこちらに寄ったときはご馳走するよ。
もちろんメンバーの体調が悪いときはだめだし、やなときははっきり断るから、気兼ねなく頼んでくれるといいよ。
…どうやらハレさんは引っ込み思案みたいだし、たまにはワガママも言ったほうがいいと思うよ。」
それを聞いた途端、水を得た魚のように聞いてもいないハレのエピソードをうだうだ語りだすローズ。
その話は終わりを迎える前に、ハレの3度目の鉄槌に阻まれたのであった。




