第8話 ウリウの洞窟 再び
ミ「久しぶりっスね、ウリウの洞窟。
強くなったミカの前に、もはや敵はいないっスよー。」
リ「お前はほんの少し打たれ強くなったくらいで、1人じゃここも攻略できないだろ。」
リオンは向かってきた幼獣ネズミを足蹴にする。
リ「しかしこれと奮戦してたってんだから、そりゃお前ら万年E級だわ。」
マ「私たちが強くなれたのはリオンのおかげだよ。
改めてありがとう。
本来はここなんてもう用なしなんだけど…。」
洞窟の奥の岩が怪しげな光を放っている。
リ「なるほどね、あれは確かに強力なマナに呼応する扉だな。」
マ「やることは一つ。
さぁ誰かに見つからないうちに転生の儀を行うよ。」
ミ「『転生の儀』…やはりかっこいいっスね。ミカが思いついたことにならないっスか?」
名付け親のマイアはそう取り上げられると逆に少し恥ずかしいようだった。
赤らめた顔を見られないように足早に岩の扉に向かって歩いて行った。
――昨日の夜――
マ「ちょっと話していたように、今日は少しミーティングを行うよ。」
ミ「どんどんぱふぱふ!」
リ「ミーティングの盛り上げ方じゃねぇ…。」
マ「ミカはあんまりうるさいと怒るからね。
まず最初は新しい仲間リオンが私たちのパーティに入ってくれた。軽く自己紹介なんか頼むよ。」
リ「俺の性格なんかお前ら知ってるだろ…。
まぁなんだ、リオンだ。
前の世界では兵団長をやっていた。
少し短気で手も早いが勘弁願いたい。
剣士としてお前らをしっかり守ってやるぜ。ついてきな。」
ミ「意外とまとまってるっス。用意してきたんじゃなく即興スか?バカなのに?」
リ「バカはお前の勝手なイメージだ。セリフに熨斗付けて返すわ!」
マ「いい自己紹介だったね、ありがとう。
さて、今日特に論じたい議題なんだけど、それはこれからの指針についてだね。
私たちのパーティは、それぞれはなかなか強力な持ち味が出せるようになった。
でも弱点も顕著で思うように上級のクエストが受けられないんだね。」
ミ「リオンは戦士として強いっス。
私たちも協力して魔法が放てるっス。それだけじゃいけないっスか?」
リ「それについては鑑定の話が答えになるな。
もし何らかの状況で複数体の魔物がお前らに襲いかかった場合、俺はお前らを守り切れねぇ。
さらには近接戦闘の木偶の坊は2人いる。
特にミカ、お前は身を守るすべが何もねぇだろ。」
うぐぅと口をかえせないミカ。
マ「それに初撃をかわしたとしても私とミカが分断されれば、何もできず逃げ惑うことになる。
パーティの危機になるね。」
少し間を開いて2人は口を開く。
マ・リ「もう1人パーティメンバーが欲しい。」
ミ「揃ったっス。」
マ「欲を言えば鑑定通りにタンク役がいるといいね。
だけど近接タイプがいるだけでありがたい。
最初は私たちの両側をリオンと2人で固めて、遠くから一方的に砲撃ができるだろう。」
リ「魔法の打ち手が増えるだけでも全然違うな。
交代制で魔法の射撃を行えば、魔法後の隙がそもそも生じにくくなる。」
ミ「リオンが戦術を語ってるっス。怖い…。」
リ「俺は元兵団長だ。座学だって優秀なんだぜ。
魔導士が多い国の攻略はかねがね苦労するもんと相場が決まってる。」
マ「それでだ、普通にパーティを募集するという手はまぁある。
あるんだけれど…。」
リ「あぁ言いたいことはわかる。転生装置だな。」
マ「その通り。
あれを使って転生した人にパーティに入ってもらえるなら、概ね即戦力として強い仲間が手に入るだろう。
それともう一つなんだけどね。」
ミ「何っスか?」
マ「ポータルに駆け付ける人って、前の世界が嫌で嫌で逃げてきた人ばかりだろう?
そんな人が次の世界でも必要とされないとするならば、それはとても悲しいことだと思うんだ。」
マイアはぐっと力を込める。
マ「私はそういう人たちを、どんどんここに迎え入れてあげたい。
ここがポータルの先の拠り所になればなぁ、ってそう思うんだ。」
リ「そいつが俺たちを拒めばどうする?」
マ「それは自由だ。
その人が元の世界から逃れられたなら、それはそれで私達の役目は果たしているさ。
去る者は追わず。」
ミカはマイアの案に乗り気だった。
ミ「転生装置を使っての人助けっスね。
ミカは賛成っス!」
マ「とてもそんな大仰なことではないけどね。」
加えてリオンも言う。
リ「俺も乗らせてもらうぜ。
まぁ単純に仲間は強いほうがいいしな。」
マ「では明日はウリウの洞窟の転生装置に行こうと思う。
あれはそろそろ使えるタイミングだ。
ミカはよく休んでおいてね。反対や質問がなければミーティングは解散します。」
――かくして明朝、一同はウリウの洞窟に出かけたのだった――




