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第79話 夕凪に語れば その2


 とうとうミカの能力を知る人物が現れた。

 予見していないわけでもなかったし、いずれはなにがしかの形で現れることでもあった。


 しかし夕食の場は岩のように重かった。


 ミカに迫るものがささやかな興味本位のものならいい。しかしそんな保証は誰にもできない。


 ミカはほんの小さな、何も抵抗できない女の子だ。目を離した隙に何者かにかどわかされ、名も知らぬ地で延々と働かされる可能性すら十分にある。


 今後の方針も踏まえて手を打っておきたかった。


マ「みんな、これから臨時のミーティングを開くよ。さっきの話通り、ミカの力を知り、それを欲しがるものが現れた。」


 静まり返る一同。


マ「人一人の接触だった。相手にはそれほど他意はないのかもしれない。

 しかしそれは希望的観測に過ぎない。私たちは改めて対策を練っておく必要があると考えたよ。

 …ミカ、その人について分かったことを話してくれないか。」


ミ「ミカもちょっと話しただけなんスけどね。名はウルスと名乗っていたっス。話は…。」


 ミカはウルスがした、とある神官の話をそのまま伝える。


ミ「という例え話をしたんスよ。」


 そこへ、待ってください、とコルックが話を止める。


コ「そ、その話は僕のことです。前の世界から僕が辿ってきた境遇と全く同じなんです…。」


 思わずコルックの過去を暴いてしまったことに、表情を固めてゴメンというミカ。

 それを受けてはにかみながら、気にしないで下さいと返すコルック。


 他のはなまるパーティも驚きの声を上げる。


リ「ミカの力がどこかから漏れるのは分からないでもない。ただコルックの過去なんて俺達でも知らないことだぜ。エスパーなんかでもなけりゃあ、わかるわけないだろう。偶然の一致じゃあ…」


 ミカがハッとする。どうしたの、とマイアに先を促され、おどおどと口を開ける。


ミ「それがウルスはリオンのことも知っていたみたいなんス!

 以前リオンが一度だけしてくれた話をウルスは話したんス。どうやらその世界がその後どうなっているかまで知っているみたいで…。」


リ「マジのエスパーかよ。本当なら笑えねぇな。」


 リオンは呆れたとばかりに両手を上げる。


メ「ミカ、ウルスは他には何か言っていなかった?」


 それは…、と言葉を濁しながらセシリアにちらりと視線を投げかける。

 セシリアはそれを見てにっこりと笑顔で応える。


セ「ミカ、あなたと私の仲じゃない。私の過去も話していたんでしょう?気にしなくていいわ。答え合わせしてあげるから話して頂戴。」


 ありがとう、セシリアちゃん、とミカは答える。

 これまで話してこなかった過去は、進んで言いたくはないものだろう。それでもミカのために一肌脱ぐとセシリアは言ったのだ。その気持ちに対する感謝の気持ちだった。


 ミカの話を聞き終わり、セシリアが溜め息をつく。


セ「…およそその通りですわ。私のことで間違いありません。ウルスとかいう方は何でも存じ上げているのかしらね。」


 そしてミカは話を続ける。


ミ「ウルスが最後に話していたのはこんな話っス。これは具体的な誰かは出てこないっスよ。電車と線路があって…」


 話を聞き終わりアロが答える。


ア「それはトロッコ問題という有名な倫理的なジレンマですね。…彼女がその選択肢の存在を拒んでいるのも気になります。」


 ウルスという人は何者だろうか?

 はなまるパーティに訪れた初めての事態に、答えの出せない議論が続いていく。

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