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第66話 ヌマルルとクロ その3



ラ「無事、合流と相成りました。ここからは皆で洞窟の奥まで一本道ですね。」



ゼ「今さっきしていたのはクロの話か。はなまるパーティにも聞かせているんだな。」



 あら地獄耳、とライネ。



メ「クロ?ずいぶん盛り上がっていたみたいだけど何の話なの。」



 2人にも話していいですか?とヌマルルに了解をとるマイア。

 ヌマルルがもちろんと返すと、マイアはメメとコルックに今までの話をかい摘んで伝えた。



コ「…ぬ、ヌマルルさんにそんな過去があったんですね。

 普段明るいだけに不思議な感じです。はい。」



ヌ「女の子は往々にして過去をもっているものにゃね!

 さぁ脱出劇から続きを語らしてもらおうかにゃ。」



 ヌマルルは乗りに乗った噺家のように腕まくりをする。

 ゼレにせっつかれ歩き出すヌマルルに、話を聞きながら一団が付いて行く。



ヌ「決行の夜、養護牢行きも問題なくクリアし、ヌマルルとクロは最初の巡回までベッドに身を潜めていたにゃ。


 十二時の警邏が過ぎるとあとは明け方まで検められないことがわかっていたにゃ。


 ヌマルルたちは跳ね出すようにベッドを飛び出し、カーテンを抱えるとタイル下の土を急いで掻き出したにゃ。」



 ごくり、とセシリアが生唾を飲み込む。



ヌ「ヌマルルたちには追っ手が来るまでに、時間があればあるだけ良い。


 発覚を遅らせるために出てきた穴は丁寧に埋め直し、すぐ見当をつけていた壁の前に向かったにゃ。


 辺りは暗く夜目が効くヌマルルたちはスムーズにことを進められたにゃ。


 そしてこれも手筈通りクロが筋力増強剤を飲み、カーテンを持ったヌマルルを跳ね上げたにゃ。


 あとは説明もいらないにゃ。

 2人は壁を乗り越え、枯れた山肌を駆け出していたにゃ。…おっと、敵がくるにゃ。」



 飛び出してきたバーナブー数体をゼレが刹那の間に片付ける。

 後は俺に任せて話を続けろ、とゼレも背中越しに語る。



ヌ「リーダー、すまないにゃね。


 そして脱出劇はここで一転、順風だった風向きが変わったのにゃ。


 ちょうど山を1つ半ほど越えたころにゃ。

 異変を感じたクロの声を聞き振り返ると、研究所の方からたくさんの松明が揺れて向かってくるのが見えたのにゃ。


 …追っ手に間違いなかったのにゃ。



 どう考えても早すぎると思ったにゃ。そこでハッと思い当たったんにゃね。



 それはカーテンだったにゃ。



 中の見回りだけに意識が行って、外から照らされるカーテンのかかっていない窓。

 これを失念しきっていたのにゃ。


 これが早く脱出が発覚した理由だったにゃ。



 反省は後でもできる。


 ヌマルルとクロは追っ手がかかったときも、どう動くべきか決めていたにゃ。


 少しでも成功率を上げるためヌマルルたちはすぐに二手に別れたにゃ。


 …クロとはそこまでだったにゃ。


 後から合流するの方法はいくつか決めていたけど、何をやってもどこへ行っても全て梨の礫だったにゃ。


 クロはおそらく研究所の追っ手に捕まったのにゃ…。」



 ここが洞窟だと思い出させるほどの静かな沈黙が辺りを包む。



ヌ「…とまぁ、これが昔の話。

 やっとここから今に繋がるにゃ。


 実はここ数ヶ月、このミルー近辺のダンジョンでクロの特徴によく似た獣人の目撃情報が、少ないながらもいくつか寄せられているのにゃ。


 他人の空似かもしれない。そもそも研究所からの脱出は難しい。


 それでも1度、その獣人に直接会ってみたいのにゃ。

 そのために信頼できるパーティにはこの件を気にかけてほしいと伝えているのにゃ。」



マ「それで色んなダンジョンで件の獣人を探していらっしゃるんですね。


 クロさんだといいですね…!

 ヌマルルさんがクロさんに会えることを心から願っていますよ。


 私たちも気にかけてみますよ。」



 にゃはは、ありがとう、とヌマルルは返す。



ヌ「それでもクロである可能性は低いんだろうにゃあ。


 ヌマルルに会いたいなら各町でまずギルドに顔を出しているだろうし。


 さて、みんなご清聴ありがとうにゃあ。


 空気を読んでか魔物も少なかったにゃあね。」



セ「ダンジョンに入るときはクロのことはきっと覚えておくわね。


 さてここが洞窟の最深部ね。

 クリーニングは滞りなく終わったわ。帰るとしますか。」



 協同クエストを通じて少し打ち解けたトールとはなまるパーティ。


 3人の強さに、ヌマルルの話に、感じることの多いクエストなのだった。



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