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第65話 ヌマルルとクロ その2



 長い洞窟の通路を行っていたが、不思議と魔物には出くわさなかった。


 ヌマルルの話だけが辺りに響いている。



ヌ「研究所の警備はそれなりに強固なものだったにゃ。


 ヌマルルとクロはまず、何ができるのか何ができないのかを探るために観察と試行から始めたにゃ。


 そして分かった最初のこと。

 ヌマルルたちはある種大切にされているということだったにゃ。」



リ「大切?そんな施設でか?」



 ヌマルルは頷く。



ヌ「ヌマルルたちは度重なる実験に耐えることができていた稀な個体にゃ。


 研究所にとっては理由なくくたばられたり、体調を崩されたりしたくなかったみたいにゃ。


 ヌマルルたちは仮病を使うことで一晩養護牢に移ることができたのにゃ。

 …そこへは示し合わせれば2人同時に入ることができたし、敷き詰められたタイルを剥がして土を掘れば外に出ることも可能なのが確認できたにゃ。


 もちろん次の日が来る前に直しておくんにゃけど。」



ダ「牢屋の問題をクリアしたわけだねー。


 なんだか脱獄映画みたいでわくわくするねー。」



 わくわくかー、そんな余裕はなかったけどにゃ、と困り顔のヌマルル。



ヌ「次に分かったのは、悪い情報。


 乗り越えなければならない壁がある、ということにゃ。これが比喩ではないんにゃよ。


 新月の夜、クロと2人で養護牢から繰り出して下見をしてみたんにゃ。

 だけど、およそ人の通るようなところは見張りがかなり厳重に巡回してるようなのにゃ。


 ヌマルルたちは猫の獣人だから、瞬発力はあっても持久力はたかが知れてるにゃ。


 誰かに見つかってから強行突破で逃げ出しても、乗馬した追手の集団なんかに捕まるのが目に見えてるんにゃ。」



リ「逃げ出したあとは十分距離が稼げるまで発覚しない、ってのがキモになるわけだな。」



ヌ「そういうことになるにゃ。

 一方裏手は見張りがあまり来ない代わりに1面高い壁がそびえ立っていたにゃ。


 跳ぶ役と投げる役で2人で協力して突破しようとしたけど、どうやっても人一人半くらいは高さが足りなかったんにゃね。」



 でもその方法だと、上がった1人しか逃げられなくなくて?とセシリア。



ヌ「あぁ、養護牢にカーテンがあるから持っていって、1人辿り着ければ上から垂らせばいいだろう、って話だったのにゃ。


 ダメなら他の方法を探したろうけど、実際はこれでいけたんにゃね。」



セ「そう。話の腰を折りましたわね。」



ヌ「いやいや。では続きにゃね。


 この状況を打破したのが皮肉なことに本来ヌマルルたちを苦しめていた研究所の薬、筋力増強剤だったのにゃ。


 ヌマルルたちはこれを実験中に1つくすねることで、壁越えを、ひいては研究所脱出を可能にさせたのにゃ。」



 マイアが口を挟む。



マ「ふむ、そういうものって厳重に管理されていて、安易に持ち出せないものじゃないんですか?」



ヌ「これは観察の賜物にゃんだけど、研究者にも色々いるんにゃ。

 優秀なのだったり、その逆だったり…。


 ヌマルルたちが目をつけたのは、ある助手だったにゃ。

 普段から失敗や記録の打ち間違いが多くて少し隠蔽体質だったんにゃ。


 彼はある時、他の職員から『今度間違ったら辞めさせてやる』とどやされていたんにゃね。


 まぁ少し申し訳ない気持ちはしたけど、この助手が管理当番のときにクロに注意を引いてもらって、隙を見てヌマルルが一粒失敬させていただいたにゃあ。


 内心発覚するかとヒヤヒヤしていたけど、どうにか隠蔽してくれたようで、無事バレずに前述の薬を手に入れられたんにゃ。」



セ「やりましたわね!それで脱出に繋げたんですわね。」



ヌ「そうにゃ。次の新月の夜、ヌマルルとクロは研究所脱出を決行したのにゃ。」



 ほどなく第3班の影が見えてきた。

 互いに声を掛け合い、3つに分かれていたグループが1つに戻った。


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