第64話 ヌマルルとクロ その1
1班と2班の合流地点。
先に着いた1班がまったりとブルーシートに腰を降ろしておやつを嗜んでいたところに、2班のメンツが姿を遠くから現した。
ミ「おーい、こっちこっちー。
一緒におやつでも頂くっスよ。」
マ「こらこら、3班が待ってるかもしれないんだから、私たちが合流できたら先を急ぐよ。
ほら、シートを片付ける。」
ミ「えー、けちー。」
ダ「けちけちー。」
リ「ダフダフ、合流したばかりなのにスッと入ってくるな…。」
かたやヌマルルはライネに、そっちはどうだった?と聞いている。
ライネは静かに首を振るのみだった。
そのやりとりを訝しむマイア。
マ「こちらの首尾は上々。
首を振るようなことは何もなかったはずですよ。
ひょっとしてトールさんには今回の冒険に何か他の目的があるのですか?」
あらあらという顔になる2人。
ヌマルルに至っては、流石に鋭いにゃあ、とこぼしている。
マ「私たちには隠し事はしないでくれ、なんて言えた義理はないですからね。
まぁ特段の理由なく黙っていてくれて構わないですよ。気にしません。」
ライネはヌマルルを顧みる。ヌマルルはコクリと頷く。
ラ「隠すようなことでもないし、お話するわ。
この件は私たちが協力を仰いでいるいくつかのパーティは知っていることだし、口止めもしていない。
むしろあなた方には知っておいてほしいことかもしれないわ。
ただ3班を待たせるのも悪いですから、ここを片付けて移動しながらにしましょうか。」
広げていた荷物をリュックにしまい切ると、合流した班は移動を再開し、話の続きが始まる。
ラ「私たちが調べているのはヌマルルについてのことなの。
ヌマルル、あなた自分の言葉で話しなさいな。」
それもそうにゃ、と話をヌマルルが引き継ぐ。
ヌ「うーん、何から話すべきか。
まぁそうだにゃ、最初のことから話すにゃ。
ヌマルルはその昔、獣人研究所というところに収容されていたんにゃ。」
研究所、というキーワード。
もともと『獣人』という存在自体、差別されたり、謂れなき被害に合うことも多い立ち位置だ。
それを『研究』するとなると、否が応にもきな臭い想像が働く。
ヌ「マイアは獣人研究所なんてしらにゃいにゃね?
それでも話を聞く大抵の人はそんな顔をするにゃ。
想像はおよそ間違ってにゃい。いや実態はそれをずっと超えたものかも知れにゃいにゃ。」
ヌマルルは話す。
度重なる身体実験に薬物実験。
自分は体が丈夫だったから体調の悪いときも下痢や嘔吐、幻覚などで済んだこと。
体の弱い仲間はたびたび知らず部屋から消えていたこと。
彼らは兵隊として派兵されたか、或いは『そう』だったのだろうということ。
セ「ひどい…。」
ヌ「にゃ。生きてるだけ、ヌマルルはそれで十分にゃ。」
マ「それでヌマルルさんは今はここにいますよね。
どうやって研究所から逃げてこられたんですか?」
ふむ、とヌマルル。
ヌ「ヌマルルには同室にクロという獣人がいたんにゃ。
ボンベイの、しなやかな毛並みと金色の瞳が素敵な黒猫獣人なんだにゃ。
クロとはいやに気があったし、こういってはなんだがヌマルルと同じぐらいに高い身体能力を持っていたにゃ。
しかしこのままでは2人とも先は長くない。
2人して日々相談しながら研究所脱出の機会を伺っていたにゃ。」
コツコツと固い靴音が洞窟内に反響する。3班との合流地点はまだまだ先のようだった。




