第56話 マシンエンジニア、アロ その2
ミカたちが通路を抜けると岩が閉じ切った。
マ「ここなら大抵のものは壊しても構わないですよ。
どうぞお好きにやっちゃって下さい。」
アロは辺りを見渡すと手近な一つの岩に目標を定めた。
ア「あれにしましょうかね。
本来なら索敵モードにすれば、それだけでオクトーは敵の元に飛んでいきます。
また追加で敵の優先順位も指定できるんですよ。
前衛や後衛、体力の高い敵に少ない敵、または飛行している敵や属性のある敵など。
全てオクトーが判断して狙って攻撃してくれるすごいやつなんです。
ただ、今回は無機物が目標ということでちょっと趣向を凝らしてみます。
オクトー、行きなさい。」
オ「イエッサー」
オクトーははじ弾き出されたように、アロの指定した岩に向かっていく。
コ「す、素早いです!」
ダ「たくさんのアームを瞬時に繰りかえて前進することで、見た目以上の瞬発力を出しているねー。」
メ「掴みはなかなかね、アームだけに。
ところでアロ、大事そうに抱えているのはリモコンかしら?
アンドロイドなら後は自動で動くんじゃないの?」
アロは困ったように頭を掻く。
ア「実はオクトーには悪い癖があって…また解説しますが保険としていつもリモコンを持っています。」
腑に落ちない顔のメメだったが、岩にとりついたオクトーに興味を惹かれすぐに向き直る。
セ「オクトーのアームにドリルが装着されましたわ。
固い岩盤を何事もないように削っていくわね。
岩がみるみる小さくなっていますの。」
ア「アームの先端には様々なジョイントが装備可能です。
ドリルを始め、ハンマーやナイフ、クローなんかがあります。
攻撃にも溶接にも使用可能なバーナーなんかも取り付けられます。
対峙した敵の特性に応じて使い分けてくれるんですね。」
岩が小さくなってくるとドリルは小さな物に代わり、今度は煤をはらうためのブラシがジョイントされ、細かく岩の周囲を動いていく。
コ「ふ、雰囲気が変わりました。
こ、これってもしかして『仕上げ』の段階に入っているのでは…。」
ダ「あらら。
もしかしなくても、この見慣れたシルエットは間違いないねー。」
一連の作業を終え、オクトーがさっと岩から飛びのくとそこには等身大のミカの像ができていた。
オ「デキアガリー」
ミ「うおー!これは嬉しいっス!
本物そっくりの威厳に満ち溢れている…。」
セ「すごいじゃない!こんなこともできるのね。」
ア「ミカさんを3Dでスキャンしたデータをもとに、オクトーに岩へ再現させました。
戦闘には役に立ちませんが、こういった様々な機能もついている優れものなんですよ?」
感嘆の口笛を鳴らすリオン。
リ「確かにすげえな。
しかし本物より美人に作りすぎちゃあいないか?
ミカにはもっと芋っぽさがあってだな…。」
その瞬間リオンの顔のすぐ先をオクトーのクローが掠めた。
リ「なんだ、こいつ!」
オ「ワルイヤツ、コウゲキスル」
ミ「ミカへの悪口を感知しての攻撃っスか?さすがに賢すぎないっス?」
明らかに慌てているアロ。
ア「すみません、オクトーの暴走です!
リモコンで収束させるので何とか凌いでください!」
オクトーにリモコンを向け、何度も制御しようとするアロ。
しかしそれを知ってかオクトーは様々に位置を変えてそれをかわす。
その間にもクローアームがリオンを矢継ぎ早に襲っていく。
リ「アームで天井に張り付いたり地を駆けたり自由自在かよ。
本体の動きを止めにゃあな。」
リオンは剣でアームを払いのけ、両足で地面を蹴り出すと、オクトーの本体に飛びついた。
ア「ありがとうございます!オクトー、止まれ!」
リモコンを受けたオクトーはカメラの部分を鈍く点滅させるとその動きを完全に止めた。
リ「はぁ、一体これはどういうことなんだ?」
苛立たし気にリオンが聞く。
冷や汗をかきながらアロが説明する。
ア「実はオクトーのAIは自己進化を進めていった過程で、賢くなりすぎたのか、どう間違ったのか、今では『地球にとって人類が一番の悪』という思想を秘めていまして…。
非常に稀ではあるんですが、命令完了時に自己判断で手近な人間を襲い出すことがあるんです…。」
セ「人間は業が深いですもの。
あながち間違っているとも言い切れないところが難ね。」
リ「それで何もしていなかった俺は襲われたのかよ。
とんだアンドロイド様だな。」
メ「オクトパスかつサイコパスでもあったのね。」
マ「ちょっと普段使いするには怖い性能だね。
安全な時にいろいろ試して運用の仕方を考えていこうか。」
なかなかのポテンシャルを秘めているように見えた新戦力は、少し頭を悩ます欠点の持ち主なのであった。




